第88話 古龍の目覚め
更地と化した砂漠のような戦闘跡地。
風が熱を運び、硝煙の残り香がいまだ漂っている。
その中で、ラナの傍らに体育座りのまま身を丸め、じっと待ち続けるムーノの姿があった。
どれほどの時間が経っただろうか。
やがて、彼女の指先がわずかに動いた。
「んっ......あれ私......?」
「ラナァァァァ!!」
――目を覚ましたラナを、私は思わず抱きしめていた。
もう恥じらいも、強がりも、そんなものはぜんぶ頭から吹き飛んでいた。
「朔月!?」
「生きててよがっだぁぁぁ!」
「うぐっ.......痛ったぁ......」
「え!?痛み残ってるの!?」
「......どういうこと?朔月の異能で治癒したんじゃないのかしら?」
「え~あぁ.......うん。そんなんだけど、ラナの回復力が無きゃ死んでた。」
咄嗟とはいえ、我ながら意味分からない言い訳が出てきた......
あのルーク様が“不完全な治癒”を施したと知って、驚きのあまり思わず声が漏れてしまった。
前々から感じていたが......どうもルーク様もルシア様も、この星では力の出力を抑えているように思える。
......しかしその考察も次の瞬間、ラナの絶叫で吹き飛んだ。
「......ぁぁぁぁぁああああああ!!!!!」
「ど、どうしたの!?どこか痛い?大丈夫?」
「あんの!クソ怪異!! 気配覚えたわよ!今度会ったらズタズタのボロ雑巾にしてやるだから!!」
「え、えぇ......?復活して早々それ?」
ラナは、生還の安堵や死の恐怖などどうやら眼中にさえない。
あるのは、ただ燃え上がる闘志だけだった。
彼女からは死んだ恐怖など欠片も感じられず、負けたことに対する苛立ちしか無いようだ。うん......おかしいのかな?この子。
「当たり前なんだから!このあたしが遅れを取るなんて......世界最強の相棒として情けないわ!」
「相棒......?」
「わ、悪い?」
「ぅぅ.......生きてて良かったぁぁぁ!」
胸の奥で張りつめていた糸が、ぷつりと切れた。
気づけば、私は涙を流していた。
サクラ以外の前で泣くのは、これが初めてだった。
「ど、どうしたのよ気っ持ち悪いわね!?いつもみたいに煽りなさいよ!」
「むりぃぃぃ」
「も、もぅ.......調子狂うわね、バカ朔月.......」
「ぅぅぅぅ。」
どれだけ我慢しても、安堵の涙は止まらなかった。
仮面を被っても、“朔月のムーノ”ではいられないのは生まれて初めてだ――でも恥ずかさはあれど、そんな自分が少し嬉しかった。
「安心しなさい。あんたを超えるまでもう1度だって負けないんだから!」
「ぅぅ......そえは多分むりぃぃぃ」
「あぁもう!あんたマジなんなのよ!!」
「だってぇぇ......」
仮面を被ったまま......私は声を上げて泣きながらラナに抱きついた。
結局、どれほど強くなっても、私はずっと泣き虫のままだったみたいだ。
「ほんっとに......バカなんだからあんた......」
「うぅぅ、死んだラナの方がバカだもん......!!」
「泣きながらでもしっかり煽ってくるのなんなの!?」
「嘘じゃないもん......」
この瞬間、私ははっきりと気づいた。
――ここ数ヶ月でラナは、私にとってかけがえのない相棒になっていたのだと。
つい最近まで、彼女のことを“小うるさい子羊”くらいにしか思っていなかった。
もちろん努力家であること、退怪術士としての実力は認めていた......それでもそこまでの興味は持っていなかった。
でも彼女と戦って気付かされた。 今まで他人に対して壁を作っていたのは私の方だったんだ......
私はラナと共に、人類を勝利へと導く――そう改めて誓った。
――数分後。
「ぅぅぅぅ。」
「いつまで泣いてんのよ.....」
「ぅぅ......ぅ?......ラナ立って?誰か来る。」
「え?は!? 泣き止むのはやっ!?その変わり身の速さはなんなの!?」
私の領域結界の内側に、2つの気配が侵入した。
未知ではあるが、完全に知らぬ存在というわけでもない。
――SSクラスで感じ取った、あの二つの気配に酷似していた。
「ラナ?多分ここにカメラは付いてなかった。何事もなく2人で勝ったみたいな顔できる?」
「悔しいけど仕方ないわね。ここであたしが1度殺されたと知れ渡れば......人類に不安を煽ることになるし。」
「うん。とりあえず進行はラナに任せる。一応念話の異能を発動させておくから、何か気づいたら教えて。」
「え?この流れであたしに丸投げするわけ!?どういう思考回路してんのかしら!?」
「うん......今、情緒不安定で無理。あともう来る。」
「変わり身が早いってだけではなさそうね......」
やがて、薄紅の髪に白が混じる少女と、緑髪のショートの少年が姿を現した。
「やはり生きていましたか。」
「ムーノ様ですもんね!良かったです!!」
二人の動き――その速度、気配の重み。どちらも只者ではない。
そしてこのタイミングで正確に駆けつけたということは、ここがどこでかを把握している証拠でもある。
―――私は警戒を強め、呼応するようにラナは“空間断絶”を展開していた。
どうもこんにちわ。G.なぎさです!
ここまで読んでくださりありがとうございます!
ついにラナ現世に復活!!
同時に物語は次の舞台へ......?
次回......ほのめかされる怪異の神、完全体の出現条件??
面白い、続きが気になる!と思った方は【応援】や【レビュー】をくれると超嬉しいです!!




