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第85話 血塗られた門出



 ――この地獄のような日々はプログラムが始まってから三年間、一日たりとも休むことなく続いた。

 そして四歳になる頃――当主候補の数は、開始当初の半分にまで減っていた。



「ラナ!おめでとう!今日も君が一番だ!!」


「一番……?」



 ここで一番になることに、一体どんな意味があるのだろう。

 思えば、あたしはいつだって“本当の一番”にはなれなかった……。


 ――そして四歳の頃。

 あたしは生まれて初めて“怪異”と相対した。


 獣型の四級怪異――本来なら絶対に負けるはずのない、ただの雑魚。

 だが、目の前に立った瞬間、あたしの全身は恐怖に震え、頭は真っ白になっていた。



「グルルルル……」


「っ……」



 訓練場の上階.......

 強化ガラスで隔絶された制御室から、シュヴェルツマン家の当主が声を投げかけてきた。



「どうしたラナよ。そんな雑魚が怖いのか?」


「怖くなんてありません……」


「ならば殺せ。今すぐに眼前の害獣を小間切れにしてみせよ。」


「言われなくても……ズタズタにしてやります!」



 震える手を必死に隠し、虚勢を張る。

 拷問訓練で人の心などとうに潰されたと思っていた。

 だが違った.......”死”を突きつけられた瞬間、あたしは恐ろしくて仕方がなかった。


 生きたまま喰われる未来......どうやらあたしはたまらなく死ぬのが嫌らしい。


 牙を剥き、涎を垂らしながら突進してくる“生きた殺意”。

 その“動く死”の圧力に、あたしは思わず後ずさりしかけた。



「ガァルル!!!」


「来なさいよ!」



 怪異は壁を蹴り、40キロを超える速度で一直線に襲い掛かってくる。

 開かれた顎の奥、ぬめる牙が視界を埋めた瞬間――頭の中は真っ白になった。

 それでも……負けたくない一心で、震える指先を必死に突き出し、異能を起動させる。



「グォァァァ!!」


「ラナ様!!」



 目の前に迫る怪異に指先を向け、ポツリと呟く。



「“空間断絶”」


「グォァァッッ……!」



 ――轟音。

 次の瞬間、不可視の巨大な刃が走り、世界そのものが裂けた。

 衝撃波と共に怪異は真っ二つにされ、血肉と臓腑を撒き散らしながら地に崩れ落ちる。



「ほう……凄まじいな。威力、速度、そして本人の気合、ともに申し分ない。」


「あれが……シュヴェルツマン家の最高傑作。」



 怪異は粉砕され、周囲に赤黒い飛沫を散らした。

 膝は笑っていたが、それでもあたしは“期待通りの力”を示してみせた。

 周囲が望むような圧倒的な力で敵粉々に粉砕してやった。


 .......そして同じ日。

 他の候補者たちも次々と怪異に挑み、その多くが喰い殺され……生き残りはさらに半分に減った。





 ―――さらにそれから半年。

 数十回に及ぶ実戦を経て、あたしはすべてで“圧倒的な成績”を叩き出した。


 そのせいか、待遇は目に見えて改善された。

 個室を与えられ、家具やテレビすら使えるようになった。

 もちろん地獄のような訓練は続いたが……それでも以前と比べれば幸福にすら思えた。


 とはいえ、テレビに映るのは――



【人類最強、朔月のムーノがカイロ要塞都市を奪還!! さらに今月に入ってすでに公爵級の怪異18体を撃滅しました。これを受けてFCTは更なる人類文明再構築に向けて――】


「毎日毎日毎日……こればっかり。」



 連日流れる“朔月のムーノ”のニュース。

 気づけば、あたしは自然と彼女に対抗心を抱いていた。


 ……もう他の候補者なんか眼中になく、あたしが戦っていたのは常に“彼女”だけだった。



【まさに人類の希望! 栄華の象徴!! 世界の救世主! 朔月のムーノ様万歳!! 人類世界に栄光あれ!!!】


「人類の生存権を数十倍にしたって……一体どんな強さなのかしら。私もいつか……」



 言葉が詰まった。

 あたしが四級怪異に怯えていたその月に、朔月は“人類最強”の称号を手にしていたからだ。


 あたしはまだ一級程度の怪異としか戦っていない。

 普通なら、四歳で一級怪異と殺し合いをさせるプログラムは狂気の沙汰だろう。

 だが――“種の頂点”を目指すあたしには、それすら遅すぎると感じていた。





 ―――さらに半年後。

 五歳になったあたしの前に、候補者はもう誰も残っていなかった。



「おめでとう!!やはり君が残ったか!!」

「おめでとうございます!!」

「めでたき門出に祝福を!」



 讃える声が響く広間の脇には――最後に残った候補者の冷たい死体が横たわっていた。


 わずか五歳にして。

 僅か5歳にして、あたしは夥しい量の子供たちの屍の上に立ったのだ。




 どうもこんにちわ。G.なぎさです!

 ここまで読んでくださりありがとうございます!

 分割したらラナの絶望まで行きませんでした......


 4級怪異に震えた彼女を奮い立てたのは、会ったことのない人類最強?

 そしてわずか五歳にして後継者となった天才が味わった絶望とは?

 

 次回こそ......ラナの絶望


 面白い、続きが気になる!と思った方は【応援】や【レビュー】をくれると超嬉しいです!!


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