第84話 ソードアカデミー
◇◆◇
――再び場面は切り替わり.......
次に映ったのは、無機質で冷たさを孕んだ空間。
十数名の子供たちが整列させられた、訓練施設のような広間だった。
実はあたしには“産みの親”の記憶がない。
それもそのはず、シュヴェルツマン家では本家・分家を問わず、生まれた瞬間に異能の素質が解析される。
そこで有能と判断された者は――跡継ぎ候補として特別な養成機関に送られる。
だが、そうでなかった者は……肉壁、雑用、性奴隷として他勢力に貸し出される。
生きる権利すら否定され、ただ家の利益のためだけに“利用される”存在となるのだ。
数少ない精鋭として選ばれた跡継ぎ候補たちは、“ソードアカデミー”と呼ばれる専用機関へと集められる。
そこで始まるのは、人権など一切無視した非人道的な育成プログラム――地獄の養成生活だった。
――その時、目の前で一人の子供が殴り飛ばされてきた。
「キャァ!!」
「この出来損ないが!! それでも跡継ぎ候補の一人か! ラナ様を見習え!!」
「すいません! ちゃんとします、だから……廃棄処分だけは……っ!」
「フン。なら早くしろ! このままじゃ今月の廃棄はお前だぞ!!」
ソードアカデミーでは毎月、成績最下位の子供に“廃棄処分”が言い渡される。
……表向きは“殺処分”とは言われない。だが実際には、ほとんど変わらない。
廃棄と告げられた者は即日“実戦投入”される。
未熟なまま怪異との戦闘に駆り出され、初日の生存率は1割にも満たない。
仮に運よく生き残っても、半年以内に確実に戦場で命を落とす。
合理的な育成とは到底言えなかったが.......
それほどに当時は怪異との戦いで追い詰められ、慢性的な人手不足に喘いでいたのだ。
――やがて場面はまた切り替わる。
張り詰めた空気の訓練室に、教官の怒声が響き渡った。
「本日の訓練を開始する! 今日は“拷問耐性訓練”だ!!根を上げた順に、成績下位として記録される!」
「「はい!!」」
「各自、名前が書かれた個室に入れ! 弱音、悲鳴、懇願は即失格と見なす! 死ぬ気で耐えろ!!」
「「はい!!」」
殺風景な個室に入れられ、無数の装置が取り付けられた電気アームに拘束される。
機械仕掛けで肉体を痛めつけられ、僅かに回復したところでまた拷問……その繰り返しだ。
子供の肉体も精神も到底耐えられないはずの地獄。
あたしは何度も心が折れそうになった。けれど――負けたくない、その一心だけで歯を食いしばった。
この訓練の本当の地獄は、苦痛そのものではなかった。
“いつ終わるのか分からない”ことだ。
他の候補生がいつ脱落したのかも、自分が何番目に残っているのかも分からない。
ただ、無限に続く痛みと孤独に苛まれ続ける。……それこそが、この訓練の意義だった。
――どれほどの時間が経っただろうか。
虚ろな目で痛みに耐えていると、いつものように重い扉が静かに開いた。
「おめでとう、ラナ。今日も君が一番だ。」
「ぁ……ぁあ……っ」
「悪い悪い。舌を切られてるんだったね? 手足の指も、全部落とされて……それでも最後まで根を上げなかった。偉い子だ、ラナは。」
「ぅ……ぐ……っ」
――それが、あたしの日常だった。
週に一度、必ず訪れる地獄の訓練。
1年が経ち、4歳を迎える頃には候補生の半数がすでに消えていた。
いや、正確には――“あたし以外の半分”が淘汰されただけ。
それがソードアカデミーという場所。
あたしが当主となる前のシュヴェルツマン家は――血も涙もない狂気の温床だったのだ。
どうもこんにちわ。G.なぎさです!
ここまで読んでくださりありがとうございます!
死の縁で垣間見る拷問訓練の記憶.......
不屈の精神で、ひたすらトップに食い込み続ける彼女の運命は?
次回......ラナの絶望
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