第82話 神々の敵”絶対純悪”
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――絶望に震える私の背後に……神は舞い降りた。
「もう一度、会いたい?」
「ルーク……様?」
「もう一度、ラナという少女に会いたい?」
「会いたいです……どんな事でもします……だから!ラナにもう一回会わせてください!!」
しかしそんな私に......
ルーク様は毅然とした態度で衝撃的な言葉を発した。
「いや、この程度で代償なんて求めないよ?」
「この……程度? 神族は死さえも超克しているのですか?」
「僕ら神族にとって人間の機能停止なんて、ただの状態異常でしかない。」
そう言ってルーク様はラナの治療を始めた。
失われた血液や細胞がみるみる息を吹き返していく.......
その光景はまさしく神の奇跡.......神以外に成し得えることのできない御業だった。
ルーク様のその様子は荘厳で神々しく、いつまでも見ていたいほどに美しい。
それは私の心に、自然と深く巨大な尊敬の念が生み出していた。
「神族は……不死身なんでしょうか?」
「そんな事はないよ。ただ脳を潰されたくらいじゃ死なないね?僕たちを殺すには、隔離次元で守られた“神核”を完全に消失させる必要がある。それに例え隔離次元を突破しても、ただの物理攻撃じゃ無意味だ。それ専用の術を込めなければ、決して僕らの命には届き得ない。」
「そんなの、ほとんど不死身なんじゃ……?」
「確かに? 食事も睡眠も呼吸も必要としない。出血死や老いとも無縁だ。でも僕らの住む世界では、当たり前のように僕らを殺す手段が存在する。実際、僕らは何度も死にかけた。他にも......たくさん生滅した。
そして何より――僕らの世界の“死”は、本物の終わり。君たち人間みたいに、輪廻転生も別文明への転移もない。一発勝負なんだよ。」
「あの、前々から思ってたこと……一つ聞いてもいいですか?」
「いいよ?話せることであれば話す。」
「それほどの力をお持ちで……一体、何と戦っているんですか?」
前々から何かと戦っているような節が見受けられた。
それが何かは私には分からないけど......
彼らの聞けば聞くほど、神々との戦いが成立する存在がいるのかと疑問に思う。
しかしだとすればその“敵”とは一体、何なのか。
私が特異点と呼ばれる以上、それは決して他人事では済まされない。
......そんな気がしてならなかった。
「この世には……絶対純悪が存在する。」
「絶対……悪?」
「この世すべての悪意を足しても届かぬほどの絶対悪。
あらゆる悪事を裏から操る――箱庭世界史上、最凶最悪の存在だよ……」
「箱庭.......? もしかして、50年前に突如現れた怪異も全部?」
「あぁ。詳しくは話さないが、原因はそいつだ。」
そいつさえいなければ、今頃人類は当たり前の幸福を享受できていたのだろうか?
しかしもしそうだとしたら、最終的にに倒すべきは怪異ではないことになる......
「でもどうしてそんなこと……一体、何が目的なんですか?」
「不幸だよ。」
「え?」
「他人の不幸こそが彼にとっての幸福なんだ......そしてそれは外的要因じゃない。生まれながらの悪......本物の悪意。だから絶対悪じゃなく、絶対純悪と呼ばれるんだ。」
「絶対……純悪……」
言葉の響きだけでも身が竦む。
神すら倒せぬ絶対的存在――今の私では想像さえつかない規格外の敵。
でも、一つだけ確信できたことがある。
サクラと安心して暮らせる世界を創るには、怪異の神を倒すだけでは不十分だ。
「そろそろこの子も回復するよ。くれぐれも僕の事は他言無用でね? また学校で会おう。」
「待ってください!お教えいただけないでしょうか? その絶対純悪の名を……」
「知ってどうするの?」
「……いつか私が倒します。そうすれば人類に、宇宙に生きるすべての人々に平和が訪れるんですよね?」
口にしてから、自分の言葉がどれほど無謀かは理解しているつもりだ。
神ですら成し得ぬ戦いを、人間の私が担うなど――滑稽だと笑われても仕方ない。
でも真に人類に平和をもたらしたいのなら、そんな存在を到底許すわけにはいかない......
ルーク様は一瞬だけ目を伏せ、少し考える素振りを見せてから口を開いた。
「それは幼稚な意見だよ。怪異出現前から人間は戦争をしていた。他の文明だって程度の差はあれど、争いは起こる。それは個体差という生命の特性が生み出す、ある種の宿命でもある。だから現実はそんなに単純ではないし、結末も美しいものである保証はない。善悪という曖昧な価値観を基準に生きている限り……君は奴とは戦えない。」
「でも……そいつを倒したら、世界が少しは平和になるんですよね?」
「なる。確実に今より平和になる。それも激的だ。」
「なら怪異の神をチャチャっと片付けて、私も……」
「それはたかが17歳の君が、安易にこの場の感情で判断していいことじゃない。それに君じゃまだ力不足だ。」
冷酷ともとれるほど真っ直ぐな言葉が、私の言葉をバッサリ切り捨てた。
誰からも言われない”弱い”という二文字に、私は己の未熟さを突き付けられたのだ。
ルーク様の発言に、私は言葉を失い俯く他なかった。
「……」
「......ヴァラル。」
「え?」
「絶対純悪、ヴァラル。それが僕とルシアの敵だ。」
「ヴァラル……それが全ての元凶の……」
「もし全部が終わって。君が相応しい力を宿して……それでもまだ決意が揺るがなかったら、教えて欲しい。」
「……はい!!」
その日......私は真に倒すべき最悪の存在を知った。
やがてその決意が、正義ではなく狂気と憎悪に染まっていくとも知らずに。
まだ子供だった私は溢れる正義感で志したのだ......サクラやラナと笑って暮らせる理想郷を。
――嘘偽りなく確かに......志したんだ、
どうもこんにちわ。G.なぎさです!
ここまで読んでくださりありがとうございます!
神の御業により息を吹き返す千斬のラナ!
そしてルークの口から語られる世界の敵”ヴァラル”の名......
学園で栗広がられた第三章も終わり、次回から新章に突入します!
次回......失われた意識の中でラナの過去が見たモノとは?
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