第77話 神への供物”人外”
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焔の猛威と空間を断つ斬撃を合わせて、あたしは相反する二つの現象を融合させる。
人間としての身体の境界線を曖昧にし、自身の存在を肉体という器ではなく異能で縛る。
「異能融合……『断絶ノ炎龍神』」
【……愚かと言った。】
「あんたはここで倒す……その『死』ごとズタズタに切り刻む!!」
【死は必定の定め。触れること、消す事も逃れること……忘れる事さえ叶わぬ。】
凄まじい死の気配だわ.......全身の細胞が悲鳴を上げている。
さらなる覚醒で人類の限界を突破したのに、それでも私の本能は””まだ勝てない””と告げている。
それでも、ここで引くなんてできない。
私は絶対に生きて朔月の隣に並んで見せる.......出し惜しみはできない!!
「融合奥義......龍炎・裂月塊刃!!」
私は赤黒い刃の波動をタナトスに向かって放出した。
【等しく我が前に屈するがよい。】
しかし死の大怪異がそう告げた直後、私の放った刃は黒い泥のように溶けて消えた。
「異能が......消された?」
【余は死の大怪異。万物に死をもたらす、この世の終わりの化身なり。】
「なら......相殺しきれないくらい叩き込むまでの話よ!!」
【見せてみよ。我らが神に弓を弾く、愚かな猿の子よ。】
最強の防御とは何だろう.......?朔月に勝つにはどうすればいいんだろう?
私はずっと考えていた。空間断絶の新たな可能性、新たなる解釈を……。
空間断絶は、あらゆる存在を切り裂くことのできる最強の異能。
当たりさえすれば、朔月だろうが怪異の神だろうが届き得る可能性がある異能。
そしてその確率は、さっき死の大怪異が空間断絶を防いだことでさらに上昇した。
何らかの術で防いだという事は.......四大超怪異であっても、直撃させればダメージを与えられるということ!
「やってやるわよ! はぁぁぁぁぁぁ!!」
【ほう? 月神以外にもこれほどの力を持つ存在がいたか。】
「焼き尽くして、細切れにして、更にそれをすり潰してあげる……肉片一つだって残してあげないんだから!!」
灼熱の咆哮、熱放射、炎龍の爪刃.......そして大空を縦横無尽に駆け巡る龍翼の機動力。
それを、死角なく!絶え間なく!降り注ぐ豪雨のように一点集中させる!
持てるすべてを一息で重ねて......
それをより自然に、それ自体が一つの生命活動であったかのように融合させる――!
「融合奥義:終ノ斬式......崩月!!」
【死するがよい。】
「甘いわよ!!」
【……ぬ?攻撃が死なぬ? いや……死した端から新たな斬撃を生み出しておるのか。】
空間の至る所を起点に降り注ぐ、不可視の刃の雨.......
目にも止まらぬ速さで空間を自在に飛び回り、灼熱の業火を浴びせ続ける炎龍の軌跡.......
それはまるで、どれだけ死のうとも新たな命を繋ぎ続ける生命の歴史――。
炎龍の翼で飛翔するラナと、青白い巨馬に乗り駆け回る怪異の軌跡は.......空間に禍々しい赤と紫の模様を刻み込んだ。
「これはあんたが死ぬまで止まんないんだから! 死の大怪異が死ぬなんて前代未聞ね!!」
【よくぞ......よくぞ.......人の身でここまで。 認めよう、貴様は強い。】
「いまさら命乞いしても、助けてあげないんだから!!」
押してるわ……。数分前まで圧倒されていた敵を押している!
勝てる、このまま押し切れば勝てるわ!あいつは僅かに異能を殺す速度が遅れてる!
まだ何か切り札があるだろうけど、それを使わせる前に仕留めてやるんだから!!
もっともっともっと――私は強くなってやる!
朔月……絶対あんたのこと、一人になんてさせてあげない!!
【人外へと至るか.......貴様は我が神の供物に相応しい。】
「笑わせんじゃないわよ! あんたこそ人類繁栄の礎になりなさい!!」
【貴様はここで死した。これは逃れられぬ定めであった。】
「何言ってんの? そういう、のは.......あたしを、倒して.......言いなさい......」
……違和感。
微かな、しかし致命的な違和感――。
【その必要はない.......もう終わった。】
「は? 何、言って……?」
――待って......なんで視界が逆さになってるの?
.......どうして私は地面に向かって落ちてるの?
手足の感覚がない......胸が焼けるように熱い。
顔も熱い。凄く苦しいし視界がどんどん狭まっていく……。
一体、何が起こったの?
嘘でしょ……そんなはずは――。
【人は怪異には勝てぬ。】
「……ぇ?」
【叶わぬ夢に酔いしれたまま、人としての生を終えよ。】
視界が消えゆくさなか中、ようやく自分の状態に気づいた。
四肢は完全に失われている。
残った体の至るところに、レイと同じ黒い棘が深々と突き刺さっていた。
でも、レイの時とは違う。
私の心臓には、致命的な黒い棘が貫通している......。
――こんなところで死ぬの?何も果たせないまま?
――朔月を超えることもできず......人としての誇りさえ証明できず、一人で惨めに死んでいくの?
――サクラ……あんた、こんな虚しくて冷たい終わりを何百回も味わったの?
――抗えない死の中......最後に彼女は見た。
――絶望と憤怒に顔を歪める戦友の姿を......
―――2053年9月14日、日本時間 午前5時31分
FCT序列2位””千斬のラナ””心臓外傷よる心肺停止により死亡。
.......時を同じくして同時刻、””朔月のムーノ””……現着。
どうもこんにちわ。G.なぎさです!
ここまで読んでくださりありがとうございます!
主人公のような覚醒を見せ、死の超怪異と交戦したラナ.......
しかし......それは人はおろか地球生命では逆らう事のできない、死の権化だった。
次回......朔月のムーノVS死の超怪異タナトス。開幕!!
面白い、続きが気になる!と思った方は【応援】や【レビュー】をくれると超嬉しいです!!




