第75話 本物の”天才”
―――戦いで更地になった温室跡地―――
――私の全身から莫大な異能の奔流が溢れ出す。
炎龍、空間断絶、心眼の三つの異能はその限界を突破し.......
私自身、その気迫は皇帝級怪異に匹敵しているという自身がある。
「異能発現......限界突破!!」
「な、なんですかその異能は!? そんな異能はデータには......」
「まだまだこんなもんじゃないわ。異能共振:炎龍纏鱗.....」
「何ですか! こ、この圧は一体!?」
この前の戦で覚醒した””異能共振:炎龍纏鱗””は、これまでの異能共振とは訳が違う。
炎龍の力を引き出すだけじゃなく、人間の一部を炎龍の生体に作り替える事ができる。
今の私は耐久力、運動能力、五感、反射神経......さらには再生力や耐性に至るまで、その全てが人の域にない。
あたしはこれでいつか.......人間はおろか生物さえを超越し、天空に輝く月に食ら落とす!!!
「あんたの敗因を教えてあげる。あたしに異能共振を使わせたことよ!!」
「ふざけるな.......それで勝ったつもりなのですか!!」
「もちろん。だって......」
私は一瞬で彼女の背後に回り込み、極大の殺気を込めて肩にポンと手を載せた。
「私の動き......見えないでしょ?」
「ば、ば、バカな......ありえない!こんな事ありえるわけが!!」
「残念だけれど現実よ? ......炎龍爪刃!!」
「くそっ! 結晶障壁!!」
彼女はガラスのような薄いシールドを展開し、私の攻撃を辛うじて防いだ。
さらに先ほどあたしを招き入れたと思われる異能で、転移し距離を取る。
でもこう見るとやっぱり朔月の転移は異常だ......転移できる距離も、転移に掛かる時間も怪物過ぎる。
咥えて条件をクリアして、ポイントさえ設置できれば数百キロを一息に移動できる。
――でも今はまず目の前の敵を圧倒する!!
「一体いくつ異能を持ってるのかしら? まっ!いくつあっても関係ないんだから!!」
「舐めないでください......生まれ持った異能しかその身に宿せない、第一世代とは違います!!」
「はっ。たかが知れるわね? 第二世代ってのはみんなこんな雑魚なわけ?」
「くっ、調子に乗るなぁぁ!! 氷神功・極寒旋風!!」
すると彼女の周囲から膨大な冷気が吹き荒れ、大量の氷柱ち共にこちらに押し寄せる。
それは上位の術士であっても触れただけで、細胞の隅々まで瞬時に凍結させるほどの冷気だ。
もちろん、それは私の実力が上位の術士程度であればの話だが......
「陳腐でくだらない解釈の技ね? 異能はこうやって使うのよ?」
「そ、それはどういう......」
「.......共振戦技・炎龍之尖球。」
私は炎龍の右腕に纏った熱を全て指先に集め、ビー玉大の熱球を作り出した。
そしてその熱球をさらに龍の強靭な鱗で包み込み、それを高速で射出した。
「こんなもの!!避けてしまえば何の脅威にも!!」
「わざわざ見せたのに......あんたバカね?」
彼女はその攻撃の貫通力を警戒したのか、先ほどの障壁で防がず回避を選択した。
しかし彼女がそれを避けた瞬間.......私は龍の鱗は破裂させ、中に内包された極大の熱波を開放して見せた。
「な、何故純白等級である私の氷が......あぁぁ熱い!!ギャァぁぁぁぁぁぁ!」
「どうしたの?早く異能共振しなさい? 死ぬわよ?」
「こんの......万年二位の負け犬が......」
「あぁ。さてはあんた.......異能共振ができないのね?」
「っ!?」
やっぱりそうだ......こいつは沢山の異能を持っているだけで、異能共振は使えない。
異能共振を習得するにはたゆまぬ努力と才能が必要だ。
朔月は努力だけでいいとか抜かしてるけど、それはあくまで理論上の話.......共振にはセンスが必要になる。
こいつには才能もセンスもない......加えてこの女は多分、努力の方さえも怠ったのだ。
そして異能を移植する力に魅入られて、自分が強くなったと勘違いしてしまった。
――その結果がこのザマだ......
「あんたが今まで勝てた理由......教えてあげるわ。」
「な......んだと......」
「本物の天才に出会わなかったことよ。 で、どうかしら?本物を目の前にした感想は?」
「調子に......乗るな......ムーノに......かてない、くせに......」
「.......あれは天才じゃないわ。生まれながらに人を超克した人外の化け物よ。人はおろか怪異さえ及ばない、地球という星の作り出した最高傑作......種としての強さの桁があたしたち違うのよ。」
きっとこれまでの全ての種の進化は、彼女を生み出す為に紡がれてきたのだろう......
あたしたちは””ムーノ””という生命を作り出すための試作品......すなわち前座過ぎないのだと思う。
初めて朔月を戦場で見た日......私はその圧倒的な力の差に絶望した。
当時7歳ですでに”ヨーロッパ最強”と歌われた私は......あの日、人の身で超えられない壁を知ってしまったのだ。
その日から、私は彼女を超える為に人を捨てる事を決意した。
当たり前の幸福もささやかな安らぎの時間さえも、全て彼女を超える為に捧げると誓ったのだ。
「うぐ......こんなところで......」
「はぁ!?こんな所で? あんた何の努力をしたっての? あんたが......何を捨てたっていうのかしら?」
「お前に何が......分かる!」
「分っかりたくもないわね!......もういいわ、とっとと死になさい!!」
「こんな......まだムーノも出てきてないのに......」
――私は彼女の発言を無視して空間断絶で作り出す。
そしてその巨大な刃に膨大な炎龍の熱気を纏わせ、ゆっくりと打ち放った。
「さようなら......来世では歯向かう相手を間違えないことね?」
「ぁぁ、申し訳ございません......四大怪異様......」
「......は?」
――その瞬間......私の背筋に強烈な悪寒が走った――
気が付いたとき私は......打ち放った刃さえ解除し、数百メートル後方に飛びのいていた。
何かの奇術じゃない......私の本能がそうさせたのだ。
とてつもない怪物が来る......これまで出会ったことのない強大な何かが!
――馬が駆けるひずめの音が聞こえる.......
――不気味なまでに低い馬の鳴き声が聞こえる.......
――逃れられない、何かが......纏わりつくようにこちらに向かってくる。
――原初から紡がれてきた本能が、全身に細胞に恐怖に震え上がらせた.......
「ハァ......ハァ......一体何......?」
―――関係ない、弱気になるな......纏わりつく本能を振り払い、私は再び臨戦態勢を取った。
どうもこんにちわ。G.なぎさです!
ここまで読んでくださりありがとうございます!
忙っしくて全然更新できませんでしたすみません!!
次の話は大体執筆し終わっているので早めに更新します!!
数々の対策に追い詰められたかと思いきや......圧倒的センスと実力で凌駕するラナ。
しかし、そんな彼女に迫りくる得体のしれない”恐怖”とは一体......
次回......天才を恐怖で覆い尽くすほどの絶対の存在が降臨?
面白い、続きが気になる!と思った方は【応援】や【レビュー】をくれると超嬉しいです!!




