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第71話 不気味な旧校舎



――案内されること五分――


私は車を降り、荘厳な宮殿のような学舎の中を歩いていた。

しかし、ここには生徒の気配がない......いや、それどころか人の気配すら感じられなかった。



「どうして誰もいないの?」


「さぁ? 私のような一介の教師には、詳しい事情までは分かりかねます。数年前までは最高学年の学舎として使われていたようですが……」


「ふーん? 一介の教師がSSクラスの専任で、学長に直接連絡が取れるって?」


「風通しの良い学校なものでしてね?」



完全看破で見た情報によると、これは現場の教師を束ねる最高主任らしい。

しかしそれ以上の情報が見当たらないので、目の前の教師は重要な情報を知らない可能性もある。


どちらにせよこれから会う学園長にも、完全看破の異能を使って確認すればいいだけの話だ。そんなことを考えながら歩いていると、やがて龍の紋様が彫り込まれた巨大な扉の前にたどり着いた。



「こちらになります。お話はすでについておりますので、そのままお入りください。」


「そう?じゃあ、遠慮なく。」



しかしおかしい.......扉の前に立った瞬間、私は違和感を覚えた。



――誰の気配もしない。


私は直感的に不信感を察し、天使ちゃんをぐっと引き寄せる。

警戒を強めながら、ノックもせずに扉を慎重に開けた。



「……テレビ?」


「そ、そうみたいです。」



室内にあったのは、大きなモニター。

そこから、女性の声が流れてきた。



【この度は我が学園にお越しいただき、ありがとうございます。】


「……直接出向いてこれないわけ? それとも隠したいことでもあるの?」


【近頃、体調を崩しておりまして。】


「ほんとに? 怪しいんだけど。」



......やられた。


モニター越しの相手には 《完全看破》 が発動しない。

つまり、学園長がこの騒動に関与している可能性がさらに高まったということだ。



【お手厳しい。本日はどのようなご用件で?】


「長話は嫌いだから結論から言う。この子、貰っていい?」


【……といいますと?】


「知ってるでしょ? 私も完全鑑定の異能を持ってる。この異能は特殊な方法で、凄まじい力を引き出せるの。

 私がこの子を教育する。」


【なるほど……ですが、彼女はSSクラスの生徒です。9位とはいえ、何の見返りもなく引き抜かれるのは少し……ね?】



"9位とはいえ"?つまり、まだ彼らはこの子の真の価値に気づいていない?

本来だったらこんな要求を聞くべきではないのだけれど、この子を速攻で保護できるなら寧ろ安いくらい。


どんな罠だろうが奇策だろうが、人類最強の私なら圧倒的な力で全て粉砕できる。



「何が言いたいの?」


【あなたに能力値診断に付き合ってほしいのですよ。生徒たちが毎年受けているものなのですが……要するに、あなたの能力を測定させていただきたいのです。】



……なるほど。


明らかに別の目的があるが、こちらとしては問題ない。

そもそも、私の全力に測定器ごときが耐えられるとは思えないし、

たとえ耐えられたとしても、わざわざ全力を出して敵に情報を提供してやるつもりもない。



「……分かった。」


「ム、ムーノ様!」



天使ちゃんが驚いたように私を見上げる。

彼女は明らかに私の身を案じており、私の袖をツンツン引っ張り抗議している。



「その代わり、この子はすぐに私の拠点へ連れ帰らせてもらう。」


【えぇ、どうぞ。それでは能力診断は明日の午後14時、画面に映っているこの場所にて行いましょう。】


「第三訓練場ね。分かった。用は済んだから、もう行かせてもらう。」


【どうか、セラフィアをよろしくお願いしますね~。】


「言われなくても、そのつもりだから。」



そう言い残し、私はそそくさと部屋を後にした。






――数十分後――



学園長とのやり取りを終えた私は、すぐにラナへ連絡を取った。

不測の事態に巻き込まれていないか心配したが、どうやら問題は起こっていないようだ。


――しばらくすると、炎龍の翼を広げたラナが、集合場所に降り立った。


「何よ、いきなり呼び出して!? しかも来たら話すってどういう......」


「こ、こん……にちわ、です。」



セラフィアは私の後ろに隠れながら、恥ずかしそうに小さな声で挨拶をした。



「ちょっと待って。この子、誰!?」


「紹介する。私が担当したSSクラスから貰ってきた、可愛い可愛いセラフィアちゃん。これから私とラナで保護するの。」


「待ちなさい、待ちなさい、待ちなさい……は? 何? どういうこと? 捨て猫でも拾ったみたいに言わないでくれる?」


「これまでの退怪術士の課題を全部解決するレベルの凄い異能を持ってる。もしバレたら、絶対に命を狙われる。」



ラナは一瞬、呆れた表情を見せたが、すぐに真剣な顔つきに変わる。

私は彼女に、これまでの経緯を簡潔に説明した。



「ほら見なさい! 案の定、ボコボコにしてるんだから!」


「別に好きでやったわけじゃない。ウザかっただけ。とにかくこの子は私の基地で保護するから。」


「……それについては反対よ。」


「……どういうこと?」



ラナは私の天使……いや、セラフィアの方へ鋭い視線を向ける。

その冷たい眼差しに怯え、怖がったセラフィアは私の腕にしがみついた。



「あたしはその子を信頼してない。敵のスパイの可能性だってあるんだから。朔月の本拠点に招き入れるなんて、危険すぎる。」


「本人の前でそれを言うのは可哀想。セラフィアも怖がってるじゃん。」


「陰口を叩かれるよりマシでしょ?それにあたしたちの本拠点は、簡単に他人を招き入れていい場所じゃない。保護については賛成よ?」


「第二、第三の拠点ならいい? 世界に数百あるわけだし。」


「何なら、あたしのシュヴァルツマン家で保護するわよ?」


「それは却下。シュヴァルツマン家が一枚岩なのは知ってるけど、ここに近すぎる。それにセキュリティも私の拠点の方が上だし。」



シュヴァルツマン家がラナのワンマンで完全な支配下にあるのは知っている。

結束も強固で、普通の退怪組織とは比べ物にならないほどの力を持っていることも分かっている。


しかし、いくらシュヴァルツマン家でも伯爵級怪異複数体の攻撃から、セラフィアを守り切れるとは到底思えない。

地理的にもロンドンにあるこの学園と近く、もし皇帝級などと大規模な戦闘になれば被害が及ぶ可能性もある。

――ラナは少し考え込んだ後、ため息をついて口を開いた。



「分かったわ。しばらく他の拠点で保護しましょ。」


「ありがとう、ラナ。……拠点に連れて行く間、少しだけ一人にさせちゃう。くれぐれも注意してね?」



とはいえ、私には瞬間移動がある。

それなりに条件を満たさないと長距離では使えないが、拠点はその条件を満たしている。

一時間以内には戻れるだろう。



「あたしは退怪術士の序列二位、”千斬のラナ”よ?帰ってくる頃に全部終わってても知らないだからね!」


「分かった。何かあったらすぐ知らせて。絶対に助けに行くから。」


「あんたに助けられるほど、あたしはヤワじゃないの! いいから早く行きなさいよ!」


「分かった。また後でね、雑魚ちゃん。」


「あのね!何度も言うけど私、強いんだから!!」



そう言い合いながら、私はセラフィアを抱え学園から飛び立つ。

念のため学園の近辺に転移ゲートを設置しておいたのだが、我ながら英断だった。


しかし――この時の私は知らなかった。

ラナを一人にしたことを、後悔する羽目になることを……。




 どうもこんにちわ。G.なぎさです!

 ここまで読んでくださりありがとうございます!


 ついに対面した学園長......しかしムーノの完全看破は対策されており......

 そして相棒のラナは未だセラフィアの事を信頼しきれておらず......


 次回......ラナとムーノが分断され、敵の思惑が動き出す?


 面白い、続きが気になる!と思った方は【応援】や【レビュー】をくれると超嬉しいです!!




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