第66話 SSクラスの雷龍
――天上学舎にて――
「あんたもしかして……イキリ陰キャ?」
「あぁぁぁ!? 舐めてんのかテメェ!! ぶち殺すぞ!!!」
「あんたみたいな雑魚に、人類最強であるこのムーノ様が殺れるわけないでしょ?」
「はっ……何も知らねぇ癖によ。いいぜクソアマ! ここで力関係思い知らせてやんよ。だが負けたら二週間、俺の性奴隷な?」
「はぁ? 性奴隷?」
……やめて。
ただでさえ私のエ○同人誌が世の中に出回ってるってのに。
もしかしてこいつ、私のエ○同人誌のヘビーユーザーとかじゃないよね?※彼女はバカです。
「ビビったのか? もし俺が負けた時は二週間、大人しく従って……」
「いらない。私、あんたと違って強いから。雑魚叩きのめして見返りもらおうとか思わないし?」
「このクソが! 舐めやがって。女に生まれたこと後悔させてやるよ……」
「はいはい、時間ないから早く来て?」
……こんなことなら、男の声にでもしてくればよかった。
私は目の前で雷撃を纏うミルコと向かい合い、武器は抜かずに拳を構える。
「後悔しやがれ! 異能・発現……無能封殺陣!!」
「あぁ、そういうこと……異能を封じる異能、ね。確かに凶悪。絶対的な自信はこれだったわけ。」
「後悔しても遅せぇんだよ! 重ねて異能発現“戦装・雷龍”!! さらにさらに、発現“封力之楔”!!」
「三つ持ち? 確かにすごい才能……しかも一つは戦装なんだ? 一つだけでも最上位序列に食い込める。あなたはいい退怪術士になれる。」
事実、『戦装・炎龍』を持つラナは序列2位に君臨している。
最も、ラナがその位置に上り詰めたのは、斬撃系異能の頂点『空間断絶』のおかげでもあるけど……
確かに、こいつの才能だけならナンバーズに匹敵するだろう……そう、“才能”だけなら。
「何ブツブツ言ってやがる! 異能が使えない中で苦痛に悶えて後悔しやがれ!!」
「バカなの? 異能を封じた程度で……本気で私に勝つつもり?」
ミルコは雷を纏った長槍を手にし、地面を蹴ると瞬時に間合いを詰めてきた。
雷の異能による加速は確かに速い。普通の人間なら、その速さに気づいた瞬間には心臓を貫かれているだろう。
しかし......私は軽く身体を傾け、槍の一撃をするりと躱した。
刹那、ミルコの槍が大気を引き裂き、その余波で地面が焦げる。
強烈な雷撃が槍の軌跡を追うように弾け、炸裂音と共に周囲の草木が焼け焦げた。
その威力だけなら、確かに最上位退怪術士レベルといってもいいかもしれない。
もちろん“当たれば”の話ではあるんだけど。
「どうした人類最強! そんなもんか? 逃げ回ってるだけじゃねぇかよ!」
「伯爵級くらいだったら相性次第でもう勝てるかもなぁ……」
「なにブツブツほざいてやがる! とっとと降参しやがれ!!」
「うーん。でも公爵級はまだ無理か……でも即戦力になるなら、北京のアイツに仕込んでもらえば……」
「てめぇ! 舐めんじゃねぇぞ!!」
ナンバーズ序列5位――“武聖のオウキ”。
序列こそ5位だが、実力だけで言えば、限界突破を覚醒したラナ以上の退怪術士だ。
彼は退怪術士の強化や育成に長けており、彼に仕込まれれば即戦力になるかもしれない。
――すると、遠くから他の生徒たちの話し声が聞こえてきた。
「なーんだ、世界最強やっぱ大したことないじゃん~。」
「で、でも……さっきから攻撃、一発も掠ってない気が……」
「いやはや。万年9位は考えることが幼稚でございますね。どちらにせよ、あの無能封殺陣が破れなかった時点でジリ貧なのですよ。異能なしと異能ありでは勝負になりませんから。」
「で、でも……ムーノ様はたくさん異能を持ってますよね? 封殺されても、それは能力だけの話で……異能保有による肉体能力の強化は消えないから……」
「あんたバカァ!? だから万年9位なのよ!! 異能保有による身体強化はミルコだってあんの! それに、そんだけで雷龍の異能より強くなれるわけないでしょ!?」
「で、でもでも……ならどうしてずっと攻撃が……」
なんとなく、クラス内の力関係が見えてきた。
私を擁護してくれている 9位の“仮名・天使ちゃん” は、どうやらクラス内での立場が弱いらしい……
そして途中で話に参戦してきた 丸眼鏡のインテリ は他人に「幼稚」と言ってる割に考察が クソショボい。
……てか、話し方がキモイ。生理的に無理。
「ミルコのバカ……いつまで遊んでんのよ!」
「そ、そもそもムーノ様っていくつ異能を持ってるんでしょうか……」
「第一世代とはいえ……腐っても人類最強とまで歌われた退怪術士ですから。5、いや6つは持っているかもしれませんね? さらにいえば、そのうちの3つ以上が最上位の異能である可能性さえあるかもしれませんね。」
「そう……思うんですね。」
「まぁあくまで可能性の話ですから。結局、異能を封じられては宝の持ち腐れですけれどもね?」
──残念でした、ハズレ!
私の異能保有数はぶっちぎり世界最多の11個。
しかもすべてが最上位の異能で、異能保有による身体強化の恩恵も別次元。
それに加えて、私は生身でもトラや象を殺せるくらいの身体能力がある……。
お分かりいただけただろうか?
“生身で象を殺せる人間”に、最上位異能11個分の肉体強化が常時掛かっているというチート具合が……。
そもそも、私は異能を封じられていたとしても『皇帝級、侍の大怪異』と剣一本で戦えた時点で、常識が通じるわけがない。
「クソ! ちょこまかと、うぜぇ! 逃げんな、この雑魚!」
「その雑魚に攻撃を当てられない君は、さらにクソ雑魚ってことになるね? クソ雑魚って可哀そ~。」
──要するに、こんなノロマの攻撃は、寝てても当たらない。
「調子乗りやがって……もういいわ。性奴隷にしようと思ってたけどよぉ! ここで殺す……」
「精々後悔のないように全力でやって? あとで“本気出してなーい”みたいな言い訳されるのマジでウザいから。」
「ふざけやがって! 望み通り殺してやる。異能共振……『雷龍封殺装』」
「へー? 異能共振まで……」
異能共振――それは、退怪術士の極致にして最強の切り札。
複数の異能を持っていたとしても、この領域に辿り着ける者はごくわずか。
ラナや私はホイホイ使っているけど、本来学生が簡単に到達できる領域ではない。
……これに関しては素直に目の前のイキリ陰キャを褒めてあげたい。
異能共振を習得するには、才能だけではなく、血の滲むような努力が不可欠だからだ。
「だ、ダメです! ムーノ様ぁ!避けてください! 」
「は、はぁ!? このチビ! あんたどっちの味方!? 誰か押さえつけて!」
「お任せどす。」
「ぐあっ!!」
──筋骨隆々の肉ダルマが、凄まじいスピードで9位の彼女を押さえつけた。
あのゴリラ! 私の天使ちゃんになんてことを……覚えてなさい。絶対に許さない!!
「ムーノ様! お願いします! 避けてください!!」
「大丈夫。心配しなくていい、私を信じて。」
「ムーノ様……」
「なに友情物語繰り広げてんだぁ!? 随分余裕だなぁぁ!!」
──私は今にも駆けつけそうな彼女を止め、攻撃に備えた。
ミルコの雷撃はどんどん膨れ上がり、そのすべてが槍に集中していく。
「早く来て? 退屈で死にそうだから。」
「そのすまし顔ごと真っ二つにしてやんよ……共振奥義!!」
ミルコの背に生えた雷龍の翼が、大気を振るわせる。
そのまま彼は、瞬く間に上空へと飛び上がり──空が、一変した。
天候が急激に変化し、巨大な雷雲が渦巻くように集まり始める。
雲の中心からは莫大な稲妻が帯電し、雷の奔流が大気を焦がしていた。
「なるほど、自分の異能をそういう風に解釈したんだ。悪くないね?」
「黙れ、死ね……“滅龍雷槍”」
ミルコは槍と共に上空に飛びあがる。
──次の瞬間......雷雲が閃光と共に巨大な雷撃へと変貌し、槍と共に私めがけて落ちてきた。
大気が裂け、轟音が辺りを震わせる。
雷の閃光が視界を覆い、周囲の草木は一瞬で蒸発。
雷の熱と衝撃で、地面すらえぐれ、周囲には気流の急激な変化による竜巻が生まれる。
──そして数秒後。
SSクラスの生徒たちは、衝撃的な光景を目にすることとなった。
「ちょっとミルコ~? いくらなんでもやりすぎ……って、え?」
「は?」
「ムーノ様……やっぱり……」
――そこには片腕で彼の槍を受け止めるムーノの姿があった。
どうもこんにちわ。G.なぎさです!
ここまで読んでくださりありがとうございます!
異能を封じる異能......さらに『千斬のラナ』と同系統雷龍の異能。
しかし異能を封じられたはずのムーノの顔にはまだまだ余裕があり......?
次回......”人類最強”vs”雷龍” 決着!!
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追記:『異能・封力之楔』は相手の能力を封じている間、自分の身体能力と感覚器官を強化する異能です。




