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第64話 アズルーズ異能学園




 ――ロンドン要塞都市、ビッグベン前――



 私は昨日伝えられた集合場所であるロンドンのビッグベン前に来ていた。

 少し前に私と子爵級の大怪異が戦った痕跡はすっかり消え、まるで何事もなかったかのように人々が行き交っている。

 要塞都市の修復能力にも感心するが.......それ以上にFCT側がどうして、こんな目立つ場所での集合を許可したのか疑問だ。


 そんなことを考えつつ、私はビッグベン前の人だかり中心にいるラナの元へ舞い降りた。



『ラナ? 来たよ。』



 異能・模倣でコピーした“念話”を使って、私はラナに声をかける。



『5分待っただけで、サイン50回はせがまれたわ。』


『前もってもらった資料には迎えが来るって書いてたけど……まずそのあたりから怪しいね? どうしてわざわざこんな場所で待たせるのかな?』


『そうよね。間違えて入られでもしたら、不味い場所でもあるんじゃないかしら?』



 ラナの言葉に、私は周囲を見渡す。

 群衆は私が来たことでますます膨れ上がり、熱狂する人々が口々に私の名前を叫んでいた。

 確かにこうすれば、私たちの動きを制限することはできるだろう。


 とはいっても流石に多すぎるので、ビックベンの上まで移動することにした。


 数分後――



「あの黒いリムジンかな?」


「あれね。急いで乗るわよ! もうサイン書きなんてたまんないんだから!」



 リムジンの扉がひとりでに開くのを確認すると、私は迷うことなくラナを抱えて転移で車内へと移動した。



「ロンドン要塞都市、異能育成機関のリムジンであってる? 合ってるならすぐに出して?」


「えぇ……間違いなく。ようこそムーノ様、ラナ様。この度は臨時とはいえ、世界トップの実力を誇るお二人を教師として迎え入れることができ、光栄の極みでございます。」


「いいから車出して。」


「承知いたしました。」



 そうして車は私達を一目見ようと熱狂する人込みをかき分けて、進んでいった。

 車外の音が一切聞こえない所から見るに、どうやらこの車は完全防音仕様らしい。

 さらに窓ガラスには暗視の異能がかけられており、外からは中の様子がうかがえない。


 するとラナが突然本題から話し始めた。



「結論から聞くわ。”寒熱のレイ”をどこにやったの?」


「はて、どこにやったとはまた物騒ですな。レイ様は学園をお出になった後、行方が分からなくなりましたので、我々は存じ上げません。」


「……あくまでシラを切るつもりね。まぁいいわ。」


「いえ、そのようなことは。事実を申し上げているだけにございます。」



 リムジンが停車すると、目的地の全貌が目に入った。

 天を衝くほどの巨大な塀がそびえ立ち、その威容は要塞都市の外壁にも匹敵するほどの厳重さを誇っている。


 学園の塀にしては異様なまでの警戒態勢だ。

 正直学園の塀にしてはオーバースペックなため、ますます中で何が行われているか怪しい。



「随分と厳重じゃない? 何を隠しているのかしら?」


「怪異の危険から、次代を担う退怪術士の卵を守るのは当然の義務と言えましょう。」


「ラナ、あんまり食いつかなくていい。一応、私たちは教師として来たんだし?」


「分かってるわよ……」



 巨大な正門がゆっくりと開かれる。

 その先にはさらに壁がそびえ立ち、まるでロシアのマトリョーシカ人形のように、幾重にも重なる防衛ラインが張り巡らされていた。


 運転士は門を通るたびに生体認証を受け、厳重なセキュリティチェックを通過していく。

 まるで教師が偽物にすり替わっていないかチェックしているようだ。



「随分厳重ね……」


「近頃ネズミが多くてですね……」


「ふーん。ネズミね? そのネズミって何のことなのかしらね?」


「いえ。ただのコソ泥にございますよ。お気になさらずに。」



 しかし大きな違和感も覚える。

 ここまで厳重な警戒をしているのなら、どうして私とラナをこんなに簡単に招き入れたのだろうか?

 まるで、私たちをここから出さない自信でもあるかのように――


 そんな不安が脳裏をよぎる中、車は最後の扉を通過した。

 そしてその先に広がっていたのは――


 まるで宮殿のような、豪奢な学園だった。


 建物は複雑に入り組み、その敷地面積は異常なほど広い。

 敷地面積や建造物の構造など、私が通う日本の異能学園とは桁が違う......

 さながらファンタジー世界からそのまま飛び出してきたような、豪華で華やかな光景が広がっている。



「さぁご覧ください! ここが世界最高の学び舎と称される、アズルーズ異能育成学園です!! これまで見た学園とはレベルが違うと肌で実感できるでしょう!!」


「確かに凄いわ……校舎の中から感じる教師の気配なんて、うちのシュヴァルツマン家の精鋭に匹敵するわね。」


「え? そう? 強いけど現場に出たらすぐ死にそうじゃない?」


「あんたね……」



 そう言ってはいるが......確かにここの生徒や教師は、並の異能学園とは格が違う。

 教師陣に至っては、最上位の退怪術士にも匹敵する実力を持つ者も多いようだった。


 とはいえ、退怪術士の最高位である”寒熱のレイ”がこんな連中にやられたとは到底思えない。



「ラナ様はここで降りてくださいませ。外に見えます教師のクリスがご案内いたします。ムーノ様はこのまま車に。」


「分かったわ。朔月、あとでね? 時間ができたらこっちから連絡するんだから。」


「分かった。くれぐれも生徒たちをボコボコにしたりしないようにね?」


「いや、それこっちのセリフなんだけど!? あんたが一番やりそうなんだから!」


「なわけっ( ´∀` ) とにかくあとでね。」



 いやいやいや。私は世界最強にして種の到達点『朔月のムーノ』だよ??

 私に生意気な態度を取る人類なんて、もうこの地球上にラナくらいしかいないでしょ。



 ――しかしこの時、私はまだ知らなかった。

 この後、付け上がった“雑魚”のせいで、自分の発言を全て撤回する羽目になることを.......。




 どうもこんにちわ。G.なぎさです!

 ここまで読んでくださりありがとうございます!


 遂に潜入したアズルーズ異能学園。しかしすでに不審な点が多くあり......

 異様なまでに厳重な檻の中で待ち受ける運命とは!?


 次回......生意気なクソガキたちの登場です。


 面白い、続きが気になる!と思った方は【応援】や【レビュー】をくれると超嬉しいです!!




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