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第61話 自演の桜花

「さよなら……」


「ダメェ!!」



 その時、私は自身の正体を隠していることすら忘れていた。

 サクラが今にも首を切り裂こうとしていた腕を全力で掴み、そのまま彼女を地面に押し倒した。



「やっぱり止めてくれた。私が嫌いなんて……嘘下手っぴすぎだよ~。」


「ぅっ……」


「さっきの言葉は、今助けてくれたからチャラだよ?」


「サクラ……ホントに死んじゃうかと思ったの……」


「月乃ちゃんを助けるまで、死んだりしないよ?」


「ぅぅ……ぅぅぅ……」



 気づけば、涙が溢れていた。

 堪えようとしても、どうしても止められない。

 力の限りサクラにしがみつき、まるで子供のように泣きじゃくった。



「いっぱい泣いたね~。でも泣くのは頑張った証拠なんだよ?」


「サクラ、さっきはその……ごめん……」


「全然気にしてないよ? むしろ私でいいなら、いくらでも八つ当たりしてね?」


「それはさすがに……」


「フフフ……ちなみに、いつまで私を押し倒してくれるのかな~?」


「あっ、ぅぅ、ごめん……」



 私が慌ててサクラの上から退くと、

 彼女は何事もなかったようにナイフを放り投げ、起き上がった。


 ……人生で初めて、心の底から"怖い"と感じた。

 そのせいなのか私はサクラの上から退いた後も、足に力が入らずその場に崩れ落ちてしまった。



「ほ~ら。おんぶするから掴まって~。」


「……ごめん、ありがとう……」


「おぶられ心地はどうですか~?」


「……安心する……」



 これまでの疲れが、一気に押し寄せてくる。



「少しは落ち着いた?」


「はぅ......」



 体が重く、言葉も上手く出てこない。

 サクラは私を背負ったまま、月明かりに照らされた小さなベンチに優しく降ろしてくれた。



「月乃ちゃん、そんな短いスカートで寒くない?」


「サクラこそ、そんな短いスカートで大丈夫?」


「そういえばそうだね? 忘れてたよ~。」


「私のせいでサクラが風邪をひいたら申し訳ない……」


「ん? あ~そっか、風邪って安静にしてなきゃだもんね~?」


「……」



 私は、数ヶ月前までサクラのことをただの"優しい子"だと思っていた。

 だからこそ、彼女が退怪術士になれば、怪異との戦いで心を痛めるのではないかと心配していた。


 ──でも、それは大きな間違いだった。

 彼女の中には、明確な命の優先順位がある。


 絶対に助けたい存在と、そうでもない存在をためらいなく線引きしている。

 サクラは"月乃"を助けるためなら、それ以外を切り捨てることに一切躊躇がない。


 そして、いつもは明るく陽気で、どんな時も笑顔で私を包み込んでくれるけれど──


 その奥底に秘めた絶望は、誰よりも深い。

 多分おじいちゃんでさえも、比べものにならないほど……。



「暖かくするよ~! 異能発現:愛花”桜まじ”」


「ポカポカ……サクラの異能はこんなこともできるの?」


「そうだよ~。でも、私から離れるとまた寒くなるけどね?」


「すごい……こういう多彩な使い方は、自分の異能を深く解釈しないとできないのに……」


「しょぼい異能だからさ……極めるしかなかったんだよ。」


「え?」


「なんでもないよ~。」



 確かに、サクラの異能はお世辞にも強力ではなく、戦闘向きとも言い難い。

 しかし、彼女はそれを限界まで深く解釈し研ぎ澄ませている。


 私やラナの異能は、強力であるがゆえに"そのまま扱うだけ"で大抵の敵を片付けられる。

 もちろん日々理解を深める努力はしているが、極限状態で弱い異能と向き合ってきた彼女とは比較にならない。

 でもサクラは違う。

 異能の根本を理解し、どこまで引き出せるかを突き詰めているのだ。


 だからこそ、彼女は私やラナとは違う"境地"に辿り着いている。



「巷では異能の悟りとか言うけど……今度教えてくれない?」


「無理だよ~。教えられるものでもないし? それに月乃ちゃんには、多分無理と思う!」


「サラッと残酷ぅ!? たまに出るその辛辣さなに!?」


「これは異能というより祝福だしね……オマケにある人と会って呪改造したの。だから教えられないよ。」


「ある人? それ誰?」


「ん~呪いの神様かな?」



 呪いの神様?


 異能を改造できる……?

 そんなことができる存在がいるなんて……


 もしかすると神々の一人……?

 ルーク様とルシア様に、後で聞いてみよう……。



「サクラ……その話、もう少し詳しく……」


「ごめんね~、ちょっと人に話せないようにしてるんだよ~。」


「……分かった。でも、いつか聞く……」


「うん! 全部終わったら教えるよ。」



 一瞬、"完全看破"を使えばサクラの秘密を暴けるかもしれないと思った。

 でもそれはサクラの"大切な思い"を踏みにじる行為......親友にそんなことはしたくない。



「サクラ……心は、どうやったら強くなるの?」


「心を強くする方法はないよ。」


「え?」


「心は、強くならないよ。」



 誰よりも強いと思っていたサクラから、

 飛び出したのは──予想だにしない衝撃の言葉だった。





 どうもこんにちわ。G.なぎさです!

 ここまで読んでくださりありがとうございます!


 サクラの自殺はまさかの自演!?

 完全に騙された月乃はその安堵から抑え込んでいた思いが溢れ出し?


 そして次回、遂にサクラが月乃に告......


 面白い、続きが気になる!と思った方は【応援】や【レビュー】をくれると超嬉しいです!!



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