第60話 自死の桜花
おじいちゃんの見舞いを終えた私は、自分の弱さに打ちのめされていた。
心の中で渦巻くのは、どうしようもない自己嫌悪。
矛盾している自分が気持ち悪い......ムーノじゃない時の希守月乃に、価値なんてない。
そんなことを考えていると、目の前にサクラの姿があった。
「月乃ちゃん!! 良かった! 生きてた……本当に良かったよ……」
「サクラ……」
「何かあったの? 辛そうな顔してる……私で良ければ話聞くよ?」
「これ以上……サクラに甘える訳にはいかないの。」
「えぇ? いつでも甘えていいんだよ~?」
ダメ……。
そんな優しい言葉を、今の私に掛けないで……。
絶対に言っちゃいけない言葉が、喉の奥からせり上がってくる……。
「もう……もう私に構わないで!!」
「ちょっ、どうしたの?」
「うるさい! もうほっといて! 付きまとわないで!!」
「月乃ちゃん! 待って!!」
私はサクラがギリギリ追いつけない速さで走り出した。
――最低だ……。
何があっても私を助けようとしてくれるサクラに、最悪の形で八つ当たりしちゃった......
こんな私に、生きてる価値なんてあるのだろうか?
人類最強という力を除いた"希守月乃"という人間に、本当に何かの価値があるの?
他の人……そう、ラナがこの力を持っていたら、一体どれだけの人間が救われていたんだろう。
「どうして私なの……他の人にこの力があれば……」
初めて……
私は自分が生まれ持った強さを後悔した。
気づけば、私は小さな公園に辿り着いていた。
時計を見ると、深夜1時を回っている。
誰もいない。
静かで、少し物寂しい空間。
......私は小さなベンチにうずくまり、静かに呟いた。
「なんか……疲れたな。」
おじいちゃんが目を覚まして、ラナにも正体を明かして……
張り詰めていた"ムーノ"としての気が抜けたのかもしれない。
......今の私は、希守月乃だ。
毅然とした態度で世界に希望を振りまき、怪異の神と命懸けで戦った"ムーノ"じゃない。
今までは、どんな怪異だって一人で圧倒できた。
誰にも頼らず、誰にも正体を明かさず、それでもなお生まれ持った強さで圧倒的な結果を飾ってきた。
自分の最強さに絶対的な自信を持っていたのだ......
けれど怪異の神との戦いで、私は……"最強"という唯一の拠り所を失った。
あの戦いが証明した。
私は"地球最強"という自負以外、何も持っていなかったのだと。
「守れるのかな……誰も失わずに勝てるのかな……」
そんな弱気な思考が、脳裏をよぎる。
今まで必死に否定してきたけど……あの戦いたとえこちらが不利だったとはいえ、ルーク様がいなければサクラを失っていた。
──私は本来、怪異の神にサクラを奪われていたのだ。
「サクラが死んだら私……」
「月乃ちゃん! やっと見つけた!」
「え? どうしてここが……」
「月乃ちゃんの思考パターンを読めば大体わかるよ!」
「……ほっといてよ。もう、私に構わないでよ!」
私、何を言ってるだろ......
こんな夜中に追いかけてきてくれた親友に向かって。
心配そうな瞳で見つめてくれるサクラに……どうしてこんな最低の罵声を……。
「何かあったの?」
「うるさい……サクラには関係ないでしょ!」
「……私のこと嫌い?」
「いつも鬱陶しいの!邪魔なの!!」
──あぁ……もう、死んじゃいたい……。
こんな酷いこと、言いたくないのに。
なのに、どうして言ってしまうんだろう……。
すると、サクラは静かに返事した。
「そっか……」
「分かったらもうほっといて……消えて……」
「うん、大丈夫。」
その無機質な声色に、私は嫌な予感がした。
──振り向いた瞬間、サクラは、自分の頸動脈にナイフを突きつけていた。
「サ、サクラ? 何やってるの……?」
「消えるから、大丈夫……」
「サクラ……違うの! さっきのは……」
「さよなら……」
「ダメェ!!」
――頭の中が、恐怖一色に染まった。
私は正体を隠していることすら忘れ、サクラに向かって飛び込んでいた──。
どうもこんにちわ。G.なぎさです!
ここまで読んでくださりありがとうございます!
自己卑下の果てに遂にサクラに八つ当たりをすてしまう月乃......
その先に見たのは何の躊躇もなく、喉にナイフを突き立てるサクラの姿だった。
次回、サクラと月乃......二人の関係は如何に??
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