第59話 不屈と千斬
「ならその四肢……ここで切り落としてあげるんだから。」
「な、何言ってるのラナ!!」
「……ますます感服じゃ。その歳にして、そこまで心得ておるとは……好きにせい。」
「おじいちゃんも何言ってるの! ラナもその刃しまってよ!!」
ラナは不可視の刃をおじいちゃんの周囲に展開し、いつでも斬れる状態のまま静止させている。
一方で、おじいちゃんの方も全身の筋肉を緊張させ、異能を発動させて迎え撃つ準備を整えていた。
一触即発......二人とも本気だ。
互いの気配がぶつかり合い、病室の空気が張り詰める。
「抵抗する気かしら? はっ! 万全でも勝ち目がないのに、手負いの老人に万が一なんて奇跡、起こらないんわよ!」
「勝てぬのは抵抗せぬ理由にはならぬ。それに千斬よ、ワシが四肢を落とされたくらいで術士を辞めると?」
「やめさせる方法なんていくらでもあるんだから! 舐めんじゃないわよ、この頑固ジジィ!!」
脅しじゃない。ラナは本気でおじいちゃんの四肢を切り落とすつもりだ。
彼女の全身からあふれ出る殺気は、怪異と戦う時のものと寸分違わぬ、本気のそれだった。
「お願い! 二人ともやめて! ラナお願い……おじいちゃんに痛いことしないで……!」
「ダメよ。今のあたしはいわば朔月の相棒……ムーノの剣よ。この老人を害せないなら、その弱さごとバッサリ切り捨ててるんだから。」
「こんな形、望んでないよ! もっと違う方法が……」
「無いわよバカ! これでも甘いくらいなんだから......矛盾してるけど、このおじいさん、殺さない限り術士を続けようとするわ。」
「でも……でも……」
「朔月! あんたはいつも中途半端よ! 今のあんたは希守月乃? それとも朔月のムーノ?」
「私は……」
私は──何なんだろう。
人類のためだと言いながら、私は学校に通い、人並みの生活を求めている。
背負っている重荷から目を逸らし、サクラという存在に甘えてばかりいる。
気づけば、私は矛盾だらけだった。
──人類のためにならないと分かっていながら、学校に通う。
──辛くなったら、都合よくサクラに頼って、現実逃避する。
──そのくせ、「生まれながらに満たされない」などと、悲劇のヒロイン気取り。
まるで子供のごっこ遊び……
言動と行動に一貫性がなく、めちゃくちゃだ。
──そして、頭が真っ白になった私は……
「引退しなくていいから……危険な任務には、できる限り行かないで……」
「……」
「もう怖いのは嫌なの、おじいちゃんお願い……」
「……善処しよう。」
「ラナもお願い……おじいちゃんを傷つけないで……」
結局、私は自分の発言を撤回するしかなかった。
どうして私は、こんなに弱いんだろう。
死んでも信念を貫く強いおじいちゃんと、殺してでも止める覚悟を持つラナとは大違いだ......
どうして私が……こんな最強の力を持ってしまったんだろう。
もし私ではなく、目の前の二人のどちらかが持っていたらきっと──
「……あんたとそのおじいさんが、それで良いって言うなら、あたしはこれ以上手出しはしないわ。」
「うん、ありがとう……」
「あーあ。本気で殺気出して気疲れしたわ。行きましょ? 朔月、あんたこれ以上ここにいたら、ろくなこと考えなさそうなんだから。」
「……なんでもお見通しなの?」
「違うわ、顔に出てんのよ。」
「……おじいちゃん。また来る。」
「うむ、そうせい。見舞いにしては重い空気になったからの。」
「……」
私は仮面をかぶり直し、ラナとともに病室を後にした。
落ち込んでいる私とは対照的に、ラナは行きと同じように堂々としている。
――結局、その後もおじいちゃんは引き下がらず......最終的に私が折れてしまった。
どうもこんにちわ。G.なぎさです!
ここまで読んでくださりありがとうございます!
一歩たりとも引かぬ”千斬のラナ”と”不屈のゼルス”
一触即発の事態を恐れ先に発言を撤回してしまったムーノ......
能力の強いムーノと意思の強いラナ......今後の二人の関係は如何に?
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