第52話 全世界に捧げる戦い
「人類の時代を……取り戻す。」
歓声は次第に絶叫へと変わり、その熱狂は会場中に響き渡っていた。
その後の対談では、ラナと共に退怪術士の今後の連携や、怪異が地球環境に及ぼす影響などについて話し合った。
また、最新技術の共有についても、公然と言及する場面があった。
「名残惜しいですが、そろそろ終わりのお時間が近づいてまいりました。退怪術士のトップとして、最前線で活躍されるお二人のお話はとても有意義でした!」
「前線の退怪術士がいつも勝てるわけじゃないってのは分かってて欲しいわ。あたしからはそれだけよ。」
「番組が終わったなら私たちは帰るけど? 色々と忙しいの。」
「あ、はい! 本日はありがとうございました!」
席を立ち、スタジオを後にしようとした瞬間......
スタジオ全体に緊急避難命令が響き渡る。
「朔月?どうやら出動要請よ。公爵級怪異が3体出現したらしいわ。近場の退怪術士に早急な現場到着に向かえってね。」
「場所は?」
「オホーツク海よ。」
「.......どこが近場なの?ここ日本の新宿なんだけど?」
正気?百歩譲って日本領の北海道とかなら理解できるが......
いくら私達の移動速度が速いとはいえ、オホーツク海が近場は無理あるでしょ。
それとも世界最多の出動回数を保持し、年中無休で世界中を飛び回るラナにとっては「近い」なのだろうか。
「で?どうするのかしら?」
「でも私たちならすぐか……行こう。」
「スタジオの皆さま!公爵級とのことです!全員、シェルター移動用の保護室に避難を!」
――すると何人かが声をあげ、スムーズに避難が始まった。
「地理のある者が避難ルートの先導を! お年寄りと子供を優先して背負って!」
「最寄りの移動シェルターには収容人数制限があります! 二手に分かれてください!」
パニックにもならず避難が手際よく進む様子を見て、思わず心が熱くなる。
この時代の人々は確かに逞しい。危機に慣れ、それに立ち向かう精神力を持っている。
それを見て、心の中で誓う――私はその強さをさらに支える希望にならなければならない、と。
「今回、朔月ムーノはドローンでの撮影を許可する。」
――国際放送の前で......私は高らかに宣言した。
唐突な宣言にラナが目を丸くする。
「ちょっ、いいの? あんなに嫌がってたのに……」
「今日だけ特別。」
「知らないわよ? 後でどうなっても……」
「そ、その時はどうにかして……」
「はぁ!? 急に弱気!?……でもいいわ。シュヴェルトマン家の力でどうにかしてあげる!」
「ありがと。」
私たちはスタジオから出てすぐに飛び立ち、公爵級怪異のいる現場へと向かった。
――現場に向かう道中――
「朔月? 今回のこれ、また怪異の神を呼び出すための布石なんじゃないかしら。」
「可能性はある。何せ前回も、複数の上位怪異が揃ったときに出てきたから。」
「なら、また怪異の神が……」
「でも、今回は違う。速攻で私達が現場に向かってるから。多分だけど儀式を終えるには、相当な時間がかかるんだと思うの。」
前回はナンバーズが情報共有を終えた後、おじいちゃんが偵察に向かうまでに数日を要した。
しかしそれでも、おじいちゃんが調査を開始した時、まだ怪異の神は出現していなかったのだ。
それは怪異の神を呼び出す儀式は、数日間かかるという証明でもある。
――するとその時、通信が入る。
【ナンバーズ序列8位『圧殺のアルマイン』が交戦中】
「アルマインじゃ荷が重いんだから......あたしたちが早くいかないと危ないわよ!!」
「あのオバサン、経験は豊富だから倒そうとしなければ平気じゃない?」
「あ、あんたね......アルマインの性格分かってるでしょ!?」
「あーうん.....急ごっか。」
ナンバーズ序列8位『圧殺のアルマイン』
齢46歳、ナンバーズの中で三番目に年長者だ。
異能は『爆圧』という空気を爆発的に圧縮する能力と、周囲の水を自在に操作する『水の女王』の二つだ。
更にそこに自身の五感と肉体硬度を極限まで高める、専用装備を着用している。
持久戦も可能な能力を持ちながら、彼女は好戦的な性格ゆえに近接戦闘を好む。
巨大なハンマーを振り回しながら敵に挑む姿は、ある意味で狂気じみている。
要するに時間稼ぎなど、まずできない性格なのだ.......
「もし相性の悪い敵に当たってたら危ないわ。しかも、あの辺はアルマインの管轄。敵が対策を立ててきてる可能性だって十分あるんだから!」
「管轄狭くない? 私とラナなんて世界中飛び回ってるのに。」
「一応、私はドイツとヨーロッパ中心の出動が多いわ。日本はあなたがいるせいで平和すぎなのよ。」
「日本に出る怪異はサクラに害を及ぼすかもだから、最速で排除してるもん。」
「サクラ贔屓すぎでしょ! 前と発言が矛盾してんのよ、あんた!」
「サクラは特別だからいいの!!」
少し痛いところを突かれた私は、子供のように反撃するしかなかった......
そうして私は今日も怪異を滅ぼすために海を越える。
どうもこんにちわ。G.なぎさです!
ここまで読んでくださりありがとうございます!
勝利を宣言したのも束の間、新たる怪異の出現が報告される。
果たしてムーノは人々に勝利の象徴として、絶対的な力を示せるのだろうか?
月が美しく満ちる時......全ての戦いが幕を下ろし、そして......
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