第51話 人々に再び夢を......
私の登場に興奮していた司会者は何とか進行を再開し、まずラナに話を振った。
「ではお二方にお聞きします。現在の退怪術士特務局の課題点について、対策や現状と合わせて見解をお伺いしたいです。まずラナ様、お願いします。」
ラナは一瞬考える素振りを見せた後、ストレートに答えた。
「圧倒的に人手不足だわ。とにかく強い退怪術士が少なすぎるのよ。 今の人類には、育成に時間をかける余裕がないわ。だから数年後に化けるかもしれない若手も、すぐに実践投入しなきゃいけない状況なわけ。 結果、死ぬ。でもそうしないと回らない。 これは大きな課題点ね。解決策としては、短期間で強力な退怪術士を育成できる指導法の追求くらいしかないと思うわ。」
司会者は少し間を置き、慎重に次の質問を投げかけた。
「なるほど……それは、ナンバーズの方々や他の上位退怪術士の直接指導、実践授業の強化では解決しないのでしょうか?」
ラナは苦笑いを浮かべながら、鋭い現実を突きつけた。
「一般人基準だとそうなんのね。無理に決まってんだから。ナンバーズは連日連夜出動してるわ。 ナンバーズ会議を開くとね、その間会議がない時間より100人多くの人が死ぬの。教育にナンバーズを回したら、繁殖速度と死亡スピードが逆転するわよ?それに実践授業の強化も不可能よ。今でさえ学生の3割以上が退怪術士になる前に命を落とす。これ以上の死者が出たら、退怪術士という仕組みそのものが瓦解するわ。指導方法も研究してるけど、現時点では有効なものは見つかっていないの。」
司会者も含めて会場は静まり返った。想像以上に現実的な話に暗い空気感が漂う。
事実ナンバーズの会議は基本的によほど重要でない限り、オンラインだ。
前回はたまたま人数が揃っただけで、基本的に9人全員がそろい踏みすることはない。
「ではお次に、朔月ムーノ様、お願いします。」
ラナの冷静な分析に続いて求められた言葉。
人類最強として私がやるべきことは一つ......
「課題?意味の薄い議論ね.......」
「え……?」
「課題を解決して?それで怪異に勝てるの?」
正直、ラナが指摘した課題は間違っていない。
早急に取り組むべき問題だということは理解している。
しかし......強い退怪術士が増えたとして、人手が足りたとして?
多くの命が救われたとして、果たしてそれで終わりなのだろうか?
「どういう……ことでしょうか?」
「それでどうやって怪異を根絶やしにするの? これは種の削り合いなの。私たちが滅ぶか、怪異を滅ぼすか……そんな課題点の補完じゃ時間稼ぎにしかならない。根本的な問題は解決しない。」
司会者が言葉を失い、スタジオ全体が静まり返る。
「ではムーノ様……一体、どうしたらいいのでしょうか?」
「言い方が悪かった。私が勝つか、怪異の神が勝つか。それで全ての運命が決まる。それだけの話よ。」
現時点で怪異の神に対抗できるのは私だけだ。
そして今、まともに私と戦いが成立する存在もまた、怪異の神だけ。
もし私が怪異の神を討ち倒せば、種族間の戦争は決着する。
怪異の神がいない怪異など、私にとってはゴミ掃除でしかない。
だが、それは怪異の神にとっても同じことだろう。
「怪異の神はそれほどの強敵だったのでしょうか?」
「結論から断言するけど……今の人類であれと1分以上対峙できる退怪術士は存在しない。」
「では私たちは……滅んでしまうのでしょうか?」
「は? 滅ぶのは怪異。だって人類には……私がいるじゃない?」
その瞬間、スタジオは歓声に包まれた。
熱狂ともいえる声援が押し寄せ、会場の空気が一変する。
この場にいる誰もが、忘れかけていた希望を思い出したかのようだった。
怪異のいない世界で繁栄するという夢――それが現実となるかもしれないという期待。
「本当に……期待していいんでしょうか? ムーノ様……」
「2038年、不可能とされた要塞都市ベルリンを奪還したのは?」
司会者は言葉を失い、視線を落としたまま答えた。
「そ、それは......」
「2039年、歴史上初めての公爵級怪異を撃破したのは? 六歳で『人類最強』になったのは? 100を超える『要塞都市』を奪還したのは? 地球上で最も怪異を滅ぼしたのは? 一体誰だと思う?」
「ムーノ様......です。」
「私は人類の“不可能”を全て“事実”に塗り替えてきた。 分かる? 私こそ『人類の栄華』そのものなの。」
その場にいる全員......いやおそらく国際放送を見ている全員が、私の言葉に打ち震えている。
それと同時に、私の肩に乗っているものの重みを改めて痛感するのだ。
本当に万全の状態の怪異の神に勝てるのだろうか?
そもそも私の使命は本当に人類を守ることなのか?
深緑の神様、淡藤の神様……彼らはこの星に何をしに来たのだろうか?
――それでも私は言わなくてはいけない。示さないといけない、『人類の希望』としての姿を。
「怪異の神は私が倒す。次に怪異の神が出た時が.......怪異の最後になる。あんたたちは精々、勝った後のパーティーの準備でもしてなさい。」
「勝つ......私達が、怪異に......」
「朔月あんた.......」
「人類の時代を......取り戻す。」
歓声が絶叫に変わり、スタジオ全体が揺れるような熱気に包まれた。
――こうして私はどんどん自分を追い込んでいった。
――魅せた夢の結末など、まだ想像すらできないままに......
どうもこんにちわ。G.なぎさです!
ここまで読んでくださりありがとうございます!
高らかに約束する勝利の宣言。
ラナは全てを察し、心配の眼差しを向けているが果たしてその真意は?
月が美しく満ちる時......全ての戦いが幕を下ろし、そして......
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