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第49話 サクラという名の呪い





 夜になり、私は月乃ちゃんに読み聞かせをすることにした。

 流石に子供扱いしないで……と言われるかと思ったが、現在彼女はベッドの上で私にもたれかかっている。

 羽毛布団を鼻の上までかけ、大人しく聞いているその姿は小動物のようで……正直、超可愛い。



「何でキツネは打たれちゃったの?いいことしたのに……」


「すれ違いがあったんだよ。いいことをしても、上手くいかないときがあるんだよ。」


「うーん……でも可哀想。」


「そうだね……可哀想だね……」



 長い間、月乃ちゃんと一緒に過ごしてきて、私は一つ気付いたことがある。

 彼女の奥底にある情操――それはおそらく、3~4歳程度で止まってしまっている。


 もちろん、彼女の人格を構成するようそは一つではないため、大人びた部分も多い。

 しかしふとした時に見えるその純粋さや素直さは、年齢に見合わないほど幼く感じることがある。


 そんな彼女を見て、私はいつも心が揺れるのだ。

 ――本当に、この子を退怪術士にして良いのだろうか?



「月乃ちゃんはどうして退怪術士になりたいの?」


「みんなを守りたいの……私は、誰かのために……」


「ダーメ。その理由で退怪術士にはさせないよ?」


「え?」



 月乃ちゃんがよく語る「誰かのために」という言葉。

 それは彼女自身の狂気にも似た、本能的なものだと私は思う。


 怪異が人類を滅ぼそうとする本能に近いもの――月乃ちゃんは上手く言語化できてないけれど......

 彼女はおそらく『誰かに仕える』というコンセプトで作られた存在なのだ。



「月乃ちゃんが仕える相手は、人間であっちゃダメだよ。今の人類に仕えたら、月乃ちゃんはただの犬になっちゃうと思う。」


「い、犬ぅ!?」


「そのくらい今の人間には余裕がないんだよ。だから、その願いを退怪術士として叶えようとするのは絶対にダメ。」


「犬……悪くない、かも。」



 彼女のその言葉に、思わず胸がざわつく。

 これは良くない。最近は月乃ちゃんの中にある危険な思考がより膨らんでいるのを感じる。

 今、ここで歯止めをかけなければ――私でさえ、もう止められなくなってしまうかもしれない。



「月乃ちゃんは犬じゃないよ……人間だよ?もし本当に犬になりたいって言うなら……私、月乃ちゃんとお友達でいられなくなっちゃうからね?」


「やだぁ!犬にならない……だから!私のこと、捨てないで……」


「その言葉はおかしいよ。私と月乃ちゃんは対等だよ?私が一方的に月乃ちゃんを捨てることなんてできないもん。ねぇ……ずっと何に怯えてるの?」


「ぅぅ……」



 これまでの回帰の月乃ちゃんには無い、特有の焦燥感……。今の月乃ちゃんは何かに怯えている。

 嫌な予感がする。今回はその怯えの原因で月乃ちゃんが死んでしまうような……そんなすごく嫌な感じがする。



「私には言えない……んだね。」


「違うの!お願い信じて……サクラの事が信用できないとかじゃなくて……」


「分かってるよ。それが私に関わることだから言えないってこともね?」


「え、どうして……」


「分かるよ……ずっと、ずっと、ずーーっと月乃ちゃんだけを見てきたんだもん……」



 きっと最初は、大切な友達を助けたいという純粋な善意だったと思う。

 でも、何度も何度も過去を繰り返すうちに、もはや好意ではなく執着に変わり始めている。


 私にはもう……月乃ちゃんを助ける以外の道がない。それでしか自分の存在意義を保てない。



「サクラ?」


「暗い話しちゃってごめんねだよ!はいこれ!前に言ってた私の作ったベーコンエッグトースト!!」


「美味しそう!!」


「たくさん食べて少しでも元気になるんだよ?」


「うん!」



 月乃ちゃんはベッドに横たわったまま、トレーを敷いてトーストを食べている。


 あぁ、愛おしい......愛おしい愛おしい愛おしい愛おしい愛おしい愛おしい

 愛おしい愛おしい愛おしい愛おしい愛おしい愛おしい愛おしい愛おしい。


 そんな彼女を眺めていると......私の心からドス黒い愛情が膨れ上がってくる。

 自分でも異常だって分かってる......でももう止められない。

 私はもうとうの昔に、手遅れなところまで来てしまったのだから。



「可愛い……本当に大好きだよ……月乃ちゃんが笑える世界になるなら、私は何千回だって……」


「サクラ……大丈夫。私は、もう私は大丈夫だから。」


「……わ、私も食べるね。変なこと言っちゃってごめん。」


「うん……」



 私は思う――いや、確信している。

 もう私は、ある種の呪いになり始めているのだ。

『月乃』という少女を救おうとする装置。それ以外の執着をすべて失った呪い。


 最近ではラナちゃんでさえも、"消耗品"として考え始めている自分に気づいてしまう。

 ダメでも次の回帰で助ければいい。そんな思考がよぎるたび、私は自分の中の倫理が失われていくのを感じる。


 友達のはずなのに……仲間のはずなのに……。

 回帰を重ねるごとに、みんなと私の思いの大きさがズレていくのが分かる。


 みんなが思っている玉貫サクラは、世界のどこにも存在しない。

 私は他人とは違う時間を生き、無いはずの記憶を持っているのだから。


 ――あれ?私は本当に……玉貫サクラなんだろうか?





 どうもこんにちわ。G.なぎさです!

 ここまで読んでくださりありがとうございます!

 全然更新できなくて申し訳ない限りです......


 100回を超える回帰でサクラの好意は次第に執着へと変わっている?

 彼女にとってはもう諦めるという選択はなく、ただ進むしか......


 月乃が救われたとき、果たしてサクラは......


 面白い、続きが気になる!と思った方は【応援】や【レビュー】をくれると超嬉しいです!!




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