第8話:夢の中で世界線が交錯──両世界で同時に陸が観測される
陸は眠っていた。
アストラル都市の光のベッド。
だが意識は、活動を止めていなかった。
夢──それは、観測が最も曖昧になる瞬間。
そして、観測が“二重化”された瞬間でもあった。
──東京。
──神田川沿い。
──交差点。
──地下研究室。EVE。
それらの風景が、陸の夢に“生々しく”現れる。
だが、これは単なる記憶の再生ではない。
なぜならその夢の中で──“もう一人の自分”が、彼を見つめていたから。
「……俺……?」
夢の中、交差点に立つ男。
黒いコート。白衣。
5日前の自分。
しかし、そいつは静かに笑っていた。
まるで──“今の陸”を、観測しているかのように。
そして言う。
「君は、まだ完全には“観測されていない”」
「でも、今ならわかるよな。
観測されてないのは、怖いことじゃない」
「“自分が自分を観測すれば、存在は消えない”んだ」
──“夢の中で自己を観測する”
それは哲学ではなく、構造そのものへのアクセスだった。
そして、そのとき。
現実のEVE装置が、再び陸の波形を捉えた。
【DUAL OBSERVATION DETECTED】
【PHASE COLLISION:STARTING】
【ZETA LAYER × EARTH LAYER】
朝霧が叫ぶ。
「来る……! 世界線が──“重なろうとしてる”!」
そして、全モニタが真白に染まった。
伊波が呆然と口にする。
「おい……EVEが──“観測されてる”……向こう側から……」
夢の中で、陸はすべてを“見て”いた。
「俺は、ここにいる」
「そして、向こうにもいる」
「だから──もう、どちらでもない。
俺は、“世界線の中間”に、存在している」
彼が観測する限り、
彼が観測される限り、
存在は消えない。
次回!第一章クライマックス!
次回もよろしくお願いします!




