第7話:都市深層構造と陸の決意──“観測とは何か”への核心到達
アストラルシティは、外から見るよりも遥かに広く、深かった。
上空に浮遊する層は、いくつもあるレイヤーの“上澄み”にすぎない。
都市の本質は──地下に存在する「根」だった。
紗良に導かれ、陸は都市の中心核へと降りていく。
それは地下ではない。“観測されていない情報空間”に存在する、都市の構造の裏側。
そこは、数値では説明できない“観測の記憶”が流れていた。
──かつて存在したもの。
──存在しかけて消えたもの。
──観測者が未確定のままに放棄された存在の“余白”。
『ここは、アストラル構造の基底層──“プロト・フォールド”。
存在するすべてが、“定義される前”に蓄積されている場所。』
紗良の声が空気の振動に混じって、陸の意識に届く。
彼の五感はすでに、この深層領域に適応していた。
思考と空間が直結し、目を閉じれば「物質の前の状態」が見える。
都市の構造、住人の記憶、存在が定義されるその瞬間……
すべてが、観測によって“固定されている”。
(世界は、定まってなどいない。
ただ、“観測する者”がいたから、定義されただけだ……)
(なら──俺が、どう観測するかで、
この世界はどこまでも変わる)
だがそれは、同時に恐怖でもあった。
『あなたの観測は、強い。
世界を揺るがせるだけの“定義力”を持つ。』
『けれど、それは破壊と再構築の両方を意味する。』
『あなたが“選ばない”限り、世界は不安定なまま──観測されず、存在しないままになる。』
──それは、この世界に来てから、ずっと陸が逃げていた問いだった。
(俺が、この世界を壊してしまうかもしれない……)
(でも──)
彼はゆっくりと目を閉じ、深層空間に向かって意識を広げる。
そこには、地球で見た風景──東京、EVE、伊波、朝霧──
すべてが断片的な“観測の残響”として存在していた。
(俺が見てる限り、この世界は生きている。
なら──俺は、選ぶ。
この世界を、“存在させる”と──)
その瞬間、空間が応えた。
──観測の応答。
都市が震え、彼の存在情報が“確定値”へと近づく。
全レイヤーに共鳴が走り、上層構造までが光を帯び始める。
陸は初めて、“この世界の観測者”として、都市と一体化した。
『選んでくれて、ありがとう』
紗良の微笑みが、そこにあった。
──だがその頃、現実世界では、EVEの反応が“臨界点”を越えていた。
作者:EVEが臨界するとどうなっちゃう?気になるねぇ広めましょう!
馴田:お願いしますぅ




