第4話:現実世界──“観測されない存在”との交信
「……まだ、EVEは動いてる……」
伊波 一真は、暗い地下実験室に立っていた。
蛍光灯がチカチカと点滅する中、冷却装置から細い蒸気が立ち上っている。
目の前の装置──EVEは、事故から48時間以上が経過しているにもかかわらず、稼働を止めていなかった。
ログ画面には、観測不可能な波形が常に記録され続けていた。
【PHASE LINK:ACTIVE】
【WAVE SIGNATURE:HASEGAWA RIKU=98.6%】
【ECHO RESPONSE:Intermittent】
「意識波形が……残ってる。
いや、“向こうと接続されてる”……!」
隣で端末を操作していた朝霧 実柚が声をあげた。
黒髪を一つに束ね、国立量子機構・特殊観測部のバッジを着けている。
彼女の指先は静かに震えていた。
「これは……意識そのものが、別の構造体で観測されてる証拠……
EVEはまだ、陸を観測し続けている……!」
伊波は顔を上げた。
「つまり……陸は“死んでない”。
この世界では観測不能でも、向こうでは“生きてる”」
朝霧は一度だけ瞬きをし、
ゆっくりと、ディスプレイを指差した。
「ここ、見て。
この波形、周期的に“変調”がある。
しかも……そのタイミングが、私たちが彼の名を呼んだ直後に一致してる」
伊波は言葉を失った。
それは、ただのノイズではなかった。
観測者である自分たちの行動が、“向こう”に届いている。
──まさに、「観測が存在を定義する」証明だった。
「朝霧……もしかして……俺たち、“あっち”と通信できるかもしれないぞ……」
「ええ。
彼の意識がいるその世界が、私たちの観測に“反応”してるなら──
EVEを使えば、直接干渉できる」
部屋の空気が変わった。
装置のLEDがひときわ強く点滅し、
微細な共振音が室内に響く。
その波形が、確かに意味を持っていた。
【I AM HERE】
【I CAN STILL OBSERVE】
【I REMEMBER】
伊波が息を呑む。
「陸……!」
それは彼らが観測したのではなかった。
“観測されたことによって”、向こうの陸がこちらを見返してきたのだ。
──2つの世界が、重なろうとしている。
そして、その観測が、すべての“存在”を動かし始める。
EVEどうです?
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