第10話:EVE再始動──帰還経路の確立
第二章始まりです!
東京・国立量子機構、第13研究支部。
事故から13日目。午前3時32分。
地下制御室の照明は最小限に落とされ、
無数の端末から放たれる冷たい光が、静かな熱気と緊張を映していた。
EVE──Evolutional Vibrational Engine。
観測理論に基づき、「意識の存在座標」を再定義するための唯一の装置。
本来は、学会でも否定され、存在さえ伏せられていた。
だが今、国家が正式に動き始めた。
「リンクが安定してきたわ」
朝霧 実柚がモニタを見ながら、冷静に言う。
彼女の指先はいつになく正確に動いている。
周囲の研究員たちも、静かに、だが明らかに何かを“感じていた”。
「ZETA層とのチャネルが完全に固定された……ってことか?」
伊波 一真が隣から声を発する。
「固定というより──“観測相互化”が進んでるの。
私たちがあちらを見てるだけじゃない。
“あちらも、私たちを見てる”」
「双方向観測──か」
伊波が息を呑む。
「まるで……向こう側が“世界そのもの”を観測し返してるような感覚だな」
端末の一つが、異常ログを吐き出す。
【EVE_SYSTEM_CORE STATUS:ACTIVE】
【PHASE CHANNEL:STABILIZED】
【RETURN VECTOR:ESTABLISHED(実験レベル)】
【REALITY INTERLINK: ZETA↔EARTH】
「“帰還経路”、できたぞ……」
伊波の言葉に、研究室が静まり返る。
それは、あちらに存在している“長谷川 陸”の意識を、再びこの世界に戻す可能性のある唯一の道だった。
しかし。
それは同時に、
“ZETA層”の構造に、現実の観測者たちが物理的に干渉する道でもある。
「この回路を通して観測すれば、
“こちら”の物理構造が向こうに入り込むことになる」
朝霧の表情に、微かなためらいが浮かんでいた。
「つまり──向こうの世界に、現実の“法則”が侵食し始める」
──それは、神を“人間”が観測することと同義だった。
──つまり、神は神ではいられなくなる。
「戻すべきか、それとも……」
伊波は問うた。
朝霧は、ゆっくりと首を振った。
「彼は、向こうで“何かを選ぼうとしてる”。
それが終わるまでは──干渉すべきじゃない」
けれど、その静けさは長くは続かない。
EVEが、再び“呼吸”を始めた。
まるで、誰かがこちらを“観測している”ように。
【INCOMING OBSERVATION SIGNAL DETECTED】
【SENDER:ZETA_ID-01-RIKU】
【MESSAGE:I AM STILL WATCHING】
その瞬間、全員が知った。
──陸は、まだあちらで“観測していた”。
──そして、今度は彼が“神”として観測され始めている”。
都市の向こうで、
都市そのものが、
彼を“神として定義し始めている”。
──そしてその観測が、ZETA層の構造に“ひずみ”を与え始めた。
作者:神が変わる⁉ 予測が付かない!みんなに進めてください!
馴田:やっぱり宣伝下手なのはずっとなのね




