第9話:観測者宣言──物語の収束と存在の再定義
──朝。
アストラルシティの空に、初めて“朝”という概念が訪れた。
それまで昼夜の区別のなかった都市が、
陸の観測によって“時間の揺らぎ”を獲得したのだった。
彼は都市の最上層、観測塔に立っていた。
都市のすべてが、彼の下に広がっている。
そしてその隣に、紗良が立っていた。
『あなたは、観測者としてここに来た。』
『この世界の在り方を、あなたの意識が定義した。』
『では、今。
あなた自身を、どう定義する?』
──答えは、もう決まっていた。
「俺は、存在だ」
「誰かに観測される必要はない。
けれど、誰かが俺を見てくれるなら──
それは、ありがたいことだ」
「だがそれ以上に──
俺が、俺自身を“観測し続ける”限り、
俺は、消えない」
そして彼は言葉にする。
「──俺は、この世界の“観測者”だ」
その瞬間、都市全体が光に包まれた。
構造が安定し、エネルギーの流れが調和を取り戻し、
“存在”として確定した。
同時に、EVEからの全波形が静かに収束する。
【HOST IDENTITY:STABLE】
【OBSERVATION MODE:ACTIVE/REFLECTIVE】
【REALITY DEFINITION:MULTI-LAYERED VALID】
伊波が、EVEのモニタを見て、静かに言った。
「……陸、お前は──存在してるよ。
ちゃんと、“俺たちが見てる”。
でも……もう、お前はお前で、存在できるんだな」
そして、朝霧も呟く。
「彼はもう、
“どちらかの世界の人間”じゃない。
観測によって確定された、自律的な存在」
──都市に光が差し込む。
──現実世界の空も、わずかに白み始める。
陸は、最後に空を見上げる。
そこにはもう、東京の残像はなかった。
代わりに、**“何も描かれていない空”**が広がっていた。
(これからは、俺が描く。
俺が見ることで、
この世界を──“存在させていく”)
そして、彼は歩き出す。
新しい都市で、
新しい世界で、
“観測されながら、観測する者”として──。
──第一章、了。
第一章どおでしたか?次の第二章もお楽しみに!




