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めしエッセイまとめ

峠の古びたラーメン屋には一生変わらないで欲しい

作者: よもぎ

クソガキ時代、県庁所在地に住む親せきの家と実家との往復をする際に、高速を使う時もあれば下道を使う時もありました。

私は高速の時よりも下道の方が好きで、その理由が、通る時間帯が大体メシ時なので、道中にあるとあるラーメン屋に寄ってくれるというおばかな理由でありました。


そのラーメン屋は下道、というか山道にある、「この道通る腹ペコ野郎を受け入れてやってきた」風格のある、昭和と平静初期を混ぜたような少々古いお店でした。

駐車場はちょっと広め、お店そのものは駐車場に合わせた微妙な規模。

いわゆる「ラーメンショップ」的なお店です。

ぼろっちいのれんをくぐると「へいらっしゃい」とやる気のないコールを店主さんがしてくれました。

そう広くもないカウンター席に座り、父が大盛りラーメンにチャーハンギョウザと気絶しそうな注文をするのを聞き流して私はラーメンに半チャーハンを頼んでいました。

いくらクソガキで食欲が爆発しているとはいえ、ガタイがよく肉体労働に身を置いていた父ほどは食べられなかったわけですね。



で、今時のラーメン屋のように家系だのなんだのというジャンルはないわけです。

ラーメンです。

他の味?知らんな……という風情です。

チャーシューめんはありますが、それはチャーシューが増えただけなので結局ラーメンです。

メンマにチャーシュー、味玉が乗っただけの素朴なラーメンが供されるわけです。

野菜とかノリとかニンニクとかないです。

カウンターの上にはギョウザ用の酢とテーブルコショウくらいしかありません。

あとはお水だけです。給水機ではなく、透明のプラスチック・ポットにキューブアイスと共にお水がドカンと入れられていて、好きに飲め!と置かれていました。



で、「あいよっ」とラーメンその他が渡されるわけです。

これ地味にスゲーなって思うんですけど、タイムラグとかなしに「はいはいはいッ」と、全ての注文した品が一気に出されてた記憶があるんですよね。

チャーハン仕上げながら麺茹でてギョウザも焼いてるんですよ。

やっぱプロって違うわ。



さて、このラーメン屋は太すぎもせず細すぎもしないイイ感じの麺です。縮れてるっちゃ縮れてる、ストレートじゃない麺に濃い目のスープがよく合います。

アッツアツのスープから麺をすすりあげるあの快感はクソガキを卒業して地元を出た今でも「あの店またいきてーなー……」となる程度には残っています。

気取ったラーメン屋では出せない武骨なうまさです。


スープもレンゲなんてしゃらくさいもの使わずにどんぶり持ってズズーッといきます。

クソガキにテーブルマナーを求めちゃいけません。

少なくとも私というクソガキは隣に座った父親の作法を見習って生きてました。

父は大盛りラーメンをズズズと吸い取り、チャーハンをガツガツ食らい、ギョウザを口に放り込んでいました。

アルコール飲んでよかったなら瓶ビールも頼んでいたでしょうね。

酒豪で健啖家でうまいもの好きの父でしたから。



その父は私が一生懸命ラーメンと戦っている間にギョウザも一個だけ半チャーハンの皿に分けてくれたものです。

このギョウザがまたうまい。

ニラがたっぷりで肉汁が程好く溢れてきて、それで皮はもっちりしつつも底は程々に焦げていてカリカリで、父娘揃って口臭くなってたんやろなあ。

けど食べちゃうのがギョウザの不思議なところ。

昨今はギョウザも小粒化していますが、当時は大粒のギョウザが五個で三百円ほど。お安い!今はどうなんでしょうね?


チャーハンも程好くパラパラながらしっとりもしていて、味付けはラーメンに合わせる前提でついていたように思います。

チャーシューたまねぎ卵になぜかカマボコのみじん切りが入っていて、けどそれがまたいい味出してんだよなあ。


ラーメンのスープも半分がた飲んで他を完食してしまえばさすがのいつでも腹ペコクソガキも満腹になろうというものです。

父は私が食べ終わる頃には食後の水を楽しんでおります。早すぎんだわ。



「おう、よもぎ。食ったか」

「うん。ごちそうさまでした」

「出るか」



おあいそ~と言ってお会計をしてもらって、外に出ます。父は車に乗り込み次第タバコに火をつけ、少しだけ休みます。

腹がこなれるまではお互い席に座ったまんまでシートベルトもしません。

店で休まないのが私と父のラーメン屋での流儀でした。

駐車場で十分ばかりも休んでからそっとシートベルトをして帰り道を行くわけです。



「今日の晩飯なんだと思う?」

「分かんない」



食ったばっかのクセしてこんな会話をしていたな。

そんな記憶がラーメン屋とセットで残っています。





この後メチャクチャ晩飯食う二人

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― 新着の感想 ―
[一言] 何処だか非常に気になりますねw
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