83、それは月夜に誓って (2)
ユキが話しづらい事かぁ・・・私は少し考える。
流れからして、何をしたいのかは私もバカではないので分かってはいるつもりだけど。
そっか・・・
「どうしたの、ジェシカ。ニヤニヤして・・・」
「何でもないよ。こうして振り返ると嬉しさが込み上げてくるんだ。」
私の顔を見ながら、ユキも私が“ユキのやろうとしている事”を理解したのを悟り
・・・覚悟を決めた様だ。
「ジェシカ、君の希望には程遠いのは分かっている。でも、言わせてほしい。本当にストレートにしか言えないんだけど、僕と結婚してほしい。こんな僕だけど・・・!!」
ユキの言葉が嬉しくて、愛しくて・・・
私の手はユキの頬に触れていた。
「大事なのは・・・ユキの気持ちだから。」
だから決して自分を卑下する事はしなくていいんだよ。
言葉は繋がらないけど、通じている事を信じて・・・そこにユキが言葉を繋げる。
「ジェシカ、左手を出してほしい。」
ユキの言葉に私は左手の甲を上にして差し出した。いよいよなんだ。
長かった・・・
でも、それは私が望んでいた事をユキが知っていたから。
嬉しかった・・・
それが私の気持ちで、ユキは一緒に包み込んでくれる。
用意していた指輪を一つとって、私の左手の薬指にはめてくれた。
「良かった、ぴったりだ。」
「うん。」
指輪だから、合わない事もある訳で
丁度指に合って見立て通りだったことにユキは安堵して、私も同じ気持ちになる。
「じゃあ、今度は私の番・・・どうしよう・・・」
あらためて思うと、ウサギの場合はどこに指輪を付ければいいんだろう。
左前脚かな?それとも耳?私が首を傾げているとユキは笑う。
「どこでも大丈夫だよ。」
「じゃあ、左前脚で。」
ユキの左前脚を受け止めて、私はもう一つの指輪を・・・
「はまらないね。」
「ごめん、そっちは考えてなかった。」
左前脚にしても、耳にしても指輪が合わないのは当然で。
私はクスクスと笑う。
「ひどいなぁ、ジェシカ。僕はこれでも一生懸命で、ドキドキしていたんだよ。」
「うん。分かっているよ。だから、首にかけられるチェーンを一緒に買いに行こう。」
大きさが合わないなら、ユキに合わせればいいだけで。
ユキと買い物も出来て一石二鳥なのかな?
私の言葉に、ユキは目からウロコが落ちるような思いで私を見ていた。
「・・・そうか。うん、一緒に買いに行こう。」
「楽しみにしているね。」
私はユキを抱きかかえて幸せなこの気持ちをを伝える。
ユキに私の気持ちが伝わってくれたらいいな。
夜空には月がかかっていて、まるで私達を祝福してくれている様だった。
こうして、私の恋の話は一つの区切りに落ち着いた。
「私もこの世界に順応したのかな・・・」
私達は帰路につきながら、夜空を眺めてつぶやいた。
「ん?どうしたんだい、いきなりそんな事を言って。」
「うん。まぁ、ユキにとっては2番目のお嫁さんになるんだなぁって・・・!」
気が付くと、ユキが私を抱きしめていて・・・
「確かにソフィアの事はあるけど、今はジェシカを抱きしめるだけで精いっぱいだよ。」
「・・・ズルいなぁ、ユキは。」
私の言葉にユキは繋げる。
「えっと、どういう意味?」
「どういう意味も何も、私が欲しい言葉をちゃんと選んでくれるユキが好きって事。」
「ジェシカ・・・」
お互いの気持ちが触れ合うのが心地よくて・・・
「これは死んでも離したくないなぁ・・・私が添い遂げた後は、天国でソフィアさんと正妻戦争しちゃうのかな。」
「・・・出来れば仲良くしてほしいな。」
ユキは本気で心配してて、可愛いなぁ。
「冗談だよ。今はユキの言葉通り、ちゃんと私を抱きしめていてね。」
「もちろんだよ。」
ーーー
場面は変わり、魔王城の研究室・・・
かなり大きな部屋で、隅に机を置いて研究をしているみたいだった。
書類の山を読み漁り、考えては書類を見直したりと忙しくしていた。
そこに蝙蝠がモニカの元に飛んできて、モニカは何回か頷いていた。
「・・・そうか、シグマが倒されたか・・・うむ、ご苦労じゃった。」
蝙蝠は要件を伝え終わると、モニカの元から飛び立っていった。
「また、寂しくなるのぉ・・・ん?どうしたのじゃウィルよ。」
モニカが振り向くと、ウィルが何か聞きたそうな表情で立っていた。
「モニカさんは過去の映像を見る事が出来ると聞いたのですが、見てみたい所があって・・・」
ウィルが言いたいのは前にモニカがジェシカ達に見せた映像の魔法の事だろう。
その場にモニカがいなくても、映像として映し出す事が出来るあの魔法。
「構わぬよ。で、どこじゃ?」
「俺の故郷です。実は俺の故郷はモンスターの襲撃で滅んでしまって・・・」
「そうだったの。ジェシカがそんな話をしておったな・・・では、次はどのくらい前かのぅ?」
モニカはウィルの希望通りに映像の設定をしていく・・・
「モニカさんと出会う前位ですね。実はその時に里帰りをしていたんですが、村に墓があったんです。おそらく誰かが埋葬してくれたのだと。」
「ふむ、それが誰だったのかが気になるのじゃな。」
「はい。」
滅んだ村の映像が流れる・・・それから過去へ巻き戻していく。
ジェシカとウィルが対峙した時、そして・・・
「そんな・・・」
ウィルが驚くのも無理はなかった。
村人を埋葬していたのはケイン達、そしてジェシカだったのだから。
「ん?ジェシカはともかく、他の人も知り合いかの??」
「・・・ええ、かつての俺の仲間でした。」
「ほぅ、それは良い仲間をもったのぅ・・・ん?」
モニカは巻き戻していくうちにある所に気が付いた。
「ウィルよ、井戸に何かあるのか?さっきお主の仲間が出てきたのじゃが・・・」
「いえ、ただの井戸だった様な・・・あ、集会所がありましたっけ。」
「ほう、それは興味深いのぅ。」
「でも、王都の人が来ていたから調べられているかもしれませんね。」
ウィルの言葉にモニカは右手を顎に当てて考える・・・
「ふむ、もしかしたら王都に欲しい資料があるかもしれぬ・・・。」
ジェシカの恋の区切りと王都へ動き出すモニカ
そして、物語は終わりに向けて進み始める。
(続く)
最後まで見ていただきありがとうございます。
ユキのプロポーズとそれを受けるジェシカ。
そして、魔王城でのモニカとウィルの話。
話は王都へ移動します。
設定補足:モニカの映像魔法
場所と時間(過去限定)を指定して映し出す魔法で、使い方次第では王都を混乱に陥れる事が出来そう。
・・・なのだが、モニカは研究用にしか使う気はないらしい。




