表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
異世界でも恋愛は出来ますか?  作者: 香坂 悟
雪の章
75/309

75、月のウサギは寂しくても死ねない (1)

僕が死んでからどのくらい経つのだろうか・・・

死後、僕は神界で神の使いとして過ごしていた。


神界は時間の流れが把握しにくかったんだ。


神様のお使いで地上に来る事もあったけど、地上は相変わらずだった。

時には砂漠の国や王都で人助けをした事もあったっけ・・・


そんなある日、僕は神様と話す黒髪の女の子を見る。


ーーー


“これが朧月の塔の秘宝『月読の自鳴琴』になる。このアイテムの使用は人生で一度しか使えない、よく考えて使いなさい。”


月読の自鳴琴・・・クロエから聞いた話では「死者との会話」が出来るらしい。

オルゴールだからこのつまみを回して箱を開けばいいのかな?

テイムコネクトを解除して、ユキと向き合う。


「ユキ、ソフィアさんが伝えたい事があるんだって。」


その言葉を聞いたユキは私に呆れながら話す。


「・・・それって、制御輪が教えてくれたの?ジェシカの場合、リィナの事もあるし・・・ハハハ。」

「良く分かったね。正確には制御輪の仮想人格だけど。」

「はぁ・・・ジェシカ、君って本当に何者だい?」


ユキは溜息を出しながら頭を抱える。

ウサギが前脚で頭を抑えているシュールな姿に少しツボが入りながらも私はユキに答える。


「私は私だよ。」

「はいはい。とりあえず、ソフィアの話は聞くけど・・・でも、クロエさんはいいの?」


ユキの言葉にクロエは頷く。


「はい。私もソフィア・・・ご先祖様と話がしたかったので。」


呼び出したい人は決まった。

私達はオルゴールを使用する事にした。



夜空に綺麗だけど悲しいオルゴールの音色が響いていく・・・

そして、オルゴールから淡い光が出て金髪碧眼のエルフ族の女性が姿を現す。

その姿は王城跡地で見たクロエが変身していた時の姿。

静かにソフィアは目を開き、ユキの姿を見て両手で口を押える。


「ラピス・・・」

「・・・。」


ソフィアの声にユキは反応しない。


「そうですよね・・・」


彼女は俯きながら、今度はクロエの方を向く


「!!・・・あなたはもしかして・・・」

「初めまして、ソフィア様。私はクロエ・・・あなたの子孫になります。」

「そうですか・・・生きていてくれたのですね・・・良かった。」


クロエの言葉に安堵するソフィア。


「あの、ソフィアさんに質問があります。」


ソフィアは私の方を向くと首を傾げる。


「あなたは・・・その左手の中指に付けられているのは制御輪!!」

「ユキ・・・じゃなくてラピスと一緒に戦う為にお借りしました。」

「あなたがラピスのパートナーなのですね。ラピスは元気にやっていますか?」

「はい、あの・・・ソフィアさん。」


私は仮想人格から聞いていた事をソフィアに伝える。


「ゆ・・・ラピスに伝えたい事があるんですよね。」

「・・・仮想人格からですか?あの子があなたに同調するなんて・・・でも・・・」


ソフィアはユキの方を見て俯く。ユキはそっぽ向いていて話だけは聞く姿勢にしている。

あぁ、なるほど。


「ユキっ!」

「何?」

「『何?』じゃないでしょ。ちゃんとソフィアさんの話を聞かないとダメじゃない。」

「・・・だから、話は聞く・・・え、ちょっと・・・」


私をユキを抱え上げてソフィアの顔をちゃんと見れるようにする。


「話す時は相手の顔を見る。」

「・・・なんかライザさんに似てきたね。」

「それは親子だもん。で、何となくソフィアさんの言いたい事が分かった。」

「・・・そういう事?」


ユキにも思い当たる節があるみたいだった。

母がよくやっていた事だった・・・


「うーん、今更だと思うけどね。500年は経っているんだし。」

「そうかな?少なくとも今だからじゃない?」


ユキはソフィアに向き直る。


「・・・何で仲直りなの?」

「!!」


ソフィアはユキの言葉に驚いた。母がユキと喧嘩した時はお互いに向き合う様にしていたから。

もしかしたら、ユキが気を遣って母の前では話していないつもりでもバレていたのかもしれない。


「・・・だって、今でも私はラピスの事を愛しているから。」

「それはないだろう?じゃあ、何で僕がウサギになった時に拒絶したのさ。」


お、ユキがその話から切り出した。

ソフィアはどう答えるのだろうか?


「信じたくなかったの。目の前で身近な人がウサギになるなんてありえないじゃない。じゃあ、ラピスはいきなり私がウサギになっても愛してくれた?」


・・・それはそうだね。

ふむふむ、これは興味深い返しだなぁ。


隣ではクロエがポカンとしていた。

そりゃあ、こんな塔の頂上で夫婦喧嘩見せられてもね。


「その時にならないと分かるもんか。でも、こんな僕でも好きだと言ってくれる子が・・・!!」


ユキは途中で言葉が途切れた。


「そんな子いるわけないじゃない。連れて来なさいよっ!」


ソフィアもそんなユキの対応に怒って反応する。

確かに中途半端な対応は良くないね・・・ん?


ユキが私を見つめている??


「言い返せないじゃない・・・ん?・・・え?もしかしてその子が??」


ユキの視線が私に向いていた事に気付いたソフィアは私に聞いてくる。


「あなた、ウサギのラピスが好きなの?」


あえて人に聞かれると恥ずかしさが込み上げてくる。

でも、事実なので・・・


「うん、私は今のユキが好きなんだ。だけど、私は元々ウサギのユキと出会っているからでいきなりウサギになる所を見たら驚くと思うんだ。」

「ジェシカ・・・」

「だから・・・ソフィアさんをそこまで責めたらダメだよ、ユキ。それに、ソフィアさんは亡くなる以前から謝ろうとしていたんじゃないかな。」

「どういう事?」


私には思い当たる事があった、それをユキに話そう・・・


(続く)

最後まで見ていただきありがとうございます。

朧月の塔の秘宝「月読の自鳴琴」の効果で現れたソフィア

そして・・・塔の上の夫婦喧嘩が幕を開ける。


設定補足:月読の自鳴琴

死者との会話が出来ると言われている幻のオルゴール。

人生で一度しか使えないというのは、オルゴールに効果を発動させるだけの魔力がたまるのに数百年はかかる為である。

あと、このアイテムは塔からの持ち出しは出来なくなっている。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ