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異世界でも恋愛は出来ますか?  作者: 香坂 悟
雪の章
73/309

73、その迷宮は朧月に照らされて (3)

彼女は自国の平和を願い、また他国の平和も願っていた。

でも、周辺の国はそんな彼女の願いを踏みにじる・・・


魔王がエルフ族と知るといなや、彼女にその責任を押し付けた。


僕は一人剣を取る・・・頼れる仲間もなく・・・

ただ僕は彼女の剣となる。


それで良いんだ・・・それで・・・


ーーー


“久方ぶりだな、ラピスよ。”


念話なのだろうか、私の頭の中に声が響いてくる。

おそらく、私だけではなくユキやクロエも同じ状況だと思う。


「お久しぶりです、雷龍王。でも、貴方は神界にいるはずなのでは?」


“この体は分身体だよ。神に頼まれてそこのお嬢ちゃんに伝言をな。”


雷龍王の瞳は私を見つめる。


「え、私??」


右手の人差し指で自分を指して頭に疑問符を浮かべていると、雷龍王は話を続ける。


“お嬢ちゃんはやり過ぎだ。確かにここの秘宝を以ってすれば願いは叶うだろう。しかし、ここまでこれたのは勇者の力があってこその事で、このダンジョンの意味からしてそれはフェアではない。との事だ。”


「それは私だけの願いでなくてもですか?」


“・・・事情は理解している。そこで神は条件を2つ出した。1つはどういった形でも構わないのでラピスの了承を得る事。もう1つが私の分身体を倒す事。条件はどちらから満たしても構わないそうだ。”


「分かりました・・・雷龍王、お手合わせお願いできますか。」


“了解した。この身は分身体ゆえに本体には影響はない、遠慮なく来るが良い。”


私はレイピアを抜き、構える。


「ジェシカはどうして僕に聞いてくれないのさっ!!」


ユキはこの戦いには反対みたいで、構える私に声を上げる。

500年の重み・・・今の私にはユキに伝えられなくて・・・ごめん。


「・・・シノブ、全力で行くよ。」

「(分かった。)」

「ジェシカっ!!」


私はユキの声を振り切り、雷龍王に向けて駆ける。

ジャンプして、空気を蹴る事で空中でもある程度は自由に動ける。


“紫電”

「ブラストショットっ!」


紫色の雷を風の刃で弾く。

雷と風の力のぶつかり合いは夜空に彩を添える・・・


「まだっ!」


衝撃波に飛ばされても、そこから空気を蹴り横に入る。


「クロススライサーっ!」


レイピアで十字に切り真空波を飛ばす。

真空波は鱗に当たるが、傷1つ付かない。


「硬いか・・・」

“瞬間放電”


雷龍王は周囲に一瞬だけ雷の結界を張る。


「スタンフィールドみたいな攻撃を・・・でも、まだいけるっ!!」



ユキとクロエは私の戦いを見ていた。

私の戦う理由について疑問を持つユキ・・・それは言葉になる。


「ジェシカ・・・どうして・・・」

「ラピス様。なぜジェシカさんが理由を話さないのか分かりませんか?」

「分からないよ・・・。」


俯くユキにクロエは語る。


「私がラピス様に子孫である事を伝えた時の事を覚えていますか?その時、ラピス様は“否定”しました。身内ですら心に傷が入るものです。ジェシカさんは・・・長年いたパートナーから否定されるのってどんな気持ちでしょうね。」

「それは・・・」

「否定しないと言いきれますか?」

「・・・。」


クロエの言葉にユキは言葉が出なかった。

私の目的はクロエに話しているから、それはユキが否定するものだという事は理解している。



雷の結界・・・それを崩すには・・・


「トルネードっ!!」

“瞬間放電”


雷龍王の周囲に起こした風の壁を雷の結界で弾き飛ばすが・・・

そこに私の姿はない。


トルネードは囮で・・・雷龍王の頭上で一度結界に飛ばされる。


「シューティングスター派生、メテオザッパーっ!!」


雷龍王の頭上を捉え、空気を蹴って方向転換をする。

そこから真下に向けシューティングスターを放つ・・・


放たれた技は重力と風の力で加速されて、更に加速強化を重ねた一撃を与える。


雷龍王は頭部から塔に叩きつけられる。


「これなら・・・」


しかし、私の予想とは裏腹にゆっくりと体を起こす雷龍王。


“やるではないか、勇者よ。蒼雷。”


頭上から蒼い雷が私に向けて落ちる。

轟音を上げて私は飛ばされる。


なんとか立ち上がるが・・・シノブは少し離れた所で気絶している。

テイムコネクトが解除されるほど強力な一撃だった様だ。


「気絶しているみたいだけど、問題はないみたいだね。継続して戦闘するのは無理そうだけど。ごめんね、シノブ・・・。」


“まだやるか?勝負はついていると思うが。”


雷龍王は勝負の続投を確認する。

正直、目立った怪我はないけど続けるのはきつい・・・だけど、私にはやらないとダメなんだ。


「まだ・・・やるんだ・・・。」

「ジェシカっ!もうやめるんだっ!!」


嫌だ。ここで諦めたら・・・


「だって、このままじゃユキが救われないから・・・」


しまった・・・少し口が滑った・・・


「え・・・どういう事?」


私の言葉にユキは少し考える。

ユキに対してやろうとしている事、クロエに協力している事、自分が認めようとしない事・・・

首を横に振ったユキは声を上げる。


「そうだ。僕のパートナーはバカだけど、大事な人なんだ。」

「バカは余計だよ。でも、大事だって言ってくれるんだね。」

「雷龍王。ここからは僕も戦いに加わるよ。」


“そうか。条件は満たしたといって良いのか?”


条件というのはラピスの了承の事を指すのだろう。

雷龍王の言葉にユキは答える。


「構わない。僕はジェシカを信じるよ。」


“良い表情になったな。全力で来るがいい。”


彼もユキの事を心配していたのかな?何か声が穏やかだ。

これが終わってからでもユキにゆっくりと話を聞いてみるのも良いかもね。


「ユキ、行こう・・・」

「うん。」

「テイムコネクトっ!!」


ここからまた始まるんだ・・・


(続く)

最後まで見ていただきありがとうございます。

雷龍王が塔の最上階にいたのは神の命令でジェシカに試練を与える為だった。

ジェシカと雷龍王の激突の中、ユキは大事なものを悟ります。


設定補足:龍王

属性の頂点に立つ存在とされている。

但し、全ての龍王は世界への影響を考えて神界にその身を置いており、今回みたいな特例が無い限りはこの世界で見る事はない。

属性の数だけ龍王は存在し、神界では新たな龍王が生まれているとか・・・世界は未完成である。

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