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異世界でも恋愛は出来ますか?  作者: 香坂 悟
雪の章
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7、星の光はあの時の輝き

「ただいま、ユキ。」

「おかえり、ジェシカ。」


街に戻ったジェシカはすぐ自分の部屋に戻った。

帰って来たなぁ・・・


!!


服が散らかっている・・・

そういえば、準備した時のままだった。


「あ、ユキ・・・ちょっとごめん。」

「え。」


私はユキを抱えて部屋の入り口に置いてから、そそくさと部屋を片付ける。

あらためて意識すると、私ってユキに結構恥ずかしい所を見せているなぁ・・・


顔が赤くなっているのが分かる。



「ジェシカ?大丈夫?」


ドアをノックするユキに、私はハッとして


「ごめん。お待たせ・・・」

「えと・・・うん。」


ユキをベッドの上にのせた。

今までは特に気にせずベッドにのせてきたけど

意識すると・・・急に恥ずかしくなってきた。

・・・今度ユキ用にベッドを用意しよう。



その前にユキに聞いておきたい事があった。


「あの時の説明いいかな?」

「そういえば・・・まだだったね。」


あのレイピアを地面に刺した後

酩酊状態が消えて、ジンに攻撃が見切られなくなった。

どうしてそうなったのか・・・私はユキから話を聞く事にした。


「あの剣にあった風の加護を発動させる事で、ジェシカの状態異常をすべて解除したんだよ。もちろん、ジンの鑑定も含めてね。それが“青の勇者”の武器、断絶の聖剣ウルトラマリンの特殊能力なんだ。」


青の勇者の武器?ウルトラマリン?


「この世界には魔王に対抗して赤、白、黒そして青の勇者がいるんだ。」

「勇者ってジン達の事じゃないの?」


明らかに3人とも転移者だし。


「おそらくジンは勇者召喚されて、アオイとアキラは巻き込まれたんじゃないかな。勇者召喚されると職業が勇者固定なんだ。」

「ふーん。」

「ジェシカ、凄い他人事だけど・・・君が青の勇者だよ。」


私が?勇者??いやいや・・・


「私が勇者だなんて・・・私は単なる転生者だし。」


慌てる私にユキは落ち着いて語った。


「間違いないよ。勇者武器が所有者を決めるし、ウルトラマリンはかつて僕が青の勇者ラピスだった頃に使っていた武器だからね。」

「え、勇者だったの?それに名前もラピス・・・あっ」


あの剣を持った時にでた言葉・・・

私が勇者という事より、ユキが勇者だった事に驚いた。


「まぁ、昔の話だよ。名前についてもユキで構わないよ。結構気に入っているんだ。」

「そうなんだ。」


「・・・勇者としてこの世界に召喚された僕は聖剣に選ばれて、一人で世界の平和を求めて戦っていた。」


あっさりと語られるユキの過去・・・本当にあっさり過ぎる。


「あれ?なんで今はウサギなの??」


当然、この疑問に行きつく。

流石にウサギが剣を持って魔王と戦うシュールな絵面はないだろうから。


「それは、魔王を倒した後・・・話さないとダメかな?」


話しづらそうなユキ。

何となくだけど・・・


「話してくれないかな。」


・・・私は聞かないといけない気がした。



ユキは少し上を向いてため息を出した。

そして、ゆっくりと語る。


「僕はある国の姫様に恋をしていたんだ。その当時の世界は女性が中心の重婚やハーレムが常識で、僕は彼女に気に入られたいと必死だった。僕は魔王を討伐したら一緒になって欲しいとプロポーズした・・・。」


また、お約束な○亡フラグを・・・

と思いながら、私は続きを聞く。


「そして、魔王を倒したんだ。国に戻っ・・・」


ちょっと、ちょっと、ちょっと・・・


「え、魔王と刺し違えたとかそんな話じゃないの?」

「えっと、何の話?続けるけどいい?」


ツッコミのあまりユキの話を遮断してしまった・・・反省。


「うん。」

「国に戻った僕は元の世界には帰らず、約束通り彼女と結婚できたんだ。その後、各国で戦争が起きた・・・皮肉だよね。魔王という共通の敵がいなくなった事で各国で溜まっていたものが噴出したのだろうね。僕がいた国も戦争に加わり・・・勇者の力を戦争に使ってしまった。それが神様の怒りに触れて、勇者の力は封印されて只のウサギになってしまったんだ。」


そんな事が・・・


「彼女はウサギになった僕を見て『化け物』と呼び、僕を拒絶した。結局、彼女にとっては僕はラピスという一人の男ではなく、勇者という力でしか見ていなかった。そして、僕は絶望して自ら命を絶った。死んだだけではその罪は清算される事は当然ないわけで、死後は神様に仕える事になったんだ・・・で、君はどうして泣いているんだい?」


私は泣かずにはいられなかった。

それが同情だったとしても・・・


「ジェシカ?」

「・・・つらい話をさせてごめん・・・。」


私はユキを抱きしめる。


「いいんだよ。僕はこの姿になって良い事もあったんだから。」

「良い事?」


「君と出会えた事だよ。」


ユキの言葉が・・・ポンッと私の中で弾ける。

急にそんな事を言うのはずるい・・・


意識しだしてから、好きな気持ちが止まらない。


今はこの時間を大切にしたい・・・ユキ・・・


「どうしたの?」

「ううん。ユキ、ご飯にしよう。」


青の勇者とかいろいろ分からない事も増えて

これから色々あるだろうけど、まずは私のやれる事をやろう。


(続く)

最後まで見ていただきありがとうございます。

今回はジェシカが拾ったあのレイピアとユキの過去の話ですね。


ラピス、青、ウルトラマリンは、ある石に由来した名前になります。

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