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異世界でも恋愛は出来ますか?  作者: 香坂 悟
雪の章
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6、それは青天の霹靂の様に (3)

私達は無事に村へ着いた。

報酬の話は一旦後にして、部屋に戻る。

部屋に戻るなり・・・ベッドにダイブする。


クッションの効いたマットにふんわりと私の体がキャッチされる。

そして、仕事中に言えなかった事を一言。


「ユキ~疲れたよ~。」

「お疲れ様、今日は頑張ったね。」


うつ伏せになった私の頭をユキが優しく撫でる。

仕事中は「疲れた」は言わない様にしている。

言った所で仕事がなくなるわけではないし、仕事仲間のモチベーションを下げてしまうからだ。


「うん、頑張った。明日には街に帰れるね。あと、ギルドにもお土産買わないとね。」

「ジェシカってそういうところは細かいね。普段は大雑把なのに。」

「それは・・・ギルドに干されたらご飯ないし。」


私の答えにユキは笑っていた。


あとは・・・ジンへの返事をしなければいけない。

さて、どうしようか。



村は活気に溢れていて、今日も宴をやるようだ。


「ジェシカは行かないの?」

「うん、今日はユキとゴロゴロする。」


ベッドで寝転んで、ユキを持ち上げる。

うーん癒されるなぁ・・・


ユキとゴロゴロしてた所にドアがノックされる。

私が出るとジンが来ていた。


「よぉ、宴に来てなかったから呼びに来た。明日には帰るんだろ?酒は無しだからさ・・・」

「えっと、ユキも行こう?」

「うん。」


私はユキを連れて、酒場に。

明日には帰る話をして、一緒にご飯を食べる。


「なぁ、ジェシカ・・・俺が言った事を覚えているか?」

「その件はごめんなさい。」


私は考えてみたものの、私にはジンと一緒に行くという選択肢は選べなかった。


「そうか・・・残念だな。」


ジンの落ち込む表情が心に残る


「また一緒にお仕事が出来ると良いですね。」


私はジン達と握手をする。



次の日、早めに支度をして村を出ようとすると


「待ってくれっ!!」


ジンに声をかけられた。


「ジェシカっ!俺はお前が欲しい!!」

「・・・それは本気で言ってますか?」


まさかジンからそんな言葉が出るとは思わなかった・・・


「あぁ、だから全力のお前に俺が勝ったら俺の物になってくれっ!」

「覚悟はあるという事ですね・・・」


ここまで地雷を踏み抜く人とは思わなかった・・・


「ジェシカ、何かおかしい。」


ユキのいう事ももっともだけど、今の私は怒りの限界を突破していた。


「テイムコネクト。私が勝ったら二度と話しかけないで下さい。」



レイピアを抜き、一気に間合いを詰める


「!!」


私の突きが剣で軽くいなされる・・・


「まだっ!!」


そこから加速強化した突きを3連続で放つがそれもいなされる・・・


「(見切られている)」

「まさかっ・・・鑑定!?」


そうだ・・・昨日握手した時に・・・


「冷静さを欠かせる為に挑発したんだが・・・もう気付いたか。たまたまだったが、有効利用させてもらった。」

「敵にはしたくない人ですね。」

「褒め言葉として取っておくよ。」


剣戟の応酬が続く・・・

私に決め手がなく、ジンにも決め手がなくジリ貧と思われた。


「やっぱり、厄介だなお前の能力。」


ジンはそう言うと、隠し持っていた物を上に投げる。

・・・それは小瓶だった。


そして、剣で小瓶を叩き割る。


パリンっと音が鳴るが何が起きたのか分からなかった。

威嚇にすらならないその不可解な行動・・・私がその意図に気が付いた時には遅かった。


再び繰り返す剣戟の応酬に急な異変が訪れる。


「!?」


急に視界がぐらつく・・・これは・・・酒気!?

私は酩酊状態になり、体に力が入らない。


「安心していい、これは単なる酒だ。初めて酒場で会った時、お前はウサギを庇っていただろう?感覚が強化されるお前たちには有効だと思って用意しておいたんだ。おっと、卑怯とは言うなよ?お前を俺のものにしたいのは本気だからな。」


油断していた、そこまで観察されていたなんて。

やっぱり敵にはしたくない人だ。


ここから私は劣勢に陥る。

ジンの剣を捌くのに手一杯でどんどん押されていく・・・


ジンがいない事に気づいてか、アオイとアキラも来ていた。


「アオイとアキラは手出し無用だ。これは俺とジェシカの一対一の戦いだからな。」


二人には手を出さない様に声をかけ


「ジェシカ、俺の物になれっ!!」


ジンは大声で私に叫んだ。


ジンの言葉に私は首を横に振る。

これはもう意地でしかなかった。


本当は・・・これ以上は厳しい。



負ける・・・


そしたら私はジンの物になるの?


いやだよ・・・


助けて・・・



“ユキ”



追い詰められて気付く・・・


私の本当の気持ちに・・・


こんな時に気づくなんて・・・


涙が止まらない・・・

すぐには無理でもこの気持ちを伝える事が出来なくなるなんて私には耐えられない。


そこにユキの声が聞こえた。


「(・・・ジェシカ・・・昨日の剣を地面に刺すんだ・・・)」


どういう事なのだろう


「(説明は後でするから・・・)」


私はユキの言葉を信じ、あのレイピアを逆手で鞘から抜き、地面に刺した・・・


ーーー


「・・・!!」


ジンが目を覚ますと、仰向けで倒れていた。

空はすっかり明るくなっていて何が起こったのか分からなかった。

そして、ジェシカの姿はない。帰ったのだろう。


「ジン、あんた負けたのよ。」

「何も見えなくなった・・・あの瞬間から俺の“鑑定の効果が消えた。”・・・」


アキラの声を聞いて、ジンは負けた原因を理解する。


「ジン君、女の子を泣かしたらダメだよ。それとジェシカさんから『今回は偶然拾った武器に助けられたので引き分けです。あなたの物にはなりませんが、仕事としてならこれからも協力はします。』だって。」

「・・・ったく、ますます俺の物にしたくなるじゃないか。」

「もう、好きになった女の子をいじめるとか・・・小学生じゃないんだから、嫌われても知らないよ。」


アオイはジンを窘めた。


(続く)

最後まで見ていただきありがとうございます。

前置きが長かった・・・ここからが始まりです。


次回はあの剣の話です。



ジンについて

悪い奴・・・ではなく強かな奴です。

転移後に色々あって抜け目なくなったという経緯があります。

腐っていないのはアオイとアキラの支えあっての事ですね。

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