表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
異世界でも恋愛は出来ますか?  作者: 香坂 悟
雪の章
56/309

56、神罰に釣り合う罪は決して無い (1)

空は灰色の雲に覆われて、所々で雨が降る。

私は怒っていた。時間は与えたのに、彼女と向き合うどころか逃げる事を選んだ事に・・・


「これがあれば、俺は神になれる・・・アハハ、アハハハ・・・」


ウィルは興奮していた。

草原には所々に雷で焦げた箇所があり、その原因は彼によるものだった。


「ウィル、私は・・・」

「ジェシカさん、あなたも俺と一緒に来ないか?今の俺は勇者のあなたですら守れる力を手に入れた。」


ウィルは私に手を伸ばすが、その手を受け取る事はなかった。


「立ち会っている場合じゃないな。ジェシカ、俺たちも手伝うぞ!」

「・・・ジン達は手を出さないで、これは私の不始末だから。」


止めにかかるジン達に私は声をかけて加勢を断った。


「いいんですか?今のあなたに俺を止められるとでも?まぁ、あなたを力ずくで俺の物にするのも悪くはない。」

「ライラさん・・・これはあなたも選んだ事なんですね。」


私はウィルを少し離れた位置で見守っているライラに声をかけた。


「それは・・・私はウィル様を信じます。」

「そっか・・・。」


私とウィル達の間には決して歩み寄る事の出来ない距離が生まれていた・・・

風の力は戻って来たけど、あの雷の力にどう立ち向かうのか。


「私はどうすれば・・・」


この時、少しだけ泣き言が漏れた。



数分前

ジン達の立ち会いのもと、私はウィル達と向き合った。

空は雲がうっすらと出てはいたが、晴れていた。


広い草原の中、まるで果たし合いの様な雰囲気を感じながら

私はウィルにライラと別れる確認をすると、彼の返事は「嫌だ。」の一言だった。


「ウィル、本気・・・なんだね。」

「ジェシカさん、俺はあなたを越えて見せますよ。」


余裕を見せるウィルに警戒はしつつ、躊躇はしない事にする。


「ユキ、手加減無しだよ。テイムコネクト!」

「まずはこれからいきますか。」


ウィルはレイピアを構えた。

私の技を使うつもりなのだろうか?

でも、起点に風属性魔法を使用しても・・・技の再現にはならない。

基本的に『加速強化』を絡めての技だから。


「ブラスト!」


ウィルは突風を飛ばすが、その手は通じない。

レイピアで突風を払い、私の切りかかるタイミングでウィルは技を合わせてきた。


「ブラストショット!!」


風属性の遠距離刺突でウィルは距離を取っている様に見えなくもない。

しかし、この程度で何とかなると本気で思っているのだろうか?


「俺・・・色々と勘違いをしていました。」


ウィルが急にそんな事を言いだした。


「どういう事?」

「俺は守るべきものの為に、捨てきれなかった。プライドや教えすら・・・」

「何の事??」

「分かりますよ、いずれ。シューティングスター!!」


もちろん、この技も『加速強化』ありきの技なので理解していれば捌けないわけではなく

風の爆発力を利用した強力な突きも受け流していく。

なんとなく・・・だけど、ウィルのエレメントテイマーの仕組みが分かってきた気がした。


「ウィル、終わりにしない?私の技の劣化コピーに過ぎない『この程度』で本当にライラさんを守れると思っているの?」

「えぇ、俺が勘違いしていたのはあなたの勇者の力は風の属性魔力ではなく・・・」


ウィルは私に接近して右手に赤い魔力の波動を溜めていた。


ーーー


話は更に遡る・・・

ウィルが街の宿屋でサレンと話していた頃。


「あのプラチナストリングスが仲間になる前からあの人は『勇者認定』されていた!?それは本当なのか、サレン。」

「はい。信用できるところからの情報です。」

「じゃあ、梟ではなくウサギの方だったのか・・・。」


その事実に驚いていたウィルにサレンは耳打ちする。


「そこでなんですけど、今の旦那様の風の力をもってしてもジェシカさんには敵わない所を利用して、ウサギと合体した状態のジェシカさんを旦那様が再度テイムするのです。確実にジェシカさんはウサギと合体するでしょうから。抵抗するフリをして油断を誘ってください。」


ーーー


「そして、これがその時!!ジェシカさん、あなたの雷の力をいただきます!『主従契約』っ!!」

「えっ・・・でも雷の精霊なんて・・・」


そう、私は油断していた・・・


「だから、捨てるんですよ・・・精霊信仰の教えすら。出てこい、雷の力!!」


ウィルは精霊信仰の村出身だから使役できるとしても基本六属性だけだろうと・・・


空に出てきた雷の力は・・・


「これは・・・」


その姿は前世で見たギリシャ神話の神ポセイドンに似ている・・・何故その姿が出てきたのかはよくわからない。

雷の力が吸収される中で何かが戻ってくる感じがする。


「風が・・・戻った?」


属性魔力とはいえ、主従契約は一体が限度らしい・・・


雷の力を得たウィルはレイピアを鞘に納めると両手を上げた。


「(ジェシカ、横に避けて!)」

「えっ・・・。」

「サンダーストーム!」


空は灰色の雲が覆い、そこから私に向けて無数の雷が襲う。

避けられなくはないが初めて見る魔法・・・



雷を全て回避して、今に至る・・・


「(あれは僕の魔法だ・・・)」


ユキの言葉が何故か暗い。


「ユキ、どうしたの?何か暗いよ。」

「(すまない。)」

「どうしてユキが謝るの?」

「(僕はウサギになってからは雷の力は使っていないんだ。)」


(続く)

最後まで見ていただきありがとうございます。

「テイマー」編の最後の話になります。

ウィルはライラを守る為に、精霊信仰の教えを捨て去り

ジェシカ達から雷属性の力を奪う事に成功します。

そして、雷属性の魔法を使っていなかったユキの真意は・・・

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ