5、それは青天の霹靂の様に (2)
「俺がお前の居場所になってやる。だから一緒に来ないか。」
言われてすぐに「考えさせて欲しい。」と答えてしまったけど
・・・私はジンの言葉に胸の高鳴りを感じていた。
朝
宿屋の前に集まる。
「お待たせしました。」
遅刻ではなかったのだが、既に3人集まっていた。
「お、ジェシカ。一緒にいたウサギも調子良さそうだな。」
「うん。ユキ、挨拶お願い。」
私の言葉にユキは私の肩の上から挨拶をする。
「はじめまして、ユキです。よろしくお願いします。」
「え、このウサギさん喋るんだ。よろしくね。」
「ウサギさん、よろしく。」
アオイとアキラも軽く挨拶をした。
北の古代遺跡に向けて出発する。
馬車で揺られて30分ほどの距離にその古代遺跡はあった。
深い森に囲まれた石造りの建物。
異質な雰囲気に呑み込まれそうになる。
「この遺跡にはある勇者が使った武器が眠っているらしい。ジェシカ、今日は頼んだぞ。」
私はジンに頷きテイムコネクトを発動させる。
「ほう、ウサギと合体するのか。」
「あ、かわいい。いいな~。」
「・・・ずるい。」
と三者三様の対応をされた。
ジンを先頭に、私は殿で後方支援にはいる。
耳に意識を集中させると、風の流れる音などの情報が入ってくる。
「ジン、そこから3メートル先に落とし穴、5メートル先に宝箱のある部屋があるよ。」
「分かった。」
慎重に進んでいき、まず宝箱箱のある部屋についた。
宝箱が3つあり・・・
「それ、右以外は罠だね。」
罠の種類までは分からないけど、宝箱に仕掛けがされているのは分かる。
「モンスターが近いね。ゴブリンが2匹、はぐれみたいだけどみんな気を付けて。」
聴覚で感知した情報を仲間に共有する。
戦闘も万全の状態で臨めるので、誰も怪我等はなかった。
「凄いなぁ、他のスカウトよりも正確で頼もしい限りだ。」
「ありがとうございます。」
ジンの褒め言葉を素直に受けとる自分がいる。
今まではこんな機会はなかったので、新鮮だった。
私はこの世界での恋愛を考えていても叶わなかった・・・
それは自分とは明らかな価値観の違いがあるわけで
異世界人なら同じ異世界人が良いという事なのだろうか。
「(ジェシカ。考え事は良いけど、油断はしないでね。)」
分かっているよ、ユキ・・・
遺跡の奥を進む。
途中から水の流れる音が聞こえてくる。
先に進むと、広い場所に出る。
そこには人工的に作られた泉にレイピアが安置されていた。
「泉には入れないな。ジェシカ、どうなっているのか分かるか?」
ジンが言うには、泉に見えない壁がある様な感覚があるらしい。
「ううん、仕掛けは無いんだけど・・・!!」
私は何かに呼ばれた気がして、泉に向かって歩いていた。
何かの力の影響かは分からないけど、泉の上を歩いて・・・
気がつけば、レイピアの前に立っていた。
私は手を伸ばし、レイピアを持った。
刀身に映る泉の色は海の青さを思わせ・・・
頭に浮かんだ言葉をつぶやく・・・
「ラピス・・・」
「(!!)」
私のつぶやきに何故かユキが反応する。
「どうしたの?」
「(いや、何でもない。)」
泉から戻ると、ジンが心配そうに声をかけてきた。
「大丈夫か、ジェシカっ!」
「はい。あ、このレイピアを・・・」
私はレイピアをジンに渡そうとすると、不思議な力に弾かれる。
何度やっても、アオイやアキラに渡そうとしても同じ事が起こる。
「・・・どうやら、ジェシカしか持てないようだな。」
「そうみたいですね。」
レイピアを鞘に納めて先を進める。
遺跡探索も進み、残るは最奥部分。
遺跡の最奥には剣が安置されていた。
「アレが目的の宝だな。よし・・・」
「・・・待ってジン!」
不用意に剣に近づいたジン。
私は何か不穏な気配を感じて、ジンを止める。
剣から闇が放出されたかと思うと、闇が蛇の形をとる。
「ボスか、冒険っぽくていいじゃないか。ジェシカが有能で探索に肩透かしくらっていたから丁度いい。こいつは俺たちが狩る。まぁ、ジェシカは他にモンスターが来ないか警戒していてくれ。」
「うん。」
私はジンの言う通りに周囲を警戒する。
戦闘をじっくり見る機会は無かったのでジンの実力が見れるチャンスかもしれない。
蛇はジンに向かって口を開け襲い掛かる。
「あらよっと。」
蛇の牙を軽く剣で受けて、攻撃を流す。
まるで敵の攻撃を見切っている様だった。
攻撃を流された蛇は勢いよく壁にぶつかり、体勢を整える。
「アオイは俺に攻撃補助魔法を、アキラはあの蛇に氷結魔法を頼む。」
アオイの攻撃補助魔法でジンの持つ剣にオーラが付与され、アキラの氷結魔法で蛇の動きが若干鈍くなる。
「(あの氷結魔法、空間に影響を与えるみたいだね。)」
「うん。」
的確なジンの指示、数多くの戦闘をこなしているのは間違いない。
「オラッ!!」
ジンの一撃は動きが緩慢になった蛇の頭を分断した。
蛇の体は闇になって霧散していく・・・
「どうだ?俺たちだってやる時はやるんだぜ。」
ガッツポーズするジンとハイタッチするアオイとアキラ。
いいな・・・こういうの。
私は自分の戦闘では感じない仲間との連携感に羨ましさを覚えた。
最奥に安置されていた剣をジンは・・・
「鑑定。なるほど・・・これは良い物だな、使わせてもらおう。」
武器を鑑定し、性能を確認してから武器を回収する。
もしかして、さっきの戦闘で蛇を圧倒していたのはこの能力かな?
「ジン。」
「ん、なんだ?」
「その鑑定能力でこのレイピア鑑定できないかな?」
私はさっき回収したレイピアの鑑定を考えたが、ジンは言いにくそうに答えた。
「・・・あぁ、それは無理だな。俺の鑑定はあくまで俺が触る事の出来る武器や生物に対してしか発動できないんだ。」
「そっか。」
出来ないものは仕方ないね。私は楽観的に考える事にした。
「さぁ、村に帰ろう。」
ジンの一声で私たちは村に戻る。
「なぁ、ジェシカ。」
「どうしたのジン?」
帰り際、私はジンと話をした。
「そういえば、お前のテイムコネクトだっけ?それって最強だよな。」
「そんな事ないよ。」
私はさらりと答えた。
「発動制限は特にないみたいだけど、ユキの状態が私にも影響するから。」
「そうなのか。」
その時は後であんな事になるとは、私自身考えが及ばなかった・・・
(続く)
最後まで見ていただきありがとうございます。
今回は中編、次が後編で初めての勇者パーティーとの話は終わります。
前振りしているので、その辺が次回の話の中心になります。
そういえばジェシカの服装について特に言及無かったので・・・
頭:ベレー帽
胴:ギルド支給制服(セーラー:半袖)
腕:レザー手袋
腰:ギルド支給制服 (ミニスカート)
脚:スキニー+安全ブーツ
あるゲーム風に表現するとこんな感じです。
一応ギルド支給品で一式あるのですが、「かわいくない」の一言からジェシカのオリジナルコーデになってます。
テイムコネクト時はベレー帽にウサ耳、ミニスカート部分にウサギの尻尾が付きますが、手袋とブーツ部分にもモフモフが追加されます。