32、真相は突風の様に (2)
ナルには「考えさせてほしい。」と話して、一旦屋敷に戻った。
屋敷では魂が抜けて真っ白なジンと、沢山の動物に囲まれてお話をしている満足そうなレイが対比して面白い事になっていた。
それよりも・・・ちょっと誰かに相談したい。
でも、誰に相談しようか・・・
部屋に戻って目の前のユキに話す。
「ユキ、ちゃんと話は聞くべきだよね。」
「・・・まずは説明しようか、ジェシカ。」
私はナルから聞いた話をユキに話した。
ユキは少し呆れながらも、ちゃんと聞いてくれていた・・・
「・・・なるほど。うん、ジェシカはジェームスさんの話を聞くべきだろうね。アルマさんがジェームスさんやナルさんに話を通していたのは間違いないと思うんだけど、それが家を継いてほしいという理由に繋がっていない。後はこの間はきちんと話が出来ていないから・・・ん?どうしたの?」
「分かってはいるんだけど、お父さんがお母さんを愛してい無かった様にしか見えないのが辛い。」
私の言葉にユキは反論する。
「それはどうだろうか。」
「どういう事?」
「ジェシカ。君から見てジェームスさんがライザさんを愛していない様に見えるのかもしれないけど、ナルさんの話だと僕にはジェームスさんはライザさんや君を愛している様に見えるんだ。それに、ライザさんが君にジェームスさんの話をしている時の事を思い出してほしい。」
母が父の話をする時・・・
昔なら思い出すのも嫌だったけど、今なら思う。
「・・・お母さんはお父さんを愛していた。」
「そこはちゃんと分かっているね。つまり、ジェームスさんとライザさんが愛し合っていたかを君の物差しで見ていたから感情的になったんだよ。これでちゃんと話は出来るんじゃないかな。」
「ありがとう、ユキ。」
ユキに相談して良かった。
私はナルに「お父さんと話がしたい。」と伝えると、すごくうれしそうな表情をして「お任せください。」と息をまいていた。
あらためて、父の屋敷に来る・・・
あの時はナルを見て驚いていたっけ。
少し息を落ち着かせて、呼び鈴を鳴らした。
ナルから改めて応接室に案内されて父と対峙する。
「・・・ジェシカ・・・。」
「すまなかった。」
「ごめんなさい。」
・・・え。
私と父は同時に謝っていて、少しの間沈黙が走る。
「・・・ジェシカ、私から話をさせてもらってもいいだろうか?」
父の言葉に私は黙って頷いた。
その様子を見た父は私に話をする。
「ありがとう。アルマからジェシカが生きていたという事が聞けたのはとても嬉しかった。家を継いでほしいという気持ちもあったけど、娘が生きていてくれたんだ。それだけで十分だった。」
「お父さん・・・。」
「そして、不安でもあった・・・また私は娘を失ってしまうのではないかと。」
どういう事なのだろうか?とは思ったけど、話を聞く事にする。
「貴族は直系の男子が家を継ぐ・・・というのは知っていると思う。」
私は黙って頷く。
ポールという継承予定者はいた訳で・・・
「しかし、ポールにはクローク家に代々継承されるべき力は受け継がれていなかった。」
「・・・継承されるべき力?」
「あぁ、スピードという自身を加速させる魔法だ。」
あの魔法はそういった経緯で覚えていたんだ・・・
「ジェシカが産まれた時、その魔法を継承されていた事は分かっていた。しかし、貴族の歴史の中で正当な理由があり女子に家を継がせようとした家があっても、周囲の貴族たちの不満を煽る事になり暗殺の対象になる事もあった。」
・・・貴族って怖いなぁ・・・うん、突っ込まない様にしよう。
「そこで、私はライザに相談したんだ。ライザは私達を捨ててくれと言った・・・近くにいれば、いずれはジェシカと後継者の間で家が荒れてしまう。それなら、後継者が産めなかったという理由で捨ててくれた方が自然にジェシカの命を守れるからと。」
父の言葉から感じる後悔は、私にも何となく分かった・・・
「ライザを捨ててから、私には別の妻との間に子供が2人出来た・・・息子のポールと娘のマチルダだがポールにはクローク家の継承の証というべき魔法を受け継いではいなかった。そして・・・ライザを失ってあらためて思った。私には覚悟が足りなかったのだと。」
「・・・うん。」
「愛する人と一緒にいられない貴族なんてクソくらえとは思ったが、逆に言えばこの立場を利用すればとも考えられる様になった。まずは国家事業に投資する形で国王から信頼される立場を確立しつつ、ライザの墓の手入れとジェシカの捜索を公然に出来るようにした。」
それが王都内の墓場整理と孤児への支援だったんだ・・・
私は王都を出てしまっていたから入れ違いに。
「ジェシカに家を継いでもらおうと思ったのは、ジェシカの活躍があっての事だ。」
「私の?」
「アルマからジェシカが生きていると知った時、ジェシカの事を調べた・・・そしたら、街でのギルドの活躍や青の勇者として頑張っている事を知った。これはきっと神様から貰ったチャンスで、王様の後ろ盾もあれば誰も文句は言わないだろうと。」
王様への謁見の予約があったのはそういう事だったんだ。
父は少し落ち着かせて・・・
「ジェシカ、今からでも父親としてやり直しをさせて貰えないだろうか。」
私は知りたい事があった・・・
「ジェームス卿・・・いえ、お父さんはお母さんを愛していたんだよね。」
私のその言葉に父は私の目を見つめて
「ライザを守る事は出来なかったが、今でも私はライザもジェシカも愛している。」
「それが聞けて良かった・・・あれ・・・嬉しいのに・・・」
父は私を抱きしめて、親子でいられなかった間を埋める様に静かに泣いていた。
「お父さん、家を継ぐ事は少し考えさせてもらっていいかな。お母さんもきっと家族の絆を信じてお父さんと離れる決心をしたんだと思う。私もお父さんと離れていても家族だから。」
「そうか・・・いつでも待っているよ。」
こうして、私と父の親子としての溝は埋まった。
・・・ふと、父が私に聞いてきた。
「ジェシカはあの白の勇者さんとは付き合っているのかい?」
「へ?」
「悪い人には見えないけど、ジェシカには相応しい相手をだね・・・」
・・・うーん。
「お父さん、ジンとは付き合っていないけど、私はちゃんと私だけを見てくれる人じゃないと嫌だよ。」
「私はジェシカの幸せを願ってだね・・・」
「絶対に嫌。」
この件についてはまだ確執が残りそうだ・・・
(続く)
最後まで見ていただきありがとうございます。
ジェシカとジェームス卿のとの件も解決しました。
次は街に帰る話になります。




