97、目覚めたドゥーム (3)
残り時間・・・7分。
ユキのサポートのおかげで私は思いっきり攻撃に回れる。
ここで勝負をつけられなければ、難しいものになるだろう。
そんな事を考えていると、ユキが話しかけてきた。
「ジェシカ。僕が魔法を放つから、そこに合わせて攻撃するんだ。」
「ありがとう。」
「そう簡単にいくかな。」
ドゥームから黒い6枚の翼が見え、その体が宙に浮かぶ。
空に逃げられれば時間なんてあっという間に過ぎて・・・
ドゥームが飛び立つ瞬間
「フロッティ!」
炎の矢がドゥームの体をかすめる。
速すぎて赤い閃光の様に見えたけど、確かに矢がドゥームを狙っていた。
ルークの援護にドゥームはとても不機嫌な様子でつぶやく。
6分・・・
「こざかしい・・・実に小ざかしい・・・」
「まだです!ジェシカさん、僕もユキさんと協力して足止めします。」
「助かるよ、ルークさん。」
オーバーライドの弱点はルークもユキも把握しているから、2人で協力してドゥームを止める。
「ルークさん、僕が空から降ろすから・・・」
「任せて下さい!」
「サンダーストーム!!」
ユキの魔法に反応して雷雲が空を包み、無数の雷をドゥームに向かって落とす。
5分・・・
「くっ・・・これでは空に。」
「今だよ、ルークさん!」
「縫い留めます、それでジェシカさんはとどめを!ミストルテイン!!」
炎の弓から放たれた複数の炎の矢・・・その間に薄く見えるけど、矢と矢の間に魔力の糸が見える。
その矢に数回に分けて高速で放つ。
矢はドゥームを避けたかと思いきや、魔力の糸がドゥームに絡む。
それが数回にわたる事により、魔力の糸により絡められていった。
まるで蜘蛛の糸に絡み取られたかの様にドゥームにまとわりつく赤い魔力の糸。
「なんだこの糸は・・・切れないだと?」
力ずくで糸を切ろうとしている様だが、その糸はより強固にドゥームに絡みついている。
4分・・・
「ヤドリギって知っていますか?」
「知らんな。」
「・・・だと思いました。ヤドリギは木の上に生える寄生植物の一種です。その植物をイメージした矢と言えばわかりますか?その糸はあなたの魔力を受け流し、その分強度を増します。」
「それなら、どれだけ耐えられるのか試してやろう。フンッ・・・」
ドゥームはミストルテインによる魔力の糸を断ち切ろうとするが、肝心な事を忘れている。
その攻撃は私が攻撃するまでの足止めという事。
「ありがとう。ルーク、ユキ。これで終わらせる、アークサンダー!!」
神の稲妻を1箇所に集中させ、そのエネルギーを無駄無く攻撃へと転換する。
球体の結界にドゥームを閉じ込め、魔力を炸裂させた。
3分・・・魔法が炸裂する間ならこの状態は問題なくキープ出来る。
結界内で反応し続ける雷の魔力はドゥームの身体を駆け巡り、確実にダメージは与えられている。
「ぐっ、ぐおぉぉぉ・・・」
ルークは私の魔法の発動を確認して、安堵する。
「これで・・・」
「・・・。」
私はルークに答える余裕はなく、時間いっぱい魔法を当てる事に集中していた。
少しでも喋れば、結界のバランスが崩れてルークやユキを巻き込むかもしれないから。
「後はジェシカの魔法次第だね。ルークさんは念の為に次のエンゲージリングの準備をお願いします。」
「そ、そうですね。ジェシカさんが頑張っているのに僕達が気を抜く訳にはいけませんね。」
ルークは小走りで私に駆けていく。
2分・・・
これならたとえ完全体になったドゥームでも・・・
ルークとユキはその様子を静かに見届ける。
神罰はとても強力でとても繊細な魔法だ、だからこそ魔力操作が必要になってくる。
「ま、まだだ・・・私の目的は・・・終わら・・・ない。」
この言葉を最後にドゥームから声は聞こえなくなる・・・
それでも私の手は止めずただ、魔法を制御し続ける。
1分・・・
これで、残り1分。
これでドゥームとも決着がつく・・・だから、これで・・・
私は残りの時間ずっと集中させる。
5・・・4・・・3・・・2・・・1・・・終わった。
オーバーライドも解けて、ユキは私の頭の上に。
黒焦げになったドゥームを見つめ私は考える。
これで勝てたのだろうか・・・
「ジェシカさん、やりましたね!これでドゥームはたおせ・・・」
パラ・・・パラ・・・
黒こげのドゥームの体から黒い塊がボロボロと落ちていく・・・
「危ない、ルーク!」
黒こげの塊から赤紫の剣身がルークを狙う。
私は咄嗟にルークをかばい・・・
「うっ・・・」
「ユキ!」
チャリン・・・
ユキが私をかばった形になり、制御輪を繋げていたネックレスがちぎれていた。
「ユキ!ユキってば・・・」
「大丈夫だよ、かすり傷さ。ソフィアが守ってくれたみたいね。」
「ふふふ・・・油断したな。」
私の声にユキは冷静に反応する。
ネックレスはちぎれてしまったけど、それはまた買えばいい。
黒こげの塊が崩れ落ち、直径10cmほどの黒い球体が宙に浮いていた。
おそらくはこれがドゥームの核となる部分・・・ダメージを与えられなかったわけではなかった。
「この形態になる事で神の稲妻を何とか耐え凌いだ。ジェシカ、お前のオーバーライドの弱点は分かった。効果は10分、そして・・・」
赤紫の剣身が球体から少し離れた位置から出て、ルークを狙う。
「そんな攻撃当たりませんよ!!」
ルークは軽く躱すが、ドゥームは笑う。
「だが、お前の切り札のエンゲージリングは使えまい!」
「「「!!」」」
エンゲージリングを発動させるにはルークが私と手を繋いだ状態で少しの間集中する必要がある。
何度も使えないとは思っていたけど、こんなに早い段階で相手に弱点が分かるとは思わなかった。
「ジェシカ、すまない。」
「ネックレスならまた買えばいいよ。制御輪が無事ならそれでいいんだよ。」
「ジェシカ、頼みがあるんだ・・・」
私はユキの話を聞き、ルークへの攻撃に集中するドゥームのもとへと走る。
「フハハ・・・ルーク、お前さえ倒せば・・・ぐっ・・・何をする。」
「つかまえた。」
私はドゥームの核を左手で掴む。
「この状態なら私を攻撃できないでしょう。それに私やルークの魔法でも・・・ルーク!私ごとあなたの魔法で攻撃して!!」
「ジェシカさん!でも・・・」
「ごめん、ドゥームの核を押さえているだけで叩きつける余裕は無いんだ・・・だから、私を信じて。」
私はルークを心配させない様に笑顔を向けるだけで精一杯。
「お願い。」
「分かりました。レーヴァテイン!!」
「ハハハ、バカめ!一瞬焦りはしたが、掴まれた程度なら何とでもなる。」
ドゥームは体から強力な魔力を発生させ、私を弾いた。
「くっ・・・。」
弾かれた私の体は後ろにのけぞり、そこにルークのレーヴァテインが私を・・・
「あっけない幕切れだったな、フハハハ・・・」
ドゥームの勝利を確信した笑いが荒野に響き渡る。
(続く)
最後まで見ていただきありがとうございます。
ユキとルークの協力により、神罰とのオーバーライドで出来る最大の必殺魔法を放つも
それだけではドゥームを倒す事に至らず、ジェシカ達はピンチを迎える事になります。
設定補足:レーヴァテイン、フロッティ、ミストルテイン
ルークのオリジナル魔法で名前の由来は北欧神話の聖剣の名前です。
フロッティはより早く貫通性を高めた炎の矢を放つ魔法で、ミストルテインは複数の矢に仕込んだ魔力の糸で相手を絡めとる魔法になります。




