95、目覚めたドゥーム (1)
クラウズの無力化は出来ているので、私はモードとの話を聞いていた。
彼はため息をつきながら、クラウズを見下ろしている。
「あなたは利用されていたんですよ。」
「利用?何を言っているのですかな?モード殿の情報を元に私は王国へ反旗を翻した。」
「それが私の目的です。」
・・・えっと、何が起こっているのが分からないけどこの二人が手を組んでいたのと、それぞれの別の目的を持って動いていたという事だけは分かった。
「私が反旗を翻した事が目的?」
「えぇ。私はあるものが欲しかった。それは簡単には手に入れる事が出来なかった。それこそ気の遠くなるような時間が必要だったからです。」
気の遠くなるような・・・イメージ的には鍾乳石みたいなものかな?
2人の会話がチンプンカンプンで分からなくなっている。
「意味が分からないですな。戦争で得られるものなんて・・・もしや、私が王国を掌握した所を狙って!?」
クラウズの言葉にモードはため息をはいた。
「はぁ・・・所詮はその程度か。だから、この世界が蝕まれていた事実に気付いた者がいなかった。」
モードのクラウズに対する呆れた態度は私が見てもすぐに分かった。
この世界が蝕まれていた?よく分からない言葉が更に出てきた。
そして、しびれを切らしたモードは変えていた口調を変える。
「まぁ、良い・・・余がこの世界を破滅させるのだから、有象無象の戯言はここまでで十分だろう。クラウズよご苦労であった。」
「ご苦労?まだ、私の野望は終わっていない!」
「そんなものただの幻想にすぎない。いずれ全ては終わる・・・」
モード大きく息を吐き出すと、次に大きく息を吸い込む。
こっちが吸い込まれる事はないが、黒い何かがモードに取り込まれていく。
「な・・・なんだ・・・これ・・・は・・・。」
クラウズからも出ていた黒い何かはモードに吸い込まれていき、クラウズは糸の切れた操り人形みたいにストンと力が抜け倒れた。
「クラウズ前当主!!」
「クックックッ、ジェシカよ。安心するが良い、そいつの命は奪ってはいない。余にとっては人間は効率の良い餌。必要以上の殺しはしない、余は所望するものは破滅なのだから。」
何で私の名前を?・・・まるで私を知っている様な口ぶりだが、全く見覚えのない・・・あれ?自分の事を余という人物なんて・・・
「よもや、余の右腕を奪った事すら忘れるとは随分と薄情ではないか。」
「右腕・・・ま、まさか・・・。」
「そのまさかだよ、余はドゥームだ。この者は随分とお主を恨んでいたからな利用させてもらったよ。実に素晴らしい働きだった。」
見た目はシルクハットでスーツの青年。
不自然な4本腕は2本になっていて、ぱっと見は普通の人間にしか見えないのだから気付かなくても仕方ない。
クラウズとドゥームが手を組んでいた。
その事実は分かったものの、どうして組む必要があったのだろうか?
そういえば、『あるものが欲しかった』と言っていたっけ・・・
・・・そうだ。
これは私が言った事じゃないか。
ドゥームは不完全な状態で出てきた。
そして、モニカの魔王因子を狙う可能性があったからモニカとの共闘を申し出た。
でも・・・ドームの言っていた事を思い出す。
私は分かっていなかったのだ・・・“魔王因子の正体”を。
もし、別の方法で魔王因子を取り出せるというのであればモニカと戦うのはリスクでしかない。
「お主の事だ、何故この者と余が組んでいる理由は分かったはずだ。」
「魔王因子・・・。」
「くくく、察しが良いな。その通り、そして魔王因子は必要以上に稼ぐ事が出来た・・・あらためて礼を言おう。」
上機嫌に笑うドゥームだが、私には魔王因子の正体が分からなかった。
戦争が起これば供給出来るもの?
その表情を読み取ったのかドゥームは語りだす。
「お主達がモニカを守る間に、私は計画を進める事が出来た。ふっ、少しは説明しておいた方が良いだろう。魔王因子の材料はこの世界の人間・・・の魔力だ。」
「そんな!?」
「驚くのも無理はない。お主達の世界には魔力は無かったのだろう?」
お主達の世界・・・それは私が異世界転生した事を理解していた。
「どうしてそれを?」
「勇者とは別の世界から呼び出されたもの。どういった経緯であれ、こことは別の世界を知っているという事だ。魔力の無い世界から来た人間には想像つきにくいだろうから、お主に分かる様に話そう。」
私とルークは異世界転生、ジン達やレイは異世界転移で話を聞く限りでは元いた世界には魔力なんて物は無い。
だから、魔力なんて便利な物としての認識しかなくて、魔王領の苦しみも最近まで知らなかった。
そしてドゥームは話を続ける。
「この世界での魔力は人間と一体化する事で人間の感情に感化される。それは喜びでもあり、怒りでもあり、哀しみでもあり、楽しさであり・・・中でも負の感情に感化された魔力は人間が死んでも消える事はなく、この世界の澱みとして残る事になった。それが魔王因子の始まり。」
そんなまさか。
もし、ドゥームの言う事が本当であれば・・・
答えたくない回答をドゥームは提示する。
「魔王因子も元は人の意思であり、1人でも人間がいるなら魔王因子が無くなる事はない。」
「・・・。」
「どうした?この事実を前に戦う気力を失ったか?」
例えドゥームを倒しても、いずれは復活する。
そうすれば、また新しい勇者が魔王を倒し・・・それを繰り返すしかないのだろうか。
・・・でも、私にはまだ出来る事がある!
「私が何もしなければ、世界が破滅するから。私はまずあなたを倒します!!」
「完全となった私に勝てるとでも・・・!!」
炎の矢がドゥームの正面を捉えるが、ドゥームは右手で炎の矢を掴み、そのまま矢をへし折った。
「大丈夫です。あなたには僕がついてます。例え世界の意思に背く事になっても僕だけはあなたの味方です!!」
炎の矢を番え、ルークがやってくる。
「おのれ・・・まずはお主達から始末してやる。勇者という希望が潰された時、より深い絶望が世界を包むだろう!!」
以前とは比べ物にならない魔力を放つドゥームに私とルークは立ち向かう事になった。
(続く)
最後まで見ていただきありがとうございます。
クラウズの裏で暗躍していたのはドゥームで、その目的は魔王因子を取り込む事だった。
ドゥームから語られる魔王因子の正体を知る事になりますが、それでもジェシカはルークと共にドゥームに立ち向かいます。
設定補足:テイムコネクトのルール
・契約をしている事(心を通わす事が条件。契約において相手に対する強制力はありません。)
・1体のみ合体可能。なので切り替える場合は一旦解除する必要がある。
・合体する事で相手との魔力を合せたり、お互いの技術の共有などが出来る。
※編集の都合によりこの時間になります。
申し訳ございません。




