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異世界でも恋愛は出来ますか?  作者: 香坂 悟
花の章
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94、戦いを止める為の戦い (2)

魔法に関しては切り返しが早く、神童と謳われていたというのも嘘ではないと思う。

ただ・・・武器に関しては大雑把な振りだった。隙をつくとすれば、武器での攻撃を誘うのが定石になる。


「コールレイン」


クラウズは手を空へ向けて魔法を唱えると雨が降り出す。

はじめは小雨から、だんだん雨脚が強くなっていく・・・


「小娘相手ならこれで十分だ。」


さっきから降る雨に細工がされているわけでもなく、降っているのは只の水。

これだけで何が大丈夫か分からないけど、私は隙をつく為にクラウズの周りを走る。


パシャパシャ・・・


雨で地面に水分が含まれていき、次第に水たまりやぬかるみが発生する。


「小娘の攻撃は協力者から聞いている。そして・・・」


私はクラウズの隙をつき攻撃をする。


ガキンッ!!


隙をついたはずが大剣が私の攻撃を受け止める。


「!!」


予想以上の動きに私は驚いていた。


「なるほど、私の予想以上に速く動く。だが、小娘がこのからくりに気付かなければ私の敵ではない。」

「敵ではない?」


私も甘く見られているのか、それなら・・・


「加速強化!!」


再びクラウズの隙をつく為に距離を取る。


バシャ・・・


荒野に降り注ぐ雨は砂埃を落とし、乾いた大地の恵みの雨となる・・・


雨・・・


確かに毒や酸の雨ではなかったけど、私は完全に見落としていた。

只の水だからと油断していたけど、水に濡れる事自体がデメリットである事には変わりない。

服に水の重さが加わる分、スピードも落ちるし・・・服が濡れたら透ける布だったらまともに戦えていなかったと思う。

こんな所でスライムの粘液だらけになった事が役に立つなんて。


そして、水たまりは脚の踏ん張りが甘くなるのと水の音で先の動きが見切られるリスクがある。

クラウズが反応できたのは私が気づいてなかったからだろう。


「雨・・・厄介だね。」

「今更気づいたか小娘。だが、広範囲に降る雨を何とかしなければ形勢逆転は無理だろう。」

「いえ、仕掛けさえ分かれば私になら何とか出来ます。ユキ、いける?」

「(大丈夫だよ。ウォーターフィルム!)」


私の周囲に水の膜を発生させ、雨による濡れはこれで防げる。


「ウィンドブロアー!」


次に風魔法で濡れた服の水分を吹き飛ばす。


「ほう、さすがは勇者と言った所か。水と風の魔法を同時に操るとは。だが、これならどうかな。ウォータースパイク!」


水たまりから伸びる水の槍を回避する。


「ユキ、時間を稼げるかな?」

「(問題ないよ。)」

「ありがとう。」

「ハッハッハ、気が触れたか。独り言が多くなったな!」


私はクラウズの周囲を走り回りながら、時々襲いかかってくる水の槍を躱す。

完全とは言えないけど、ウォーターフィルムのおかげで水の槍の勢いは殺せているのである程度乾けば・・・


「これくらいなら、ウォーターチャージャー。」


引き続きクラウズの周辺を走りながら、周辺の濁った水を吸い上げていった。

水が吸い上げられていくのでウォータースパイクのカモフラージュになっていた水たまりも消える。


「・・・何をやっているんだ?」

「水を貯めているんですよ。」

「そんな事、見ればわかる。それが何の意味がある?」

「それは追々分かりますよ。」


貯める水球はどんどん大きくなる、相手の使う水魔法も相まってチャージされる速度も速い。

水球が大剣の攻撃範囲を覆う事が出来る大きさになった頃を見計らい・・・


「ユキ、雷魔法を仕掛けるよ!一瞬でいいから。」

「(分かった!)」


泥の水球をクラウズにぶつける。

私の接近に大剣を振り下ろすも上手く振れない・・・


「これは泥水!上手く剣が振れぬ。ゴボッ・・・」


ただの水だけど、そこには浮力が発生するから剣が上手く触れないのは当然。

そして、溜められた水は・・・まだ固定されている。


そこにユキの雷魔法は水球を貫く。


「(サンダーバレット!)」

「ゴボボッ・・・」


泥水なので、電気を通すにはもってこいだった。

電気を瞬間的に泥の水球内に通し、溺れてしまわない様にする。


「リリース!」


ウォーターチャージャーを解除した。

解除された泥水は周囲に撒かれ、電気ショックを受けたクラウズはまともに動けない。


「これで終わりですね。」


私はレイピアをクラウズに突き付ける。


「カハッ・・・くっ、くそ・・・3属性持ちだったとは・・・」

「違いますよ。」


水を吐き出し、悔しそうにするクラウズ。

でも、この力は私だけの力ではない。


「変わり者テイマー、使役するものがいないと聞いているが?」

「確かに私は変わり者テイマーと呼ばれてはいますが、それが勘違いなんですよ。」


私はテイムコネクトを解除する。


「!?・・・ウサギだと?」

「この子はユキ。ついさっきまで、あなたは私とユキの2人で戦っている事に気付かなかった。それがあなたの敗因です。なぜ、テイマーを使ってグランナディアを攻めようとしたのですか?また戦争を起こすつもりだったんですか?」

「私を当主の座から引き下ろした愚かな王国など滅んで・・・おお、モード殿!!」


クラウズに理由を聞いている途中で、左横からシルクハットとスーツ姿の青年が現れた。

この世界でスーツを見たのはドゥームが初めてだったけど、私が知らなかっただけなのだろうか?

モードと呼ばれる青年は涼しい顔でクラウズに尋ねた。


「おや、クラウズ殿。負けてしまわれたのですか?」

「あぁ、だがモード殿がいれば・・・モード殿?」


左手で頭を押さえ、クラウズを見下ろすモード。


「はぁ・・・あなたはまだ分からないんですか?」

「何の事ですかな、モード殿?」


何やら雲行きが怪しい二人の会話を私は眺める事になった。


(続く)

最後まで見ていただきありがとうございます。

クラウズを何とか押さえ、グランナディア侵攻の理由を問いただそうとするジェシカでしたが

そこにモードと呼ばれるスーツ姿の青年が現れ、2人の話を聞く事になります。


設定補足:コールレイン

雨を降らせる水属性魔法・・・天候変化というより、空から水を散布させるスプリンクラーの方がイメージが付きやすいかもしれない。(月の章でアキラが使えるようになる天属性の魔法にも雨を降らせる魔法はありますが雨雲を呼び出す為に効果は同じではあるものの、その仕組みは大きく異なります。)

作中だと雨が降っているように見えていますが、天気が雲がかっていた事もありジェシカは勘違いしています。


※編集の都合によりこの時間での投稿になりました。申し訳ありません。

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