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異世界でも恋愛は出来ますか?  作者: 香坂 悟
花の章
295/309

91、揺れる王都 (1)

王都・クローク家屋敷の書斎


私は王都で起きている事件の調査を父に申し出ると、安心したみたいで一息ついていた。

冒険者ギルドでもただでさえテイマー不在で調査に人が割けない状態だった様だ。


「実は冒険者ギルドの方にも相談を貰っていてね。調査しようにも人がいなかったから、ジェシカがこうして調査してくれるのは助かるよ。一応、街から応援を呼んでおいたからその人と協力して・・・」

「失礼します。旦那様、応援の方が来られました。」


扉の向こうからナルの声が聞こえた。


「失礼します。」


・・・あれ?聞いた事ある声・・・え、まさか・・・

扉を開けて入ってきたのはセルリアだった。


「街から応援に来たセルリアと申します。」

「セルリアっ!?」

「先輩!?」


私とセルリアの様子を見て、父は手をポンとして状況を理解した。

偶然とはいえセルリアと一緒に仕事できるのは心強い。


「あぁ、そうだったね。アルマの推薦でお呼びしたんだけど、丁度良かったよ。セルリアさん、ジェシカをよろしくね。」

「ちょっと、お父さん!」

「良いじゃないか。ちょっとくらいは娘を心配する父親も良いだろう?」


父はそう言いながら部屋を出る。

こんなやり取りをするとは思わなかったけど、セルリアもあまりの展開に呆然と・・・あれ?


「セルリア?」


控えめな感じのとてもおとなしい子ではあるんだけど、こんなボーっとした様子は初めてだった。


「先輩のお父さん・・・素敵な人ですね。」

「え・・・セルリアってそういう趣味があったの?」


人の好みはそれぞれなので、私としては追及はしないけど・・・そんな事を考えていると、セルリアが急いで修正に入った。


「えっ!?あ、違いますよ。私の父は幼い頃に亡くなっていて・・・生きていたらあんなお父さんだったのかなぁって思ったんですよ。」

「そうだったんだ。」


父と会ったのは本当に最近になっての事だけど、こうして親子として見て貰えるのは素直に嬉しかった。

「実は最近まで会えなかったお父さん」なんてセルリアに説明するのもなんか野暮ったく感じた。


「そう言って貰えると嬉しいよ。さ、仕事にとりかかろうか。」

「はい。」



屋敷の応接間を借りて、王都周辺の地図とメモを取り出した。


「たしか、行方不明になった人の話だと・・・」


事前に行方不明だったけど王都に戻って来れた人に話を聞いていて、地図に行方不明になっただろう場所に✕印をつけていく。

でも、その範囲はほぼ王都全域で“行方不明不明になったのは王都の人”以外の情報が無い。


「特に共通点無さそうだね。」


犯人がいるとすれば、ある程度は足取りが掴めそうな情報量だったけど見積が甘かった。


「先輩。」

「どうしたの?」

「気のせい・・・じゃないのかもしれませんが・・・。」


セルリアも調べ物をしていたらしく、メモ帳を取り出した。


「話して貰っていい?」

「気になっていたんです。戻ってきた人たちなのですが、冒険者でもないのに職業を持っていたって・・・」

「そんな話だったね。」


行方不明だったけど戻ってきた人たちは冒険者でないのに職業を持っていた。


「・・・無いんですよ。」

「無い?冒険者じゃないのに職業を持っていたんだよね。」

「違うんです。先輩、戻ってきた方が持っていた職業は確認されましたか?」

「そういえば・・・ちょっといいかな。」


戻ってきた人が持っていた職業・・・

私はセルリアからメモを貰い、パラパラと戻ってきた人の職業を確認する。


男性・剣士、女性・魔法使い、男性・拳闘士、男性・僧侶、女性・魔剣士・・・

そして、セルリアの言っていた言葉を照らし合わせると。


「そうだ、テイマーがいない。」

「はい。そして、同じ時期に王都の冒険者ギルドでテイマーが一斉に辞めた・・・おかしくありませんか?」


確かにおかしいし、偶然とも思えない。

何らかの意図があるのなら、こういう時には


「モニカ、取れる?」

「うむ。」

「ゲンさんをこっちに回してもらえるかな。」

「うむ、良いぞ。」


ノアールとゲンはレイと一緒について貰っていたので、急遽モニカに頼んでゲンをこちらに贈って貰った。


「お嬢、来たぞ。お、セルリアのお嬢久しぶりだな。」

「ゲンさん、お久しぶりです。」

「あ、ゲンさん。ちょっと調べてほしい事があるんだ。」

「なんでえ・・・あぁ、そういう事か。よし、俺に任せておきな。」


ゲンは静かに目を瞑る・・・3分ほど経ってから目を開いてこう言った。


「何か凄い事になっているな。」

「どういう事?」

「王都全体に悪意が渦巻いている。中心は西地区なのだが、西に移動しているな。お嬢に感知して貰った方が早い気がするな。」

「そうだね。ゲンさん、テイムコネクト!」


私は意識を集中させ、ゲンの感じた悪意の塊を探る・・・移動の痕跡があり、それは西へと移動している。


「セルリア!ちょっと地図を・・・どうして・・・。」


私は地図を見直して痕跡を遡る。

悪意の塊の遡った先には、ヤマニ家の屋敷があった。


「モニカ、度々ごめん。ジンを王城に送ってほしいんだ。」

「ん?構わぬがどうしたんじゃ??」

「ジンに“ヤマニ家の屋敷を調べる為の勅命を貰ってほしい”と伝えて貰えば分かるはず。」

「分かったのじゃ。」


ジンが勅命を手配している間に私はヤマニ家の屋敷へと向かう。

ヤマニ家の屋敷の前に到着すると、ソラルが立っていた。


「お前はクローク家の・・・うちの屋敷に何の用だ?」

「すみませんが、屋敷を調べさせてもらいます。」

「はぁ!?何故お前が調べる必要がある。」


私を通すつもりがないのは分かっている。

だから、ジンに頼んで王様からの勅命を貰う事にした。


「そうだな、不正の証拠があったら困るよな?」


書簡で自分の肩を軽く叩きながらジンが後ろから歩いてきた。

本当にモニカとジンの仕事は早いなぁと思いつつ、私はジンの様子を見る。


「どういう事だ?」

「教会への寄付金の管理で帳簿と違う箇所が見つかってな。王国では教会への寄付金の横領は重罪のはずだ。その件で王様から勅命を賜った。」

「バカな・・・っ!?」


・・・これはまた都合よくヤマニ家のぼろが出たものだ。

私が驚いていると、ジンがそっと耳打ちする。


「今だ、行ってこい。」

「分かったよ。」


ジンに背中を押され、私は悪意の渦巻いていたヤマニ家の屋敷を調査する・・・


(続く)

最後まで見ていただきありがとうございます。

王都で起こった事件を調査するジェシカ、街から応援に来たセルリアと共にその事件の裏側にヤマニ家が関わっているという疑惑を持ちます。


設定補足:ヤマニ家

4大貴族家の中で最も教会とのコネが強く、教会関係者との血縁関係も強い。

西地区の管理の他、教会に寄付されるお金の管理を任されている為に財力についてはハトリック家の次に多い。

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