89、ジェシカの休日
魔王城・広間
「ふぅ・・・中々に骨が折れるの。」
左手で右肩を押さえながら一息つくモニカの姿が・・・
ドゥームが姿を消してから既に一週間、モニカに捜索を頼んでいるものの時間はかかりそうだった。
「しかし・・・お主達もここまで付き合ってくれる事もないのじゃが、何というか律儀じゃのう・・・。」
少しため息をつきながら私達を見ていた。
一つの部屋に全員が机を向かい合わせている状態。
まるで小さな会社の事務所と化していた。
私達としてはモニカが危険な目に合わない様に資料をまとめながら魔王城で待機していたんだけど・・・モニカにはストレスだったかな。
「確かに集まり過ぎたのかもな。じゃあ、シフト組んでおくか。とりあえず希望は聞くつもりだが、行き先の報告は忘れない事。」
「うむ、そうしてくれると助かるよ。」
ジンは私達の希望を聞くと、ペンを持ってササっとシフトを組んだ。
「これでどうだ?」
モニカ一人に勇者2人がつく様にして・・・
「というわけで、レイとジェシカはゆっくりと休んでおけ。」
「やっほ~♪休みだ~♪」
「でも、いいの?」
「シフトだって言ったろ?さすがにはっちゃけ過ぎれば困るが、休み自体は考えていたんだ。」
なるほど、だからシフト組むのが早かったんだ。
ジンの手際の良さと意図に納得して、私達はモニカに王都へ送ってもらった。
王都・東地区
「それにしても、モニカの魔法は凄いねー。じゃあ、どうしようかな~♪」
上機嫌で周囲を見回すレイを見て私は話がしたい事があった。
「レイ、ちょっと付き合ってほしいんだけど。」
「ん?いいよ。どこに行く?」
私達は近くの喫茶店に入る。
ウェイターさんに注文をして、正面に座っているレイに私は謝った。
「レイ、ごめんなさい。」
「何の事?」
「魔王城での事。私は何も出来なくて・・・だから、ごめんなさい。」
レイにずっと謝りたかったけど、ドタバタがあってこのタイミングになった。
すると、レイはケロッとした表情で私に笑いかける。
「なんだ、そんな事か。」
「そんな事って・・・。」
あの時は土壇場で私が何も出来なかった事は裏切りにも近い行為だったのに。
「うん、そんな事。私はこの世界に来るまでずっと一人で周囲の人に迷惑かけない様に気を使ってきたから分かるんだよ。ジェシカが色々背負い込んで動けなくなっていた事に。それに、今はちゃんと考えているんでしょ?」
「もちろん。」
「それなら私からいう事は・・・あ、ノアールちゃんはジェシカと仲直りする事。ジェシカも気を使い過ぎね。」
あれから、ノアールとは少し距離があった事もレイは知っていたみたいで軽く付け加えた。
「ノアール、ごめんなさい。」
「・・・。」
「ノアール、お嬢もわざとじゃなかったんだ。そこまで責める事ないだろう?」
「ダーリン・・・。」
ゲンの助け舟が入る事でノアールの閉ざしていた口が開く。
「次は同じ事はしない。だって私にとってレイは親友だから。」
「本当?」
「約束する。」
「・・・ごめんね、ジェシカ。」
やっとノアールと仲直り出来た・・・
「はい、これでおしまい!注文も届いたし、楽しくお茶しよう♪」
「ありがとう、レイさん。僕はどうしていいか分からなかったから。とても助かったよ」
「いいんだよ、ユキ君。今日も可愛いね。」
そっと頭を撫でるレイにユキは気持ちよさそうにしている。
ユキやゲンにも心配かけていたんだね・・・よし。
「今日は私の奢りだよ。レイ、みんなもガッツリいっちゃって。」
「え、いいの?じゃあ遠慮なく♪」
夕方ー
「さぁてと、夕飯楽しみだなぁ♪」
「レイ・・・まだいけるんだ。」
私は目を点にしてレイを見つめていた。
あの後、談笑しながら結構食べたつもりだけど・・・夕飯を少なくしようと思っていたのに。
「うーん、甘い物は別腹?」
「レイ、ちょっと違う気がするよ。」
「あはは。良いんだよ、今日は良い事あったしチートデイでいこう♪」
そっか、喜んでくれるんだね。
私も・・・
「じゃあ、私も・・・ん?どうしたの?」
レイが私の顔を覗き込んで・・・
「あ、一応気をつけようか・・・ほら、私達ってアオイみたいに栄養いかないから。」
アオイはね・・・色々な意味でチートじみてるから。
料理出来て、美人で、性格も控えめでさらに成長しているから凄くモテそうなんだけど、一筋なんだよね。
「確かにアオイはチートだよね・・・って、私は成長しないって事!?」
「あれ?オブラートに包んだつもりだったけど・・・」
「うん、そのオブラートは既に溶けてるね・・・ははは。」
私とレイはモニカが迎えに来るまで、バカな話をしながら笑い合った。
ーーー
???
黒みがかった壁の部屋に2人の男がいた。
部屋の大きさ的には、そこまで広くない。
1人は身分の高い人が着てそうな豪華そうな服で、金の刺繍がされておりかなり手の込んだものを着ている。
立派なカイゼル髭が特徴の初老の男性だ。
もう1人は黒のシルクハットに黒のスーツを着た青年。
2人の出会いは偶然だったけど、とある1つの目的の為に行動をしていた。
初老の男性は青年に話しかける。
「いやぁ、モード殿のおかげであの小娘に一泡吹かせてやれます。そして、また王都の中枢に返り咲ける・・・くっくっく。」
モードという青年は笑みを浮かべ返事をする。
「私もあの小娘には苦い思いをさせられました。クラウズ殿のお役に立てるなら私どもしましても喜ばしい事です。」
「モード殿、私が復帰したらあなたには私の右腕としてのポジションをあたえましょう。」
2人の笑い声が小さな部屋に響き渡っていた。
(続く)
最後まで見ていただきありがとうございます。
モニカとの共闘により、不完全な変化を遂げたドゥームを倒すべく動き出しますが一向に見つかる気配がありませんでした。
休みを貰ったジェシカとレイはあらためて魔王城での出来事を話します。




