85、侵攻の方向性
「ジュリア!どうしてあなたがここにっ!?」
お約束とはいえ、私は彼女に理由を聞かざるを得なかった。
すぐにでも侵攻が始まっても不思議ではなかったけど・・・
私達が王都に強制帰還されてからというもの、魔王軍に大きな動きはなかったから。
「そうね、そろそろ話しても良いのかしら。」
「!?」
「まずはあなた達が王国とグランナディアとの軍事協定を結ばせなかった事には感謝するわ。」
「え、どうして・・・ううん、モニカの魔法で私達の行動は筒抜けだった。」
ジュリアがどうして軍事協定を結ばなかった事を知っていたのか。
魔王城での出来事を振り返れば聞く必要はなかったけど、私個人として凄く気になっていた。
私達に接触してきてまで止めてきたのも、モニカの魔法で事前に分かっていたからだろうと思う。
「従来なら私達のうちの一人が指揮官となり、各街の侵攻をするのが前の侵攻からの決まりだった。でも、ケーオスが侵攻を焦るあまり王都にモンスターを放っていた。これは私達のルールに反するから止めるつもりだったけど、あなた達は私の予想以上の動きを見せてくれた。」
オウガやシグマの動きからして、前もって侵攻を宣言し圧倒的な力をもって街を侵攻するというのが従来のやり方らしい。
でも、ケーオスのやり方自体も侵攻の方法としては間違ってはいないからこそ、ジンはその先を予想する事が出来たとも言える。
「これからどうなるかは分からないけど、今の国々に500年前の様な野心に満ちた考えがない事は感じられたから、私達が侵攻するにしても、そういった姑息な芽は早いうちに摘んでおきたかったのよ。魔王領に魔王軍を集結させたのは、あくまで魔王領を守る為の措置。現時点での侵攻は考えていないわ。」
ジュリア達も何だかんだで支配する場合の事は考えていた様だった。
強国同士が手を結べば国のバランスが崩壊してしまうから、極端な同盟を結ばせたくなかったらしく、それが王国とグランナディアとの軍事協定だった。
もし、結ばれていたなら四天王達もルールを破ってでも対応しなければいけなかっただろう。
そして、魔王城に魔王軍を集結させたのは侵攻ではなく防衛の為。
だからこそ、各四天王の指揮で動いていた魔王軍も魔王領の防衛という目的のもと集合する事が出来たのだろう。
これまでの行動を見ても、ジュリアの説明に納得できた。
つまり、ジュリアがここに来た理由は魔王軍による侵攻の為ではなくモニカの手伝いになる。
神殺しを新しい神とすることで世界の価値観を変え、無駄な血を流さない為の意識改革をする為に。
「ここにいる黒龍達を使って、神殺しの成長を促す為です。」
ジュリアが説明している間に、腕の発達した黒龍は転移されておりおそらくは神殺しの所に送られたのだろう。
だけど、あの神殺しは歪な存在だった。それにどうやって・・・そんな私の様子を見たジュリアはクスリと笑う。
「それから先はモニカ様のみ知る事。ふふっ、気になるならこの大空洞の奥へ来なさい。私達は逃げる事もないわ。」
そう言い残すと、ジュリアは姿を消した。おそらくはモニカの転移の魔法によるものだろう。
昔の人がなぜあの黒龍を神殺しと呼んだのかその真意を探る為にも。
「行こう。ルーク、ウィル!」
「はい。」
「もちろんです。」
大空洞はさらに奥へと続く。
闇が包む世界の中、私達は小さな明かりを頼りに奥へと進んで行く。
時間の感覚が掴みにくいけど、おそらく20分ほどは歩いただろう。
そこには黒龍と・・・謎の液体を捕食する神殺しの姿があった。
大空洞に響くバキバキと砕ける音とビチャビチャとする水音・・・
捕らえた黒龍を骨ごと顎でかみ砕き、謎の液体をすする様は本来なら只の捕食する姿のはずなのに、私はなんか恐怖を覚えていた。
「ふむ、偶然とはいえこんな所で再会するとはの。これも運命というものかもしれんのう。」
「モニカっ!」
「丁度良い・・・見るがよい、これがここにいる黒龍たちを捕食した神殺し・・・新神がここに顕現する!!」
ゴオオォォォォ・・・
捕食が終わった神殺しはその大きな声を大空洞に響かせた後に体を丸くさせた。
すると、黒龍の姿から大きな卵へと変化する。
高さにして20mはある大きな卵から私達を見据える6つの赤い目
成長させたら、全てが終わる気がする・・・私はレイピアを抜いた。
「させません!モニカ様は下がっていて下さい。」
「うむ。」
卵に向かって斬り掛かった私の攻撃をジュリアは受け止める。
「ルーク!フェニックスを!!」
「任せて下さい、フェニックス!!」
ルークの炎弓から火の鳥が卵に向かって飛んでいくが、ジュリアは当然火の鳥を迎撃する。
砕けた火の鳥は卵の下を取り囲んでいる。
「今です、ジェシカさん。」
「うん。ユキ、行くよ!」
「(分かった!マスドライバー!)」
「加速強化!」
ユキが発生させた電気の足場を加速強化で駆け抜け、復活するフェニックスの攻撃に私の一撃を乗せる!
「フェニックス・ドライバー!!」
フェニックスの魔力を上乗せした私渾身の一撃に、さすがのジュリアも受け止め切れず弾き飛ばされた。
「くっ・・・」
「これで卵は・・・!!」
私の見立てが甘かったらしく、卵には少しのヒビが入った程度・・・
ピシッ・・・
ピシピシッ・・・
ヒビがどんどん大きくなり・・・卵全体にヒビが入った瞬間に大きく砕け散った。
「まさか・・・卵が・・・」
「ほう、ジェシカもやるのぉ。」
よろけながら立ち上がるジュリアと砕けた卵に驚くモニカ。
「やりましたね、ジェシカさん!」
「はいはい、近づきすぎですよ。ルークさん。」
ウィルは力ずくで私の手を握っているルークを引きはがす。
ルークは不満そうな表情をしているけど、私はその事よりも気になる事があった。
「やった・・・の?」
確かに卵は砕けた・・・でも、おかしい。
全ての卵がそうとは言えないから本当に倒せたのかもしれないけど、砕けて地面に落ちていたのは殻だけだった・・・
(続く)
最後まで見ていただきありがとうございます。
大空洞に突然現れたジュリアの目的はモニカと共に神殺しを成長させる事だった。
そして大空洞の最奥で黒龍を捕食していた神殺しは卵へと変貌し、ジェシカは卵を壊しますがそこに違和感を感じます。
設定補足:マスドライバー
雷のカタパルトを出す魔法で、ユキがジェシカのレールガンを見て使える様になっている。
レールガンの様に弾を射出する他、足場にしたりする事が出来る。
※編集の都合でこの時間になってしまい申し訳ありません。




