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異世界でも恋愛は出来ますか?  作者: 香坂 悟
花の章
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82、込められた思い

まるで制御輪に意識を吸い込まれたかのように、私の視界は暗くなる。

そして、無限にも見える星空の下・・・そこには・・・


「初めまして。」

「あなたが仮想人格さん・・・で合っていますか?」

「はい。まさか私とこうして会いに来てくれる方がいるとは思いませんでした。まずはお礼を言わせて下さい。」

「お礼?」


外見はソフィアと全く同じで星空になびく金髪が美しく引き込まれていく。

私も仮想人格と会うのは初めてで、会って早々にお礼を言われる理由が特にない。


「ラピス様とソフィア様の件です。ジェシカさん達が再び仲を取り持ってくれた事、ありがとうございました。」

「ユキもソフィアさんと仲直りしたかったんじゃないかな。今のユキを見れば私でも分かるよ。」


そんな私の返事に仮想人格は微笑みかける。


「ラピス様は良い家族に会えたんですね。」

「ははは、そう言われるとちょっと恥ずかしいかも・・・。」


あらためて言われるとくすぐったくて、でも嬉しくもあった。

そうだ・・・私は仮想人格に聞きたい事がある事を思い出した。


「私があなたに会いに来たのは制御輪の事についてお聞きしたい事があって。ソフィアさんはどうやってユキの魔力をコントロールしていたのですか?それとどうして手をつないだりしていたのか気になって。」


私は簡単にここに来た理由を話した。


「・・・なるほど分かりました、理由はもちろんあります。直接魔力に触れる事が主な理由ですね。魔法は体内にある魔力を脳でイメージして放っている・・・と思われているのではないでしょうか。」

「そうですね。」


言われてみると、そのイメージがある。

魔法を放つ前にそういったイメージはつくし、つかなければ威力も減衰してしまうから。


「それはある意味正しいのですが、ある意味間違っているのです。」


・・・とんちかな?私は首を傾げていると仮想人格は少し焦っていた。


「あ、すみません。魔法を魔法として完成させるには脳だけでは足りないという意味です。」

「脳だけでは足りない?」

「単純な話です。魔法というのは体内の魔力を使う・・・それを脳だけで制御するには容量が足りないのです。」


なるほど・・・魔力のある世界で人々が自分の体内の魔力をコントロールしているのは、自然と体内でそれぞれの魔力をコントロールするから出来る事であって、イメージ云々で何とかなっているのは脳だけでコントロール出来ているかららしい。それなら、強い魔法になるほど脳だけの制御に負担がかかるのは当たり前だった。


「制御輪が魔法のコントロールの為に仮想人格を作ったって事はもう一つの脳を作る事で負荷を減らしたり、より高度なイメージをする事にあったんだ・・・。」

「ふふっ、さすがですね。中でも手は魔法の発動の起点になる場合が多いので指輪という形を用いたのです。」


制御輪が手に付けるアクセサリーだった事にも意味があって、その仕組みを知る事でより理解できた。


「あの、ジェシカさん。」

「ん?」

「おそらく気づいているとは思いますが・・・制御輪はあなたに適合しています。ラピス様ですら私に会えた事はありませんし、私自身あなたとここまで同調できた事に驚いています。」


ユキがこの仕様を知っていた様子もないし、予想はしていたんだけど・・・私は制御輪に適合していたらしい。


「差し出がましいとは思いますが、私で良ければ力をお貸し出来ますしラピス様も反対はしないでしょう。」


仮想人格の提案も尤もだけど、私は首を横に振った。


「ううん、私はルークの事を待ってみるよ。必要なのは力だけじゃなくて、私達が一緒にきちんと前を向く事にあるから。」

「そうですね、少し私が野暮でした。その方を信頼なさっているのですね。」

「うん。ありがとう、話が聞けて良かったよ。」

「はい、ラピス様によろしくとお伝え下さい。」


私はユキに伝える約束をして、その場をあとにした。

再び意識が戻ると私はベンチで身体を横にして、ルークの膝に頭を置いていた。

私が目を覚ますとベンチに全員集まった。


「うん・・・戻ってきたんだ。」

「ジェシカさん・・・良かった。急に倒れたからびっくりしましたよ。」

「私を見ていてくれてありがとう。」

「いいんですよ、少し休んでいて下さい。」


私は少しルークの厚意に甘える事にした。

こうして膝枕をして貰ったのは数年ぶり・・・お母さんが生きていた時を思い出す・・・


「ルーク、やっぱり手を繋ぐ事には意味があるんだって。魔法の起点となる手、そして制御輪は魔法のイメージを補助する為の脳みたいな物なんだって。」

「!!・・・え、ジェシカさん本当に話を聞けたんですか!?」

「うん。ユキにもよろしくって言ってたよ。」


ユキはあんまり驚いていなくて、むしろ納得している様だった。


「ジェシカ。」

「どうしたの?」

「いや、もしかしたら・・・君は制御輪に・・・。」


何となく状況を察したユキだけど、私は「し〜」と右の人差し指を立ててユキに黙っていて貰う様に念を押した。


「そっか。信じるんだね。もし困る事があれば僕がジェシカを守るよ。」

「うん、頼りにしているね。」


私はユキの頭をゆっくりと撫でた。程よい柔らかさの毛が心地よい。

ベンチで少し休ませて貰っていると、クロエが私達を見つけて声をかける。


「あっ、こんな所に・・・ジェシカさん、少しお話があります。」


少し焦った様子でクロエは私達のもとへ駆けてきた。


(続く)

最後まで見ていただきありがとうございます。

制御輪の仮想人格と話すジェシカ。

その中でジェシカは制御輪に適合している事実を知りますが、ルークへの思いからジェシカはルークを待つ事に決めました。


設定補足:制御輪の仮想人格

元となる人格はソフィアではあるのですが、若干性格は変更されています。

理由は完全なコピーをしてしまうと、自我が発達し過ぎて自己崩壊を起こす可能性がある為。

仮想人格が仮想人格である事を理解はしていればこそ、ラピスとソフィアの関係を心配こそすれ、暴走する事はありませんでした。

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