80、新しい可能性 (2)
ロッソへ向かう定期便
私とユキ、ルークと・・・ウィルが定期便に乗っていた。
なんでこのメンバーになったのか・・・
ノアールとゲンにはレイに付いてもらい、ジンには「気が早いな、新婚旅行か?」とからかわれ・・・アオイとアキラからは「頑張ってね♪」と凄く応援される。
ウィルは私とルークがロッソに行く話を聞いた瞬間に「行く!」と即答した。
・・・という事で、早速王都から出ている定期便に乗っている。
「ウィルさんは王都にいて良かったんですけど?」
「ルークさんこそ、何抜け駆けする気満々なんですか。」
ウィルとルークの間に火花みたいなものが駆け巡る。
ロッソでの事がある前から2人ともそんな感じだけど、最近はウィルが気を回してくれたのかあんまりルークと絡む事無かったんだよね。
「そういえば、どこに行くの?」
「歴史資料館です。」
「ルークさん・・・歴史の勉強でもするんですか?」
「!!」
ルークの返事に呆れた声を出すウィルと驚いているユキ。
「ん?ユキ??」
「もしかして、ルークさん・・・。」
「はい、制御輪を見ておきたかったんです。」
制御輪を見ておく?
制御輪を見ておくだけなら正直ルーク1人で十分・・・いや、一緒にお出かけ出来るのは素直に嬉しいのだけど。
「でも、見るだけならルークさん1人でも・・・」
かゆいところに手が届くじゃないけど、ユキが代わりに質問してくれた。
ルークは少し赤くなりながら
「その・・・ジェシカさんと一緒に見たかったのと、ユキさんに話を聞いておきたくて。」
「ルーク・・・。」
「はいはーい、くさいセリフはほどほどにしておいて下さい。」
「うわっ!何するんですかウィルさん。」
見つめ合う私とルークの間に入ってくるウィルは強引にルークを引き剥がしにかかる。
「ジェシカも大変だねぇ。」
前脚で私の膝をポンポンとするユキ。
「・・・ユキ、何か楽しんでない?」
「うん?それは自分以外の分を見るには楽しいとは思うよ。特にあの男に免疫が無かったジェシカが四苦八苦するのは成長したんだなぁと感慨深くなるよ。」
「はぁ・・・良い性格してるよね。」
とりあえず、私のモヤモヤをユキの頬をツンツンする事で紛らわせる事にした。
定期便はロッソに到着する。
ユキが場所を知っているみたいだから、案内してもらった。
歴史の勉強も兼ねて資料館を歩きながらユキと話をしていた。
「ユキ。」
「どうしたんだい、ジェシカ。」
「エルフ族って分かれたって聞いたけど、何で分かれたの?」
ユキは私の質問にキョトンとした表情で見つめると、真面目に答えた。
「この土地の魔力巡って争ったとは言われているね。ただ、そこに勝ち負けは存在しなかったんだ。よりよい発展を望む部族と最低限の営みを望む部族。前者が国を捨てた部族で後者はセレスティナ王国になる。皮肉にも国を捨てた部族は細々とはしていても生き残ってはいるから国を捨てた部族の方が正しかったのかな?」
どちらが正しかったのか?
ソフィアと仲良くなった今、ユキがそんな事を言っているのはあくまで客観的な歴史視点である。
「そして、これが制御輪だよ。」
ユキはここに制御輪が置いてある事を予想していた。
それにしても、透明で青い宝石の付いた綺麗な指輪で凄く高そうに見えるんだけど・・・
「あ、ジェシカ。制御輪についている石は宝石じゃないんだ。あれは魔力を制御する為の物だから宝石としては全く価値がないんだよ。」
「へぇ・・・でも、ここにあるって良く分かったね。」
「まぁ、宝石の価値はないし青の勇者の私物だった事なんて知らないだろうからね。さらに他の人が使いこなせないなら歴史的価値しかないから仕方ないよ。でも、ルークさんは良く分かったね。」
あらためて思えば、ルークが制御輪の事を知っていたわけでもないのにどうしてここに誘ったのかは不思議で仕方なかった。
「ジェシカさんが制御輪を取りに来た話は聞いていましたし、セレスティナ城は建物と家具以外の復元はされていないんです。だから、その当時の物を保管しているとすればここじゃないかと思いまして。」
その辺はルークの情報網の広さから推測できた様だった。
そして、館長さんに話をつけて制御輪を受け取る事になった。
「館長さん良い人だったね。ほら、ユキに・・・どうしたの?」
「それは君がつけてくれないか?僕はホラ。」
ユキは自分の手を見せる。それは自分はウサギだからつけられないという事だろう。
「・・・ルーク、ユキを頼める?」
「はい。何をするんですか??」
「ちょっとね。すぐに戻ってくるよ。」
私はユキをルークに預けて、街中を走る・・・
「あった。」
目の前に見えるのは宝石店。店に入って装飾の目立たないネックレスを買ってくる。
「はぁ、はぁ・・・」
「どうしたんだい、ジェシカ。息なんて切らしてさ。」
「はい、こうすればユキにもつけられるでしょう?」
「これは・・・」
私はさっき買ってきたネックレスを制御輪に通してユキの首にかけられるようにした。
2人の思い出の物だから、私が持っているよりはユキが持っていた方が良いに決まっている。
「ジェシカ・・・」
「ネックレス自体は高くないから気にしなくていいよ。」
「ありがとう。」
「どういたしまして。」
涙を流すユキの頭をそっと撫でてていると、ルークはユキに質問をした。
「ユキさん、ちょっとお聞きしたい事があるのですが。」
「どうしたんだい、ルークさん。」
「制御輪の事についてお聞きしたい事があるんです。それがお二人をここに誘った理由です。」
ルークは私達を誘った理由を話し出した。
(続く)
最後まで見ていただきありがとうございます。
ジェシカとユキ、ルークにウィルの4人で行く事になったロッソ。
その目的地は制御輪が保管されているロッソの歴史資料館だった。
制御輪を入手し、ルークはジェシカとユキを誘った理由を話す事になります。
設定補足:ロッソ歴史資料館
元々、セレスティナ王国の歴史資料館をロッソが出来る際に復元したものとされている。
なのでエルフ族の部族が分裂した話などの資料なども残っている。




