24、親子の絆は吹雪の様に (2)
ジン達の謁見に私達も同行する。
王様は私達を見るなり感心していた。
「ジェームス卿にも青の勇者の協力要請を頼んでおいたのだが、仕事が早いな。」
「ジェシカ、誰だ?そのジェームス卿って。」
「しっ、今は謁見中だから。後で説明するから静かにね。」
王様の謁見中でもお構いなしのジン。
不敬罪に問われかねないので、ジンには謁見の後で説明する事を約束した。
貴族街で使っていない屋敷を解放してもらい、ジン達と共同で使う事になった。
「ジェシカお嬢様!」
「ナル?どうしたの??」
「ジェシカお嬢様のサポートで来ました。・・・あの、そちらのかっこいい男性はどなたですか?」
ナルの指摘で隣を向くと、いつの間にかジンが隣にいた・・・
「お、そこのお嬢さんは分かっているじゃないか。俺はジェシカのこい・・・イテテ、何するんだよ。」
「いや、変な事言いそうだから。ナル、この人は白の勇者のジンさんだよ。」
「白の勇者様ですか。ジン様、ジェシカお嬢様の事をよろしくお願いしまひゅ・・・おひょう様、何ひゅるんですか・・・。」
「いや、ナルが変な事を言いそうな気がして・・・。」
私は変な事を口走ろうとするジンとナルを止めた。
屋敷の広間に一同集まった。
私とユキとシノブの青のメンバーとジンとアオイとアキラの白のメンバー。
私達を見て、アオイとアキラが首を傾げている。
「アオイ、アキラどうしたの?」
「この間一緒だったシノブ君は?」
・・・あ、紹介しないとね。
「あの時はずっと人間に変身してたからね。シノブ、挨拶しようか。」
「アオイさん、アキラさん今回もよろしくお願いします。」
シノブは梟の姿であらためて挨拶をした。
「わぁ、綺麗な羽。ジェシカちゃんとお揃いだね。」
「美少年も良かったけど、かっこいいね。」
アオイとアキラにも今の姿を受け入れられていた。
「シノブ、分かっている人にはちゃんと分かるんだよ。」
「うん。」
あらためてシノブも認められている事が分かって喜んでいる様だ。
「で、ジェシカ。忘れているかもしれないが、ジェームス卿って誰なんだ?」
「・・・忘れてくれるかと思ってたのに。」
「甘いな。俺の愛はその程度では・・・。」
「最近まで会った事のないお父さん。」
あえて、会話名の中でさらりと言うと
「はぁ!?」
「えぇぇぇぇっ!?」
「えっ!?」
・・・やっぱり驚かれた。
事情を軽く話すと3人はそれぞれ納得する様子を見せていた。
同情して欲しいわけでもないので、その対応はとてもありがたかった。
お互いに少し近況報告をしあった後
私はジンと話しながら北門へ移動する。
「まずは騒がしくなった理由の調査からかな。」
「そうだな。・・・といっても、発見された魔物が本来なら更に北に進んだ山に生息するスノーウルフの大群だから、山の調査になるな。」
「あ、そこまで分かっているんだ。」
「まぁな。ジェシカ達にばかり先行させるのも何か悪いし、今回は砂漠の国の時みたいに突っ走るなよ。」
うっ・・・ジンに痛い所を突かれる。
シノブとテイムコネクトしてササッと行く気満々だったので。
ちょっと突っ走り過ぎてたかな。
北門に到着すると緊張感が漂っていた。
「これがスノーウルフの資料ですね。」
対策本部に入ると資料を渡された。
北の門の街には対策本部が作られており、王都のギルドから資料が提供されていた。
スノーウルフは群れを成す氷の魔法を使ってくる狼のモンスターで、大きさは1m前後の比較的小型だが群れを成す事が多い。
はぐれ個体が周辺の森に出る事はあるらしいが、基本的に山を生息地にしている為群れが周辺の森で出る事はない。
ところが、最近山よりの王都周辺の森で群れが確認されており
先ほど外壁近くまで来ていたため緊急措置をとったそうだ。
スノーウルフの脅威は群れでの行動と氷の魔法。
「氷の魔法って厄介でな。アキラの使っていた氷結魔法覚えているか?」
確か、遺跡探索でアキラが使っていた・・・
「あの時戦っていた蛇の動きが少し緩くなっていたよね。」
「よく見ているじゃないか。理屈は良く分からんが氷の魔法を使うと、空間に作用してその魔法の効果内だと運動能力が低下するんだ。」
そんな効果が・・・あれ、そうなると・・・
「察しがいいな。ジェシカ、お前とスノーウルフは相性が悪い可能性が高い。」
先行を禁止したのは私の事を思ってだったんだ。
少しジンの心遣いに感謝としていると、ユキがジンに話しかけた。
「ジンさん。」
「ん?どうしたユキよ。」
「ジェシカの持っている青の武器なんだけど、魔法も切れる剣なんだ。」
「物理的な切断って事ではないと?」
「そうだね。」
・・・え?
「ジェシカも「え?」って顔しないの。忘れたの?以前に状態異常を打ち消した事。状態異常の他にジンさんの鑑定も打ち消していたでしょ。あれはジェシカにかかっていたものを剣で切ったんだよ。」
「ほう、ジェシカの青の武器にそんな効果が。そうか・・・じゃあ決まったな。」
ジンが私の肩に手を当ててニコリと笑う。
「え・・・。」
「今は王都の防衛の為に少しでも情報が欲しい。お前の得意分野を最大限に生かそうではないか。」
「それって、もしかして・・・。」
「ジェシカ、スノーウルフを含めた周辺の森と山の情報を収集してきてくれ。」
えぇ・・・
「さっきは先行するなよって言ってたのに。」
「いや、突っ走るなと言ったんだが。それに対策ができるなら話は別だ。ジェシカ、お前の情報収集能力が必要なんだ。」
「分かった。こっちは任せたよ。」
私達は情報を求め、山を目指す。
(続く)
最後まで見ていただきありがとうございます。
今回は一旦、ジェームス卿の件はおいて王都防衛の為の情報収集に出ます。