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異世界でも恋愛は出来ますか?  作者: 香坂 悟
雪の章
22/309

22、邂逅は風雪の前に

定期便は発着場のある南門へ向かう。

巨大な外壁は相変わらず威圧的で、飲み込まれる雰囲気すら覚える・・・

私の戻りたくない意思の表れなのだろうか?


「僕たちがいるから。」

「大丈夫。」


少しためらっている私にユキとシノブが声をかける。

ちょっと勇気出てきたよ。


「ありがとう。ユキ、シノブ。」


ユキとシノブの頭を撫でながら、定期便は南門の発着場に着いた。

南門側は交易の中心となっていて昔と変わらず活気に溢れている。

私は思う事があってユキとシノブに提案する。


「ユキ、シノブ。目的地に行く前に寄り道していっていいかな?」

「あぁ、ライザさんのお墓参りだね。」

「問題ない。」


ユキは分かっているみたいで、シノブも了承してくれた。

まず、母のお墓参りに行きたかった。ちなみにライザは母の名前である。

お店で花を買って母の墓のある東門の街へ向かう。


王都では取れる岩石の関係か黒っぽいレンガで作られる建物が多い。

街並みはあんまり変わっていないけど、所々変わっている個所もあり・・・


「あの時とは違うんだよね・・・。」


母が亡くなって、この王都が嫌いで勢いに任せて飛び出したけど

あの時に感じていたものはいつの間にか消えていて・・・

私は思わずつぶやいていた。


「時間は流れているんだね。」

「うん。」


ユキの言葉に頷きながら街の景色を見回す。

小さい頃には見えていない景色、流れていた時間をあらためて感じる。



東門の街に着いた。

東側もやはり時間の流れを感じる。

ただ、懐かしさよりも虚無感に近いものだった。


「ここもやっぱり変わるよね・・・。」

「あれ?もしかして、ジェシカちゃんかい?」


振り向くと、ここに住んでいた時によく利用していたパン屋のおじさんだった。

母や私に普通に接してくれた人だ。


「はい。おじさん、お久しぶりです。」

「ライザさんが亡くなって以来かぁ、元気そうで良かったよ。」

「ありがとうございます。今は街に住んでまして、今日は母のお墓参りに来ました。」

「そうかい。じゃあ、驚くかもな。おっと、ここで足止めしちゃ悪いな。」


おじさんはそう言うとお店に戻っていった。

驚く?何の事だろう・・・



「え・・・」


墓場に来ると、おじさんの言った意味が分かった。

母が埋葬されていた墓は墓場と共に整備されていた。

雑草は少し見えるけど、定期的に手入れされているのだと思う。


「綺麗にされている・・・。」

「そうだね。」


その当時を知る私とユキは驚いている。

墓標の周りは雑草だらけで埋めて数か月たてば雑草で墓標を探すのも一苦労

・・・と言えば通じるだろうか。

つまり、誰も手入れしていないから荒れ放題なのである。


「誰かは分からないけど、ありがとうございます。」


誰のおかげかは分からないけど、素直にお墓を整えてくれた方に感謝をして

私たちはあらためて母の墓にお参りをする。


王都を離れて色々あった。

冒険者として街で仕事をしたり、色々な人と知り合いになったりと

私はお墓の前で近況の報告をしていると・・・


「ライ・・・ザ・・・?」


後ろから少し戸惑った男性の声が聞こえる。

私が振り向くと、とても優しそうな表情の男性が立っていた。


「あの・・・何か・・・」

「!!」


私の声に男性はハッとなり


「・・・すまない。気のせいだったようだ。」

「そうですか。」


男性は早々に去っていった。

一体何だったのだろうか・・・



「墓場の整理の事かい?ライザさんが亡くなった後ぐらいかな、国から王都周辺の墓場の整備と定期的な手入れがされて、同時期に孤児への支援もあってね。ここも前より住みやすくなったんだよ。」

「そうなんですね。おじさん、パン美味しかったです。」

「まいどあり。よかったら、またおいでよ。」

「はい。」


お墓参りの後、パン屋のおじさんから聞いた話だとお墓の整備は国家事業の様だった。

噂ではどこかの貴族がその国家事業に大幅な財力を提供したなんて言われている。


目的地に行く前にふと・・・


「そういえば、王様に挨拶とかしなくていいの?」


とユキに言われる。


「え?」

「『え?』じゃなくてさ、ジェシカって今は青の勇者なんだから。」

「あ・・・。」


うん、ちょっと忘れかけてた・・・ちょっとね。

お墓の件もあるから、きちんと挨拶しておきたいと思った。


「服装とかは問題ないかな?」


あらためて、ユキとシノブに確認をして貰い王城に向かった。

城門で謁見の手続きをすると、若干戸惑いを見せていた。

確かに急ではあるので、後日改めて伺う話をしようかと思っていたら謁見の許可が下りた。


「青の勇者ジェシカよ。良く参られた。」


王様にきちんと挨拶をした後、母の墓へのお礼を述べた。

その後、王様が不思議な事を言った・・・


「それにしても・・・謁見は3日後と伺っていたのだが・・・。」


あれ??もちろん、王城に入るのは初めてでそんな手続きをした覚えも無い。


「ご無礼を承知でお伺いしたいのですが、それはどういう事なのでしょうか?」


王様の話によると私の父に当たるジェームス卿が事前に謁見の手続きをしていたらしい。

私が来るかも分からないのにわざわざ謁見の手続きなんてやるのだろうか?

真相はまだ見ぬ父から話を聞く必要があった。


(続く)

最後まで見ていただきありがとうございます。

今回から王都でのお話【王都編】が始まります。

ジェシカと父ジェームス卿との確執がどうお話に関わってくるのか・・・

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