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異世界でも恋愛は出来ますか?  作者: 香坂 悟
月の章
195/309

93、もう一つの決着

私達が王都に戻ると、王都は大きく盛り上がっていた。

北門から王都に入ると、まるで南門から入ったみたいに人がたくさんいて私達の帰りを祝福していた。

入り口で馬車に乗り、王城へと向かう。


「勇者様が帰って来たぞ~!」

「魔王軍撃退ありがとう!」

「勇者様バンザイ!」


色々と声が聞こえてくる中・・・


「どうしよう・・・。」

「とりあえず、手を振っておきましょうか。」


私が戸惑う中、ルークが手を振る事を提案したので私達が手を振ると凄い盛り上がりを見せていた。



王城に着くとそのまま謁見の間へと直行し、謁見の間には既にアキラとアオイも含めてジン達が待機していた。

そして、王様が玉座につくと挨拶が始まる。


「皆の者ご苦労であった。特にジェシカとルーク、少人数でありながら魔王四天王の最後の1人を討伐し、魔王軍を撃退した事大義であった。」

「勿体なきお言葉。」

「今日は祝いだ!皆で勇者達を祝福するぞ!!」


王様の一声でその日はパーティーとなった。


「ユキ、どうかな?」

「うん、似合っていると思うよ。普段ドレスとか着ないから見違えるね。」

「それにしても、良かったのか?私達も参加して。」


場違いを指摘するグラースだけど、みんながいなければ切り開く事が出来なかったのだから

・・・というか、ユキとグラースが参加できないなら私はサボっている。


「もちろんだよ。ユキもグラースも活躍したんだから参加していいんだよ。」


ユキとグラースの頭を撫でながらニッコリとする。

すると、扉がノックして父が入ってきた。


「ジェシカ・・・綺麗になったね。ライザにも見せてあげたかったなぁ・・・。」


ドレスは父が手配してくれたもので、アオイとアキラとレイにも手配してくれた様だ。

私が着ている赤のドレスは昔母が着た事のあるドレスでサイズはピッタリだった。

ドレスのデザインとしては少し古くなるらしいけど、私がこれが良いと言って着ている。


「ちょ、ちょっとお父さん。泣くほどの事じゃ・・・」

「すまないね、この年になると涙もろくて。この子達もありがとう、ジェシカを守ってくれて。」


父がユキとグラースの頭を撫でると気持ちよさそうに反応していた。


「これからどうするんだい、ジェシカ?」


これからの事を父に聞かれる。・・・正直な所、何をしようとしているのかは考えていない。


「特には考えていないんだ。また冒険者をしながらいろいろ見て回るのもいいかもしれない。」

「そうか。私としては家を継いでほしいけど、ジェシカの幸せを考えれば貴族のしがらみはライザも望んでいないだろうから。」

「ありがとう、お父さん。」


今はまだ考えたい事もあるから良いよね・・・

会場に入ると、ジンがバッチリと決めていて周りをキョロキョロしている。

私が声をかけると、ちょっと挙動不審な動きを見せていた。


「よ・・・よぉ・・・その、見違えてしまったぞ。」

「やっぱ場違いだったかな?」


私はドレスをひらひらさせながら、自分の身なりを見直していると


「綺麗だぞ、ジェシカ。」

「う、うん・・・ジンも決まっているね。」

「あ、ジェシカちゃん来たんだね。」


声のする方向を向くと元気そうに手を振るアオイと何か恥ずかしそうにするアキラとレイのドレス姿があった。

最近の社交界?ではミニドレスでヒラヒラしていないものが主流らしくて・・・アオイは黄色、アキラは黒、レイは水色とそれぞれ着飾っていた。


「あれ?何でアキラとレイは恥ずかしそうにしているの?凄く似合っているのに。」

「私はこういうのダメなのよ。」

「アキラと同感。」


勿体ないなぁ・・・と思いながら、こっそりとレイに耳打ちする。


「ユーゴさんに見せてあげられないのは残念だなぁ。」


実はユーゴも招待していて、来る事は分かっていたんだけどあえてこう言ってみると・・・


「あの、ジェシカ・・・」


レイが耳打ちし返す。


「いや、ユーゴも来るんだよね?分かっているよ。ジェシカの武器職人だから当然でしょう。」

「分かっていたかぁ、その通りだよ。レイもドレスが似合っているし、この機会に仲直りをすればいいんじゃない?」

「それは・・・。」


みんな揃った事で王様が音頭をとり、パーティーが開催される。


凄いと言えば、アオイの適応力とガード性能の高さだろうか。

寄ってくる若い貴族の男性を適度に盛り上げながらも、自身やアキラに手出しできない様に立ち回っている・・・そこは教会で鍛えられたのだろうか?


私は、ジンの近くにいたのと・・・グラースの鼻が利くから大体の人は軽く声をかける程度で終わる。


そしてレイはユーゴが中庭に連れて行っていた。


「2人とも、頑張ってね・・・」


私は2人の行く末を静かに見守る事にした。


ーーー


パーティー会場・中庭

パーティー開始早々に、ユーゴは左手でレイの手を取り中庭へ出ていた。

右手には包みを抱えて。


「どうしたの?ユーゴ。」


レイの言葉にユーゴは少し取り乱した後、レイに謝った。


「レイ・・・その、悪かったな・・・俺が、周り見えていなくて。」

「いいよ。ジェシカから話は聞いているから。私も考えていなかった。」

「今日はお前に渡したい物があって。」


ユーゴは包みを渡した。


「開けていいの?」

「あぁ。」

「これは・・・ユキ君?」


包みから出たのはウサギのぬいぐるみだった。

さすがに毛皮は使ってないから触感は違うけど、体格などの造形はしっかり作り込まれている。


「へぇ・・・嬢ちゃんの言う通り、動物好きなんだな。確かに嬢ちゃんと一緒にいるユキを参考にした。」

「それは分かるよ。ユキ君の表情まで作り込んでいるから。」

「そこまで分かってくれると嬉しいな。嬢ちゃん達が魔王軍を撃退してくれたおかげで、俺も安心して実家に帰ろうかと思ってな・・・レイ、俺と一緒にいてくれないか?」

「えっ!?ユーゴ、鍛冶ギルドは?」


ユーゴのプロポーズよりユーゴの仕事を心配するレイ。


「あぁ、武器作りは辞めようと思ってな。鍛冶といっても武器や防具だけじゃない。包丁や鍋を打つなら実家で出来るしな。それに・・・」

「それに?」


実はジェシカがユーゴを招待する時に“のばら”を見せていた。


「嬢ちゃんに“のばら”を見せて貰ったんだ。曰く付きの鍛冶一族とは言われて来たが、“のばら”はきちんと手入れされていた。武器を見れば分かるんだが、持ち主は苦悩していた・・・呪いではなかったんだ。つまり、曰く付きの鍛冶一族と付いたのは俺達の在り方だってあらためて思ったよ。」

「そっか・・・ここからはじめるんだね。」


レイは目を瞑り少し考えてから


「よろしくお願いします。」


そう言うと、ユーゴの手を掴んだ。


(続く)

最後まで見ていただきありがとうございます。

魔王軍を撃退し、王国でのパーティーに参加するジェシカ達。

そして、ジュリアとの決着はユーゴの仕事への決着に繋がります。


設定おまけ:ストーリー分岐

雪の章では神殺しを復活させたモニカを追うことになるのですが、月の章では封印されている段階で神殺しを消滅させている為全体的に丸く仕上がってます。

比較的に会話パートが多いのもそういった理由です。

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