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異世界でも恋愛は出来ますか?  作者: 香坂 悟
月の章
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90、交差する思いと剣 (3)

集結する魔王軍の報告を受け、アオイとアキラを除く勇者が王城の謁見の間に集まっていた。


「皆の者、よく来てくれた。報告の通り、魔王領にある魔王城にて動きがあった。おそらく、この戦いで決着がつくだろう。そこで、我々王国は軍をあげて魔王城に攻め込もうと思っている。」


王様はこの機会に決着をつけようと考えていた。

実際モニカに世界征服の意思は無くて、残りの四天王もジュリアのみだからある意味理に適っている。

だけど、私が前に出た。


「失礼を承知で言わせて下さい。魔王軍は私達の手で決着をつけます。」

「お主はクローク家の・・・理由を聞かせて貰えるだろうか?」

「はい。現状、魔王自身に世界征服の意思は無いのですが、四天王の力は強大です。全力で魔王軍に攻め込めば魔王領の平定も出来るかもしれませんが、罠である危険性もあります。」


私の言葉に王様は顎に手を当て


「罠というと?」

「はい。魔王領と王国にはそれなりに距離があり、王国軍を動かすとなれば更に時間がかかると判断します。そうした場合、王国周辺に伏兵が配置されていれば守りが薄くなった王国が危険になります。」

「ほう、それではどうすると?」

「王都の守りには白と黒の勇者を、魔王城には私と赤の勇者で決着をつけようかと思っています。それなら伏兵に対しても十分に対応は出来るでしょう。」


王国としても魔王軍の撃退が主な目的で、魔王領に王国軍が攻め込んでしまえば戦争が加速する可能性が高い。

私とルークで攻めるのも、あくまで私達はこの世界の人間だからこの戦いが終わっても魔王軍に対しては十分な牽制材料になる。


「分かった。ジェシカ、ルークよ魔王城攻略頼んだぞ。」

「はい。」


こうして、王様との謁見は終わり準備をする為に城を出る。

ジンには納得できなかったみたいで、私に声をかけた。


「ジェシカ!どうして、そんな事を。」

「魔王領の人達が世界征服を考えているとは思わないし、お互いに距離感を保つ為だよ。」

「それなら俺達で・・・」


私は首を横に振る


「ダメなんだよ。ジン達はこの戦いが終われば強制的に帰還されるかもしれない。そうなったら、ジン達がいなくなった途端に戦争が加速する可能性があるから。そうさせない為に私とルークで制御するんだ。」

「ジェシカ・・・。」

「だから、心配はしないで。あと、レイは後悔しない様に向き合ってあげてよ。」

「・・・分かったよ。ジェシカ、無理はしない様にね。」


私はジンとレイにそう話すと、急いで準備をする為に走り出した。



家についた私はユキとグラースに声をかける。


「ユキ、グラース。この戦いで全部終わらせるよ。」

「ジュリアと決着をつけに行くんだね。」

「あぁ、任せておけ。」


ユキもグラースも私に追及はしなかった。

無理してない?とか言われそうだったんだけど・・・



しかし、意外な所からそのツッコミが来る事になる。


「ジェシカさん、無理していませんか?」

「ルーク・・・無理に付き合わせてごめんね。」


私がルークに謝ると、それに対してもツッコミをする事になる。


「違いますよ。僕がジェシカさんに付き合う分は問題ありませんし、むしろ大歓迎です。ただ、ジェシカさんがそうしている理由はジンさんと関係あるんじゃないですか?」

「・・・。」

「僕たちは転生者で戻る場所はここにしかない。だけど、ジンさんやレイさんは戻れる世界がある。無理に引き留めたくないから距離を取ったんですよね。」

「そうだよ。私にはジン達を止める力もなければ、権利もない・・・。」


ルークは溜息をつきながら私に


「ふぅ・・・これだけ思われるジンさんが羨ましいですよ。僕と初めて会った時もジェシカさんが『私だけを見てほしい』と一言でも言ってくれれば・・・」


私とルークの出会いはシンプルで、東の森で調査クエストをしていた私がスライムに囲まれていたルークを助けたというものだ。

その後で、食事をしてルークに告白されるものの・・・ルークも重婚願望を持っていて、それを知った私がルークを振ったという流れだった。

あの時は本当に男性になれていなくて、今となってはルークとも普通に話は出来ている。


「あの時はごめんね。私もルークも異世界転生した身だけど、生まれや育ち方で価値観が変わったんだよ。」


後で分かった事だけど、ルークは王都の南地区を管理するハトリック家の跡取りだから重婚自体は当たり前だし価値観は違って当たり前だった。

この世界ではあんまり科学が発展していないから、重婚に対する認識は若干前世とは異なるけど・・・

魔力なんて物もないから同じ価値観では語れない。


「まぁ、今でもジェシカさんからの良い返事は待っていますからね♪」


笑顔で返すルークに対して、私は少し引いた感じで返す。


「その、私に対して好意を持ってくれるのは嬉しいんだけど、このタイミングで言うのはどうかと思うよ。もちろん、そういう口説き方もあるんだろうけど私はちょっと・・・」

「分かってますよ。そういう融通の効かない所も含めての話ですから。」

「・・・今回は今までできつい戦いになるだろうから、よろしくね。」


私が右手を伸ばすと、ルークは両手で握手する。

そして、魔王軍との最後の戦いが幕をあげる。


(続く)

最後まで見ていただきありがとうございます。

ジンから戦いが終わったら元の世界に戻ると聞いたジェシカは集結する魔王軍に対してジェシカとルークの二人での戦いを王様に進言します。

ただ、それは個人的な感情だけではなくジン達がいなくなった時の事を考えたもので

ジンは納得出来なくても受け入れざるを得なくなります。

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