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異世界でも恋愛は出来ますか?  作者: 香坂 悟
月の章
189/309

87、裏切りの真相

次の日

私は1人、父の屋敷に来ていた。

理由はロッソでジュリアと戦った時に感じた母の剣に似たもの・・・おそらく、父は何か知っていると思ったので話を聞く事にした。


「ジェシカ様ですね、アルマから話は伺っています。」

「ありがとうございます。」


事前にアルマから話を通して貰っていたので、そのまま父の書斎に案内される。


「良く来てくれたね、ジェシカ。今日はどんな用事かな?」

「実は母の事で・・・」

「そうか、寂しかったんだね・・・」

「え?」


話を聞こうとしたら、父が急に涙ぐみだした。


「良いんだよ、お父さんにいっぱい甘えても・・・」


誤解なので、すぐに私は訂正をする事にした。


「そうじゃなくて、お母さんの剣術について聞きたかったんだよ。」

「それは恥ずかしい誤解を・・・それならゲオルグさんに尋ねると良いよ。ライザの剣術はゲオルグさんに教えてもらったって聞いているから。」

「ゲオルグさん?」

「あぁ、王都で剣聖と呼ばれていた方でね。今は現役を退いて北地区の外れに住まわれているらしいから、紹介状を書いてあげるよ。」



私は父から貰った紹介状を手に北地区の外れにあるゲオルグの家に来ていた。


「ここが剣聖さんの家・・・。」

「!!・・・ライザちゃんっ!?」


玄関で家を見上げていると声がしたので振り向くと、年配の男性が立っていた。


「初めまして、私はライザの娘のジェシカといいます。あの、ゲオルグさんですか?」

「そうか、ライザちゃんの娘かぁ・・・確かに私がゲオルグだよ。私の家に来ていたという事は私に用事があるんだよね。」

「はい。父からこれを預かっています。」


ゲオルグは私から紹介状を受け取ると、その場で中身をあらためた。


「なるほど・・・ライザちゃんは5年前の流行病で・・・ジェシカちゃんだったね。ここでは何だし、家で話をしようか。」

「はい、ありがとうございます。」


家に通された私はそのまま流れで席に案内された。


「急な訪問で大変失礼しました。」

「気にしなくていいよ。青の勇者として頑張っているって紹介状に書いてあったし、ライザちゃんの娘なら私にとっては親戚の子供みたいなものだよ。」

「ありがとうございます。実はお聞きしたい事がありまして・・・先日、ロッソで魔王四天王のジュリアと戦いまして。」

「!!」


私の話にジュリアという言葉が出ると、ゲオルグは驚いている。


「・・・それは彼女の剣術がライザちゃんのものと似ているって事だよね。」

「はい。」

「正確に言えば、彼女の剣術と私達の剣術が流派が同じになるからだね。」

「そうだったんですね。彼女は何で王国を裏切る事になったのですか?」


ゲオルグは私の言葉を聞いて、額を右手でおさえる。


「その話はどこで?」

「知り合いの鍛冶職人からです。彼女の剣を打ったのが彼の先祖で・・・」

「そうか、それなら話しておかないといけないね。彼女が王国を裏切った理由。逆なんだよ、先に王国が彼女を裏切っていたんだ。」

「・・・聞かせて下さい。」


私は聞く必要があると思った。勇者としてもだけど、私がきちんと彼女と向き合う為に。

その表情を見たゲオルグはどこか満足そうな笑みを浮かべていた。


「彼女は凄腕の剣士でその当時の王国でも1、2を争うほどの腕前だった。でも、彼女は単純に剣術が好きで、戦う事・・・特に人を斬る事をしようとはしなかった。」


剣を交えて分かったのは彼女が剣を楽しんでした事。

だからこそ、私も剣を通して楽しめていたのだと思う。


「その当時の流派には3人の弟子がいて、彼女には兄弟子と弟弟子がいたんだ。そして、彼女は兄弟子と恋仲だった。王国は戦力欲しさに、兄弟子を軟禁して彼女を無理矢理戦わせた。」

「・・・。」


これ、王国が裏切られても仕方ない様な気がする。

だけど、ゲオルグは更に続けた。


「それでも、彼女は王国の為に戦い続けたのだが・・・ある日、彼女に王国を裏切らせる決定的な事が起きてしまう。兄弟子が彼女の負担にならない様にと自ら命を断ってしまったんだ。彼女は兄弟子に剣士として全うさせなかった事を怨み、魔王軍にくだる事になった。」

「それは・・・」


私は声に出せない怒りを感じるものの、500年前の話で私にはどうする事も出来ない。


「鍛冶職人の方には迷惑をかけてしまったが、彼女は彼女で理由があったんだよ。」

「はい。でも、その知り合いの方は分かってくれると思います。」

「その人の事を信頼しているんだね。」

「はい。」


私は笑顔で答えると、ゲオルグは急に立ち上がりタンスから木箱を取り出した。


「彼女にこれを渡して貰えないだろうか?」

「これは。」

「彼女に送るはずのペンダントだよ。話から分かるとは思うけど、私達は弟弟子からの流派で彼は兄弟子と彼女の事を祝福していたんだけど、結局渡す事が出来なくて・・・それは彼にとって心残りでね。流派の継承の際にこの話とペンダントを受け継ぐ様になったんだよ。」


なるほど・・・だから、500年経った今でもきちんと語り継がれて来たのか。


「でも、いいんですか?」


私の言葉にゲオルグは静かに頷いた。


「本来なら私が渡しに行くべきなのだが、既に引退の身。今いる弟子達も彼女と戦えるとは思えなかった。だが、そんな時に青の勇者でライザちゃんの娘のジェシカちゃんが来てくれた。これはきっと運命だと思うんだ。」

「・・・はい。きっと彼女に渡しますね。」

「ありがとう。」


ゲオルグから木箱を預かり、私が部屋を出ようとすると声をかけられる。


「今日はジェシカちゃんにお願いする形になったけど、勇者の役目が終わった時はあらためてライザちゃんの話をしよう。」

「はい、家族も聞きたいと思いますのであらためて伺わせていただきます。」


私は一礼すると、家に向かって歩き出した。


(続く)

最後まで見ていただきありがとうございます。

ジュリアが王国から魔王軍へ寝返るきっかけ・・・

彼女が剣士ゆえに恋人に剣士として全うさせなかった王国への怨みから来るものであった。

ゲオルグからペンダントを預かり、彼女との戦いへと進みます。

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