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異世界でも恋愛は出来ますか?  作者: 香坂 悟
月の章
179/309

77、ロッソ防衛戦 (2)

「今日から助手で来たんだろう?」


エルフ族の男性は私を見て首を傾げながら聞いてきた。

助手・・・あ、勘違いなんだ。

今回は潜入調査なので、大立ち回りは控えないと・・・


「失礼しました。こちらですね。」


私は言う通りに赤い液体の入った三角フラスコを手に取って、男性に手渡すと


「ほう・・・三角フラスコが何なのか分かるのだな・・・」


あ、しまった・・・と思ったら意外な反応をされた。


「今回の助手はなかなかじゃないか。強いて言えば白衣が足りない。」


白衣かぁ、流石に用意はしていなかった。

白衣といえば、科学者にとっては戦闘服みたいなもの。

魔王軍の拠点で実験室があるなんて予想外だった。


「白衣ですか?あ、科学者っぽくていいですよね。」

「!!」


ガシッと私は両肩を掴まれた。


「え、あの・・・???」

「コホン・・・おっと、すまなかった。」


戸惑う私に男性は手を放して咳ばらいをする。


「以前の助手達はその辺が全く分かっていなかったから、凄く感動してな・・・。」

「はぁ・・・。」

「まぁ、気にしないでくれ。」


三角フラスコに入っている液体をピペットで少量吸い取り、手元にあったフラスコに少しずつ混ぜていく

元々入っていた緑色の液体に、赤の液体が混ざりどんどん青くなる不思議な光景に私はつい見とれていた。


「ん?興味があるのか??」

「不思議ですけど綺麗ですよね。興味が沸きます。」


私の言葉に男性はうんうんと頷くとフラスコの液体を見せてくれた。


「そうか・・・この液体は元々攻撃力をあげる薬だが、私は“攻撃力を極限に高めつつ、知性を失わせない”薬に改良しようとしている。そこで君に質問だ。攻撃力を極限に高めると知性や失うデメリットを出てしまうのだが、私がなぜ改良しているか分かるかな?」


ふむ・・・改良だけならそれだけで価値はあるのだけど、それだけではないはず。

ここは素直に答えていいんだよね。


「そうですね。仮にですが、攻撃力を極限に高めて知性を失う薬をA薬とした場合・・・使う用途が限られてしまう事と、相手がA薬の情報を知っていた場合に対策が容易になってしまう事が挙げられます。」

「ほう。」


更に私は話を続ける。


「効果が発動すれば弱点はいずれ見抜かれます。戦いとは先が読めないものだから先を読まれる事はデメリットでしかありません。つまり、A薬は欠陥品なので改良の余地は十分にあると判断できます。」


男性は目を見開いて私を見る。


「きちんと悪い所を指摘した上で改良の必要性を説くか。悪くない回答だが、肝心な部分が欠けている。」

「肝心な部分ですか・・・」


私はその肝心な部分が聞きたかった。何なんだろう・・・


「格好悪いじゃないか。」

「はい?」

「科学者がそんな薬を飲んだとして・・・元が貧弱なら増強される能力もたかが知れているし、科学者はその知性あってこそだろう。」


確かに、ヒョロヒョロの科学者が筋肉ダルマになってもバランスが悪いだけ・・・


「・・・ハッ!!」


思わずイメージが出来てしまった私は自分自身に驚いていた。


「ふむ。君は科学者の素質はありそうだな、気に入った。遠征中で手持ちが少ないが、好きな本を一冊あげよう。共に科学の道を進もうじゃないか。」


男性は凄く喜んでいて、私に本を一冊くれるらしい。

本かぁ・・・あ、そうだ。


「あの、魔道具・・・例えばアクセサリーの本とかありますか?」

「ふむ、アクセサリーか・・・確かこの辺りに・・・お、これだこれだ。」


男性は大きな箱から一冊の本を取り出して、私に手渡した。


「これなら君の要望に応えられるだろう。」

「ありがとうございます。」

「君の話を聞いていたら、少し集中したくなった。今日はこの辺で良いだろう、お疲れ様。」


何か思いついた事があったみたいで、私はテントを出る事になった。

それから、拠点の情報を調べながらロッソに戻る。


ーーー


30分後、ロッソ魔王軍の拠点

男性が実験室で本を読んでいると兵士がテントに入って来た。


「ハァハァ、し、シグマ様・・・遅れて大変申し訳ございません!!」

「遅れる?何の事だ?」


兵士の焦る声に男性は首を傾げる。


「本日より私が実験の助手で来る予定でしたが、寝坊してしまいまして・・・。」

「実験なら終わって・・・!!」


男性は兵士の話を聞いて状況を悟った。

テントに入って来たのは助手ではないとすると・・・それはアルカーナで勇者側を勝利に導いたと言われているとある女性冒険者の存在。

そして、彼女は青の勇者になったと聞いている。


拠点侵入だけではなく、ここまで来るとは思っていなかった男性は気分の高まりを隠せなかった。


「クックック・・・」

「どうされたのですが、シグマ様。」

「何、今回のロッソ侵攻は楽しくなりそうだなと思ってな。実験については終わっているから助手は不要だ。さて、寝坊の事については気分が良いから許そう・・・代わりに、グランナディアに侵攻しているジュリアの戦況について報告してくれたまえ。」

「ハッ!直ちにっ!!」


兵士は男性の声に直立し、状況確認の為に一旦テントから出る。


「あれが青の勇者か。悪くない・・・全力をもって答えるとしようではないか。」


男性の名前はシグマ・・・魔王四天王の1人で“見静”の二つ名を持つ。


(続く)

最後まで見ていただきありがとうございます。

テント内でエルフ族の男性と実験の話をジェシカ。

何か気に入られた様で1冊の本を貰いました。


・・・それが魔王四天王の1人のシグマと知らず。


設定補足:シグマ

魔王四天王の1人で体術(太極拳に似た武術)と風の魔法を使いこなす。

二つ名は「見静」。読みはけんせいで、モニカの配下になる前は拳聖として名を馳せていた事もあるが、モニカの圧倒的強さと好奇心に感銘を受けて魔王軍に入る。見静は四天王を拝命する際にモニカが付けている。

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