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異世界でも恋愛は出来ますか?  作者: 香坂 悟
雪の章
16/309

16、閃光は宵闇を断って (2)

少年は剣を収めると私たちに近寄った。


「君、もしかして青の勇者じゃない?」

「はい、私は青の勇者ジェシカ。」


どうやら、お互いに勇者である事は理解したようだ。

シノブを抱き上げてから、さらに話を続ける。


「隣にいるウサギはユキ。そしてこの梟がシノブ。」

「私の名前はレイ。まずはその子を見てあげなよ。話はその後でいいよ。」

「うん、ありがとう。」


私は村に戻るとシノブを宿屋に連れていき、ベッドに寝せる。

魔力枯渇による気絶だと思う。幸い命に別状はないけど、復帰は1日様子を見る必要はある。


「シノブ・・・。」


どうしてこうなったのか・・・


「私の・・・せいだ・・・。」


シノブが今まで人間形態を解かなかったのか。

理由は分かっている。


解かなかったのではない、解けなかったのだ。

母親がいなくなり一人になった所に私と契約する事になって、私たちとの繋がりを失いたくなかったから無理に人間形態を続けていた。少し考えれば分かるはずなのに、私は何浮かれていたのだろう。


「ごめんね。シノブ・・・ずっと無理させちゃって。」


情けなくて、分かってあげられなくて、私は泣くくらいしかできなかった。

ユキは黙って様子を見ていた。



部屋のドアがノックされた。


「はい。」


私は涙を拭い、ドアを開ける。


「あ、邪魔しちゃった?」


風呂上がりみたいでさっぱりしたレイが立っていた。

入り口で待っていたレイは私の赤くなった目を見て気を遣う。


「ううん。あの黒龍の話だよね。どうぞ、入って。」

「お邪魔するね。」


私は椅子を持ってきてレイに勧める。

そして、私はベッドに座った。


「シノブ君だっけ、大丈夫だった?」

「うん、魔力枯渇だから様子見にはなるけど。」

「そっか。」


シノブを心配してくれるレイ。出会ってからもだけど、やはり印象がちょっと違う。

アルカーナでの戦いに不参加だった理由が分からない。


「そうそう、アルカーナでの戦いは活躍したんだってね。あのツンツンバカと協力したくなくてジェシカ達に任せてしまったけど。あ、アオイとアキラは友達だよ。」


・・・ジンが原因か。

ジンに思う所があるのはシンパシーを感じる。


「あいつ、私が女だと分かるとベタベタくっついてきて・・・」

「え??レイって女の子なの?」

「そうだよ。」


あっさり語られる衝撃の事実。とりあえず、謝っておこう。


「ごめん、ついさっきまで男の子だと思ってた。」

「あぁ、気にしなくていいよ。で、あの黒龍だけど・・・私と共闘しない?」


レイから共闘の話が出るとは思わなかった。

でも、きちんと理由は聞くべきだと思うので・・・


「レイほどの実力があれば1人でいけるんじゃないの?」

「ジェシカがここに来たのは討伐クエストだよね?私はたまたまこの周辺を冒険してただけだけど、あんなのがいたら迷惑だからね。ちょっと奴と戦ってみたいし、ジェシカはクエスト達成で一石二鳥だしどうかな?」

「戦力が増えるのはありがたいから是非。」

「ありがとう。話が早くて助かる。」


戦力増強はありがたいので素直に受ける事にした。

報酬は5:5の山分けで話をつける。


「じゃあ、あたらめてよろしくね。レイ。」

「よろしくね、レイさん。」

「・・・え、ウサギが喋った!?」


今度はレイが驚き・・・いや、目をキラキラさせている。


「わぁ、可愛い~♪喋るウサギさんとか夢みたい。」

「え、うわぁっ!」


レイはユキを抱きしめてすごく喜んでいる。

・・・なんだろう、このモヤッとした気持ちは。


「ちょ、ジェシカ。た、たすけ・・・。」

「ユキはレイみたいな女の子が良いんだ・・・。」

「いや、違うよね・・・。」


私とユキのやり取りを見ていたレイは私にユキを戻した。


「ジェシカ、ごめん。嬉しくてつい・・・ユキ君は焼きもちやきのご主人様に返さないとね。」

「うん?ユキとはパートナーだよ。そもそも主従契約なんて結べないし。」

「あ・・・なんか余計に悪かったね。」


気まずそうに謝るレイ。



「ん・・・ここは。」


シノブが目を覚ます。


「良かった、ここは村の宿だよ。シノブは魔力枯渇で気絶して・・・」

「すまない、ジェシカ・・・!!」


私はシノブを抱きしめた。


「ごめんね、シノブ。無理させちゃって・・・梟のままでいいんだよ、人の姿じゃなくても。私たちは家族でパートナーなんだから。」

「ジェシカ・・・ありがとう。」


遅くなったけど、やっと家族としてもパートナーとしても一歩を踏めた気がする。


「レイ、お願いしたい事があるんだけど。」

「たぶん1日くらい休息とっても大丈夫だよ。あの黒龍がすぐに動くとは思わないし、その間に作戦を練ればいいよ。」

「ありがとう。」



1日後

レイの言う通り、あの黒龍が動く事はなかった。

私達は作戦通りに黒龍の巣へ攻撃を仕掛ける事にする。


空を羽ばたいているシノブを見ると、やはりこの姿が一番自然な姿なのだと改めて思った。


「テイムコネクト、ユキ。」

「へぇ、初めて見るけど可愛いなぁ。これで索敵能力が上がるんだ・・・何かずるい。」


巣穴を変えている可能性が高いので村を出る前から索敵を開始する。


「シノブも空から見て何か異常があったら教えてね。」

「分かった。」


今まででは出来なかった索敵も出来る様になって、新しい世界が見えた気がする。

さぁ、黒龍への反撃開始だ。


(続く)

最後まで見ていただきありがとうございます。

白金の梟が本来の姿で、出会ってからずっと人間形態を解けなかったシノブ。

そして、黒の勇者:レイとの共闘。次が黒龍との戦い完結です。



設定補足①:レイ

パッと見て少年を思わせるが、正真正銘女性。

声が中性なので更に誤解されやすい。

可愛い物が好きで動物と話がしたいという夢をもっている。


設定補足②:魔力枯渇

魔法の使い過ぎで起こる現象。大体1日ほど休めば全快する。

魔力がない状態で無理に魔法を使うと立ちくらみから、ひどくなると気絶したりする。

MP表記出来るなら- (マイナス)になる状態。

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