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異世界でも恋愛は出来ますか?  作者: 香坂 悟
雪の章
13/309

13、再会は砂塵の中で (3)

ルークの陽動で拠点に入るのは容易かった。

大理石みたいな石で出来た建物で城というより、神殿に近い。

周辺の禍々しさを除けば建物の作りは神々しささえ覚える。


「テイムコネクト、ユキ。ルーク、索敵は任せておいて。」

「なんか共同作業っぽくていいですね。俄然やる気出てきた~。」


うん、ここ拠点だから気をつけようね。

周辺に気をつけながら進む・・・


少しはモンスターも残っているみたいで、警戒しながらルークの炎の矢で先制をかける。

・・・なんか引っかかる・・・


「ルークの持っている弓凄いね。それが勇者武器なの?」

「この弓は・・・!!」

「・・・ルークも気づいた?奥にボスがいる。こちらを挑発する様にいきなり魔力を放出した。」


話を振っておいて悪いなぁと思いつつも、ボスの気配がするのでそちらを優先する。



広間の奥にどっしりと構えた黒甲冑の騎士。岩石を削って作られた様な切れ味が鈍そうな大剣を持っている・・・

周辺に罠は無かったので、そのままボスの元へ向かう。


「よく来たな、お前たちが勇者か。私は魔王四天王が1人剛刃のオウガ。お前たちの名前を聞かせてもらおうか。」

「僕は赤の勇者ルーク、彼女は青の勇者ジェシカ。」


ルークの紹介にオウガは高揚する。


「ふふっ、お前たちが勇者か良いぞ。こちらの手駒はほぼやられたからな・・・お前たちの首を手土産にアルカーナを滅ぼしてくれる。」


オウガから放たれる黒く禍々しい闘気。

私がレイピアを抜こうとするとルークに止められる。


「ここは僕に任せてくれませんか?」

「分かった。邪魔にならない様に周囲を警戒しておくよ。」

「ありがとうございます。ではいきましょうか、魔王四天王のオウガさん。」


弓を持ったルークと大剣を構えるオウガ

建物内でどんな戦いをするのだろうか・・・


「いいのか?私は二人で来ても負けるつもりはないのだが。」

「問題はないですね。」

「そうか、ではいくぞっ!!」


オウガの大剣の振りを躱し、ルークは至近距離から矢を放つ。

矢はオウガの甲冑に当たるがすべて弾かれる。


「硬いかぁ・・・さすがは四天王。」

「私の鎧に生半可な攻撃は通用しない。」

「そうですか。」


ルークは距離を取り、右手に炎の魔力を集める。

魔力は炎の矢に変化して、矢を放つ。


「ふんっ!」


矢は当たる前にオウガの闘気で弾かれる。



ん?何でわざわざ炎の矢を闘気で弾いたのだろう?

あえて仮説を大声で叫んだ。


「ルーク、その鎧は魔法攻撃が通るかもっ!」

「ジェシカさん、ありがとうございます。」

「ほう、そこの小娘やるじゃないか。確かにこの鎧は魔法に対しては大した強度はないが・・・私の闘気でカバーしている中でどう対処するんだ?」


そこは考えていなかった・・・


「いえ、ジェシカさん。あなたの愛のアドバイスとても役に立ちましたっ!」


いや、戦闘中だし・・・恥ずかしいし・・・


「レーヴァテイン。」


ルークは右手に炎の魔力を溜めて、建物内で先程陽動に使った攻撃を放つ。

天井に当たった矢はそこから炎の魔力の塊となって追尾する矢を放ち出す。


「その程度なら私の闘気で十分に対処可能だっ!」

「はい、分かってますよ。」


ルークは敵に詰め寄った。


「遅いぞ、勇者っ!!」


オウガのなぎ払いがルークを捉える。


オウガの攻撃がルークに当たる前に

ルークは左手に持っていた炎の弓で攻撃を受ける。


弾かれた弓は砕け散っていった・・・


「これで終わりだっ!!死ね、勇者!!」


オウガの縦斬りがルークを捉える・・・


そんな・・・


「ルークっ!!」


私はルークの死を想像して大声で叫んでいた。

だが・・・


「・・・その時を待っていました。」


ルークのフットワークが急に軽くなった。


あ・・・そうか。

ルークに再会して感じていた違和感の正体。

私は思い出した。


そう、ルークと初めて会った時・・・

“ルークが武器を持っていなかった”事に。


おそらく、ルークの職業は拳闘士。

スライムはコアが弱点と知っていなければとことん相性が悪い。

そして、勇者武器はあのグローブで弓は遠距離攻撃やスライム等の打撃に強い敵に対応するための措置だろう。弓の扱いが慣れていなかったのもそれなら説明がつく。


ルークはオウガの縦斬りをきりもみしながらギリギリかわし、ガラ空きの左側面に炎の魔力を込めた右拳を放つ。


「カウンターバーストっ!!」

「ぐおっっ!」


ルークの強烈な一撃でオウガの鎧は粉々に砕け散り、屈強な体を露わにした。

体は宙を浮き、床に体を打ち付ける。


「ゴハッ・・・。」


そしてオウガは倒れる。


「ルーク・・・!!」

「聞きましたよ、僕を心配しての心の叫びっ!いやぁ、嬉しいなぁ。」


心配して歩み寄った私の手を掴んでそんな事を言うルーク。

私は思わず叫んでいた事とルークの台詞に顔が真っ赤になっていたのが分かる。


「お、これはポイント高いですね♪」

「ば、馬鹿・・・」



「こ、これが・・・勇者の力か・・・」


オウガはよろめきながら立ち上がり、奥の玉座まで移動した。


「お前たちを道連れにしてやるっ!!」


オウガが玉座にあった仕掛けを作動すると神殿が崩れ出す・・・


「逃げよう、シノブ行くよ。テイムコネクト!ルーク、ちょっとおとなしくしててね。」


ルークを抱えて私は大急ぎで神殿を脱出した。



王様に拠点の破壊を報告して、今回の作戦は無事に終わった。

そして、合同の勇者パーティーは解散になる。


「それじゃ、私は帰るね。」


定期便の前にみんなに挨拶をする。

その後、私とルークの2人きりになる時間が出来ていた。


「ジェシカさん。」

「ルーク・・・?」


私が振り向くと・・・遠くの建物でジンをおさえているアオイとアキラの姿が・・・


「ふがふがっ」

「もう、ジン君・・・空気読まないと。」

「頑張れ、男の子。」


うん、見なかった事にしないとダメみたい。

ルークは思い切って私に


「ジェシカさん!!僕はきっとあなたに相応しい男になりますからっ!!」

「うん・・・じゃあね、ルーク。」


それ以上の言葉が出なくて、私たちは家に帰った。


(続く)

最後まで見ていただきありがとうございます。

砂漠の国の話完結。次は家に帰ったジェシカは・・・そんな話です。



説明補足:レーヴァテイン

自分の魔力を炎の矢に変換させるルークオリジナルの魔法。

ルークの意思で大量に矢を放つ事から牽制まで自由にコントロール可能。

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