番外2 「白の邂逅」
※この話は登場人物:白の勇者ジンのエピソードになります。
俺たちは村の酒場に来ていた。
「いや~レイには酷い目に遭った・・・。」
酒場で俺の独り言に・・・
「それは仁君がレイちゃんにベタベタしていたからでしょ。」
「俺としては仲良くしたかったんだが?ほら、肩に手を回すのは親愛の証だろ。」
葵のツッコミに冷静に答えると、今度は明から
「あんたねぇ・・・同性ならともかく、異性にする事じゃないでしょう?」
「俺たちはそんなに気にしてないじゃないか。」
「いやいや、私達とあんたは幼馴染だからって話。普通に考えれば訴えられるわよ。」
「げっ、マジかよ・・・次に会う女の人には気をつけておくか。はぁ・・・」
俺はため息をつきながら、次に会う青の勇者候補の変わり者テイマーの“ジェシカ”という女の人に警戒する。
ーーー
数日前
「とある村の北の遺跡で変わった武器がある?」
何でも、見えるけど触る事が出来ない武器があるらしく
その特徴は・・・勇者武器にある特徴だ。
勇者武器に関しては選ばれた本人以外触る事が出来なくなっているのが仕様だ。
「見てみる価値はあるな。」
スカウトを雇って遺跡の調査をするが、トラップがあって・・・
宝箱の仕掛けでスカウトがトラップにかかり負傷で足止めをくらっていた。
「ジン、入るわよ。」
宿屋で1人考え事をしていると、扉がノックされて明が入ってきた。
「どうした?明。」
「遺跡の調査だけど、街で活躍している『変わり者テイマー』さんに協力してもらうってどう?」
「『変わり者テイマー』?なんだそれ。」
明の話だと街で調査任務を中心に活躍しているテイマーがいるそうだ。
ウサギと一緒にいるけど、ウサギを使って戦っている様子がなく
索敵や探索能力に長けており、ここ最近まで進んでいなかった東の森の調査資料のほとんどは彼女の仕事によるものらしい。
「はぁ?ちょ、ちょっと待て・・・そいつって何者だよ。」
「私達のペンダントに反応しているのは街の方だからその人が青の勇者である可能性あるんじゃない?」
「あぁ、そう言えば街の方に勇者の反応があったな・・・よし、その案を採用だ。」
早速その『変わり者テイマー』の“ジェシカ”指名で街の冒険者ギルドに特別クエストを依頼する事にした。
ーーー
「・・・とまぁ特別クエストは受けて貰ったんだが、どんな奴なんだろう。熟練者っぽいから年取った人かもな。それにしても、ここの酒は美味いな。」
村は勇者が来たという事で賑わっていて、祭みたいな状態になっている。
転移前も酒は飲んでいたが、ここに来てから飲む酒も悪くはない。
俺は上機嫌になりながらジョッキを空けていく。
「あ、あの・・・」
酒を飲んでいると、女の子の声が後ろから聞こえる。
「ん?誰?」
声の方を振り向くと、頭のベレー帽にぐったりしたウサギを乗せた長い銀髪を三つ編みにした美少女が立っていた。
服装は確かギルド指定の制服・・・を弄った感じだな。
「はじめまして。私、ギルドの特別クエストで来ましたジェシカといいます。」
ま、マジか。この美少女が・・・おっと、冷静に冷静に
俺はジェシカに返事をする。
「ジェシカ・・・あぁ、あの変わり者テイマーさんか。思ってたより若くて美人なんだな。俺の名前はジン、勇者をやっている。飲んでいくか?」
ん?何か俺、変な事を口走らなかったか・・・酒入っているし、いいや。
彼女はウサギの体調を気にしていたみたいで、すぐにでも酒場を出ていきたい様だ。
「すみません、これから宿を探すので・・・」
「宿か?俺たちが使っている宿で特別クエストの案内状を見せれば部屋を手配して貰えるぞ。まぁ、落ち着いたらこっちに来いよ。」
「お酒は飲めませんが、後で伺いますね。」
実に社交辞令的な所作でジェシカは酒場を去って行った。
本人も酒が苦手なのか・・・ま、後で来たら店主に教えたポテトサラダを振る舞えばいいか。
しばらくすると、ジェシカがあんまり人慣れしていないのかペコペコしながらやってきた。
「お、来たな。」
「はい。」
葵とアキラを紹介しようとするが・・・2人とも出来上がっていた。
まぁ、いいか。酒の席だしな。
俺は彼女が葵と明に挨拶している間に、店主に一声かける。
「店主、教えたアレを一つ頼むよ。」
「分かったよ。お茶と一緒に出せばいいんだね。」
「おう、頼んだぜ。」
席に戻ると彼女は二人に挨拶は終わっていたみたいだ。
「ご丁寧にありがとうございます。あらためまして私はジェシカといいます。テイマーをやっていまして、今回のダンジョン攻略のお手伝いに来ました。」
うん、悪くないな。ここで一声かけておくか。
「今日は無礼講だ。楽しんでいってくれ。」
そう声をかけると、店主が彼女にお茶とポテトサラダを渡した。
ポテトサラダを見たジェシカは一瞬驚いていた。
「これって・・・」
「これはポテトサラダだ、さっき店主に作り方を教えたんだよ。美味いから食ってみなよ。」
こいつは自信作だからな。
マヨネーズ作るの苦労したんだよなぁ・・・ベースがあっても調味料がな。
一口食べた彼女は涙を流している。
「お、おい・・・ジェシカさん、涙なんか流してどうしたんだよ!」
「え・・・。あ。」
彼女は俺の指摘で自分が涙を流している事に気が付いた。
そして、咄嗟に彼女は取り繕っている。
「あ、このポテトサラダが美味しくて・・・この世界にもマヨネーズなんてあったんですね。」
ん?あれ?
「・・・そうか、気に入ってくれただけだったか。まぁ、他の料理も食べていってくれ。」
もしかしたら・・・いや、俺の勘違いで酒の席を濁すのも悪いから後で聞いてみるか。
俺たちは軽く仕事の打ち合わせをしながら宴をした。
まぁ、楽しんで貰えたならいいんじゃないかな。
「気になるな・・・」
ジェシカの話を聞いてみたい俺は宴が終わった後、あらためてジェシカの部屋を訪れた。
宿屋は同じだから、宿屋の店主に聞けばいいだけだからな。
ドアをノックすると、ジェシカが出てきた。
「はい。」
「ジェシカさん、ちょっといいか?」
俺は他の人に聞こえない方が良いだろうと思い、村の外れの小川まで連れて行った。
ここならいいだろう・・・
「ジェシカさん、あんたは転生者じゃないか?」
彼女の台詞から、この結論が出た。
しかし、彼女は淡々と理由を聞いてきた。
「え、どうしてですか??」
「見た目は確かにこの世界の人だが、ポテトサラダにマヨネーズを使う事を知っていたり、『この世界』という発言からして異世界から来たんじゃないか?」
その発言で彼女はハッとする。
「・・・もし、そうだったらどうするんですか?」
そうだなぁ・・・俺は彼女に向き直して、彼女に伝える。
「俺がお前の居場所になってやる。だからいっしょに来ないか。」
彼女に対して素直に出た言葉だった。
なんだろうな・・・この気持ちは。
彼女はすぐに答えは返さなかったが、仕事を終えてからで良いだろう。
最後まで見ていただきありがとうございます。
4話のジン視点エピソードです。
勇者武器の情報を頼りに村に来たジン達でしたが、ダンジョン攻略に青の勇者の可能性があったジェシカに力を借りる事にします。