悪い少年
ジュエリーショップの、ショーウインドーのガラスを、斧で叩き割る。ジリジリジリジリジリ。防犯ベルが鳴る。口元を隠した、黒い上着のパーカーの少年が、店内の金目になる物を集めて、急いで逃げ出す。少年は闇夜にまぎれて、上手く逃げ切ったのだった。
「ねぇ、この少年が自分の彼氏だったら、めっちゃドキドキしない」
金髪のふっくらした女子、パティは新聞を片手に妄想をした。
パティの友人のジョジュは、言う。
「それって、ちょっとした風が吹けば地獄行きだよ。血まみれの悲劇。かくまってって言われて、喧嘩して、殺されるよ。おまけに、この女のために、宝石を盗んだんだって、言い訳にまで使われて、死んでも悪女扱い」
実際は、ここまでのことは起きないかもしれない。だが、悲劇だって場合によっては起こるかもしれないと、ジョジュは思った。
「それは、ヘビーだね。やめとく」
パティは紙を、ちょっとクシャッと丸めたみたいに、笑って鼻の穴を大きくして言った。
終
少女たちよ、気を付けて。危ない恋は妄想だけの方が、絶対いい。