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この作品には 〔残酷描写〕が含まれています。
苦手な方はご注意ください。

ましろな五線譜シリーズ

混じりけのない、くろき愛情 五線譜シリーズ2

 とある貴族の子息は恋をした。

 相手は自国の姫。

 天使が地上に降りたのかと思うほど美しく、声は小鳥のさえずりのように耳障りがいい。


 けれど姫の視線の先にはいつも、平民の少年がいた。乳兄弟だという。

 その乳兄弟の瞳も、いつも姫を追っていた。

 

 あいつさえいなければ、姫はこちらを見てくれるのに。嫉妬が子息のこころを黒く染めていく。


 子息は少しでも長く姫のそばにいようと考え、騎士団に入った。忌々しい乳兄弟も騎士団にいたのが腹立たしい。


 だが、自分は顔がいいし、平民の乳兄弟と比べて育ちがいい。姫の夫になるのに申し分ないはずだ。

 何度婚約の申込みをしても、姫は一度もウンといわない。 


 子息が二十、姫と乳兄弟が十八になったとき、戦争が起きた。

 子息と乳兄弟は騎士。国を守るため最前線に行くこととなった。


 二人は偶然(・・)同じ部隊に配属されて、同じ見張りに配置された。

「姫様と国の将来に関わる、大切な話がある」と言えば、顔色を変えた。他のことでは表情を動かさない男が、だ。


 だからとっておきの大切なことを教えてやった。

 

 ──お前が死ねば、姫は私を見てくれるんだ。




挿絵(By みてみん)




 乳兄弟は運悪く(・・・)戦場で散り、生き残った子息はもう一度姫に求婚した。

 帰らぬ人のことなど忘れ、ともに未来を作りましょう。


 姫は首を横に振る。

 乳兄弟がいなくなっても、姫の瞳は子息を見ない。


 一度も子息の顔を見ず、黙ってパイプオルガンを弾き続けた。

 貴族の音楽会などでは聞いたことのない、曲名もわからない音色を。

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3作目(完結編)はこちらです
あかい夢のロンドの先に
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