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03.ふらふらと

着信音で目が覚めた。と言っても目は全く開いておらず誰からなのかも見ずにスマホを耳にあてた。


「おはよう。サラちゃん。後から掛け直すの後からっていつかなあ?俺ちょっと心配だったんだけど」


ロイだ。男性の中でも低めの声。二重瞼の大きくてくりっとした瞳の可愛らしい顔からは想像もつかない声。私は唸るように「…ん」とだけ返事をした。眠い。まだ寝たい。もうむり寝「~ということでレンも一緒に昼すぎにはお前の家行くから必要なものとかあればメッセージ送って」


切られた電話のツーツーという音が部屋に響く。レン…レンくん。サキとしてはあまり記憶の無い人物で、サラとしてはかなり仲が良いみたいだ。魔法科の同じ学年のひとつ年下。とても会いたかった人。


 昨日調べて分かったことだけど魔法科は入学試験の結果によっては2年からスタートすることもできるらしい。そうそう、この世界で魔法というのは『なぜか魔法が使える人』しか魔法が使えない。

しかし『幼い頃から絵を描くのが上手な人』だとか『運動神経が抜群に良い人』みたいに特別珍しいこともなく学年に一人はいる程度だ。魔法の杖を用意して呪文を唱えても元々の素質がないひとは魔法を使えない。魔法を使えたとしても法律でかなりの使用制限がかかっているため、高校卒業後に3年制の専門学校へ通って魔法使いとしての国家資格を取得しないといけない。

『幼い頃に絵を上手に描いていた子は画家になったか』『運動神経が良かった子はプロ入りしているか』『魔法を使える子は魔法使いになるか』まあそんな感じだ。


 昼まで二度寝をし準備が終わった頃「アイス買ってきて」とロイにメッセージを送る。それから5分もしないうちにインターホンが鳴りドアを開けた。


「お邪魔します」


レンくんだ。私が病室で、この世界で、目を覚ましたときに最初に会った人。


「あの人はコンビニに戻ってます。たぶんすぐ来るんじゃないかな」大きな麦茶のペットボトルとお菓子が入った袋を一度置いて、玄関の靴を揃えた彼は私と視線を合わせると、また「お邪魔しますね」と言い、にこっと笑った。


「可愛い」思わず言葉が出てしまいハッと口元を手で押さえたけれど「もうそれ何回言うの。聞き飽きましたよ」とレンくんはふらふらと部屋へ入って行く。その後ろ姿を見ていると、胸の辺りがきゅっとなった。…サラとしての感情かな。


「あちぃ…一番涼しい場所は俺に譲ってくれ…」と息を切らしたロイはレンくんが言ったとおり本当にすぐに来た。…なんか身長大きくなってる気がする。そうでもない気がするけど、サキの中では高校1年のロイが最新だ。仕方ない。


「ロイ身長伸びた?」

「え、どうだろ。春に測ったので186だけど今は190くらいあるかもしれない」なんてな~と言いながら雑にサンダルを脱ぎ捨てた。


「ロイ兄さん足臭そう。消臭の魔法とか覚えてないんですか?」

「そんな魔法知らねえよ。というか俺の足はバラの香りですう」


こうして、ぐだぐだと三人で夏休みの課題を消化していった。課題をしている最中はあまり会話に参加せず二人の話を聞いていた。「あの講師のさ」という話を聞くと、言われればそんなこともあったような…という感じでサラの記憶は思い出せる程度だ。


なんとなくだけどサラとしての記憶が時間が進むにつれて曖昧になっている気がする。あの夢を見てからは自分をサキとして自覚しているからだと思うけど。


「ねえ、記憶を引っ張り出す魔法とかある?」

「…そんな高度な魔法使えるようになったら良いよな」

「似たようなものを来年には学べるんじゃないかな。ロイ兄さんには難しいかもね」

「なんだと」


がちゃがちゃと騒ぐ二人を余所に落胆していると、


「まあとりあえずこれで提出期限は守れるし、明日の試験も頑張ろうぜ」



…明日…試験とな?

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