第漆話 許せぬ行為
役逆ミニ紹介!
No.4 サガ・エルドラゴ(二回目)
趣味 読書(特に魔導書)
得意武器 ハンマー
親友 アルガァ
幹部時代の一番の思い出
アルから最高級の杖を貰ったこと(少なくとも勇者戦まで
愛用している)
容姿 黒髪、黒目、平均より少し小さい(165)、黒服
「おい?どういうことだ、イルス?」
俺がイルスに質問するが、イルスは何も言わない。
その代わりに変装道具をポーチから出していた。
イルスは変装道具を使って、爺さんのようになると、まるで爺さんのような声で俺に話しかけてきた。
「多分、アイツらはワシのことを死んだと思っているだろう。だからワシは爺さんの変装をしているのだ。イルスのままだったら盗賊達に嫌な目を向けられるからな。」
「じゃあ、何故俺を小さくしたんだ?」
イルスはまた黙った。が、すぐに後頭部を掻いた。
「ごめん、変装道具が一人分しかなかったから、貴重な薬を
使っちゃった…。」
…はあ、そんなの言えば良かったものの…。
…まぁ、それはもう過ぎたことだ。さっさと盗賊団の街へ入ろう。
イルスは「ごめん」と言いながら、小さくなった俺を肩に乗せ、その上から外套を羽織った。
…これじゃ、若干怪しくないか?なら、俺も変装するか…。
「イルス、ちょっと目を瞑るんだ。」
イルスは俺の言っていることが分からず、首を傾げるが、そこは踏みとどまった。
イルスが目を瞑ると、俺は魔法を唱えた。
「<身体変化>」
すると、俺の体は光を放ちながら変わっていった。
今使ったのは闇魔法の<身体変化>だ。
この魔法は自身又は相手の身体を変化させることができる。実は見かけ倒しではない。鳥になったら、空を飛べるし、魚になったら、えら呼吸も出来る。
もちろん、魔族などにもなれる。だから俺はこの魔法を使って、サガを騙しまくった。…いつも見破られたがな。
ちなみに今回、俺が変装したのは雀だ。…さっき、例えに出したからな。
「目を開けてみろ。」
イルスは目を開け、俺を見ると、驚いたのか、少し後退した。
「…アルだよね?」
イルスが思わず、いつもの口調で喋ってしまったが、今はまだ街の外なのでセーフだ。
「そうだ。俺はアルだ。」
「そ、そうか…。」
喋っている俺を見て、イルスは苦笑する。
と、そんなやりとりをしていると、何かが近づいてくる気配を感じた。
「イルス、気を付けろ。」
「うむ。」
イルスは咳払いをして、声を調整した。
そして丁度咳払いを終えたところに、大きな男が話しかけて来た。
「おい、爺さん!そこで何やっているんだ?そんな歳で迷子
か?」
…こやつ、大笑いしているな。
ぶっ飛ばしてやりたいが、ここは我慢だ。
「いや、ワシは迷子ではないぞ。ちょっと荷物を確認してた
だけじゃ。」
「そうか、気をつけろよ。…そうだ、爺さん!俺達の街で泊
まらないか?歓迎するぜ!」
来た…!これなら入れそうだ!どうせ、夜襲して来るだろうし、この際入ってしまおう。
「本当か?では泊まらせて貰おうかな!」
イルスの迫真の演技で、爺さんと信じ込んだ男はイルス(と俺)を街の中へ案内した。
「ここが、俺達の街だぜ!ゆっくりして行けよ!寝泊まりはこの部屋でな!…若干、変な物があるが気にするなよ!じゃあな!」
男はとあるボロい部屋に俺達を連れていった。
その部屋には布団とテーブル、と剣の台座そしてそのテーブルの上に置かれた写真立てだけが置かれていた。
「ここは誰の部屋だ?」
雀の姿のまま、イルスに聞いてみた。が、イルスは顔を真っ青にしたまま、何も言わない。
「イルス?」
俺はイルスを心配して、名前を呼んだ。
すると、イルスは震えた声で言った。
「…ここは僕の部屋だ。」
そうか。ここがイルスの部屋か。じゃあ、何故震えているんだ?
イルスは俺に顔を向け、震えた声で言ってきた。
「…無い。ここの部屋に置いた大事な剣が無い!」
大事な剣…?
一体どういうことだ?
「イルス、今は落ちつけ。今、騒ぎを起こしたらマズいぞ。」
「う、うん…。そうだよね…。」
とりあえず、イルスは深呼吸した。何とか落ちつくと、俺に剣について話した。
「僕がここに置いたのは、大男十人がかりでやっと持てる重
さの剣なんだ。名前は…。」
…その剣、記憶にひっかかるな。
大男十人がかり…。それってもしかして…。
「聖剣[幻閃]だな?」
「…!」
当たりだな。何百年も生きた俺にとっては常識だから、当たって当然だ。
でも何で、そんな貴重な物をイルスが?
「何故、そんな剣を持っている?」
俺はイルスに聞いた。イルスは俺の目を見ると、「よし」と言って、俺が聞こえる声の大きさで話し始めた。
「実は僕、一年前に両親を亡くしたんだ。亡くなる直前に、二人は剣を預けてくれたんだ。二人が何故持っているのか分からないけど、でも大事な剣なのは分かったんだ。だから僕は剣を大切にしようと思って、この台座に刺していたんだ…。」
…許せないな。人の大切な物を奪うなんてな。
俺がそう考えていると、イルスが突然言い出した。
「アル、ごめん。ちょっと寄りたい所があるんだ。」
急にイルスが怖い顔で言って来たので、俺は頷くことしか出来なかった。